プラズマと液晶(3)――映り込みは問題か?:本田雅一のTV Style
2回に渡ってパイオニア「KURO」を取り上げてきたが、今回は最近のプラズマテレビに関連して、必ず出てくる話題を掘り下げてみたい。それは明るさや画面への映り込みに関することだ。
2回に渡ってパイオニアの「KURO」を取り上げてきたが、今回は最近のプラズマテレビに関連して、必ず出てくる話題を掘り下げてみたい。それは明るさや画面への映り込みに関連する問題だ。
明るさの面では、全白を表示させると白の輝度が出せないという問題はある。しかし、実際には画面上の一部分だけが光ることが多いわけだから、この点は問題にはならない。全体的な輝度も、直射日光が画面に差し込むように置くなら話は別だが、一般にテレビの置き場所として適したところであれば、家庭内で暗さを感じることはほとんどないだろう。明るさが問題となるのは、主に店頭の明るい環境下だけだ。
一方、プラズマテレビはガラスパネルを全面に配置しており、パナソニックの現行「VIERA」シリーズなどを除き、グレア(光沢)仕上げになっている。このため、天井の照明やテレビの反対側にある窓の光が写り込んで見づ見づらいらいという説明を店頭などではよく耳にする。
一時はプラズマはグレアで液晶はアンチグレア(つや消し)。アンチグレアの方が優れているといった意見が支配的だったのだが、昨今はこの状況には変化が出てきた。前述のようにパナソニックはアンチグレア処理をフィルタに施して、アンチグレアのプラズマテレビを販売している。また三菱電機はアンチリフレクション(反射低減)コートを施したグレア液晶テレビを発売した。北米にも目を向けると、サムスンが液晶テレビにグレアタイプを用意している。
なぜこのようなことになったのか?
パナソニックがプラズマテレビにアンチグレア処理を施したのは、おそらく店頭対策だ。広い店舗の中では天井の照明が映り込みやすく、またテレビ売り場のレイアウトを考えると対面に別のテレビが置かれ、それがまた映り込むといった問題が出てくる。
一般的なリビング環境では、まず天井照明の映り込みを気にする必要はなく、対面の窓さえ遮光しておけば、映り込みの問題はあまりないのだが、北米などでライバルがアンチプラズマキャンペーン(ペンライトを使って映り込みの多さを見せる)を張ったことなども、アンチグレア処理へとパナソニックを向かわせたのかもしれない。
ではなぜ一部メーカーのみとはいえ、液晶テレビがアンチグレアからグレアになってきているのだろうか? それはグレアの方が高画質を引き出せるからだ。
どんな画面でも、外光の光は多少なりとも反射するものだ。アンチグレア処理というのは、反射そのものを抑えるのではなく、すりガラスのように光を拡散させ、映り込む像が目立たないようにする。しかし外光反射のみを拡散するだけでなく、パネルが出す光まで拡散してしまうため、色純度が下がり、全体に鮮度の低い映像になってしまう。
純粋に画質だけを考えるなら、アンチグレア処理は間違いなく行わない方がいい。しかし、とはいっても映り込みが気になるユーザーは少なくないようだ。グレアを採用するテレビは、ほとんどが低反射コーティングを施しているものの、完全に反射をなくせるわけではない。
グレア化は検討したいが、しかしユーザー側の意識も変化しなければ、グレア化しても売りづらい製品になってしまう。こうしたジレンマが液晶テレビメーカーにもある。
ここで言いたいのは、グレアか、アンチグレアかで議論する必要はないということだ。両者にはそれぞれのメリットがある。筆者ならば高画質なグレアタイプのテレビを選びたいと思うが、設置環境は多様なものだ。またリビングのソファーに座った時、テレビがオフになっていると自分の姿が見えるのが嫌いといった人もいる。
重要なことは、正しい知識をもって、それぞれの製品が“そうなっている”理由を考えてみることだろう。なぜグレアを使ったのか? なぜアンチグレアにしたのか。その理由を訪ねてみれば、一元的な良し悪し論に惑わされることはない。
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