液晶テレビが“艶”っぽくなった理由――東芝「RF350シリーズ」(2/2 ページ)
東芝が発売した「RF350」シリーズは、光沢のあるスリムなベゼルが特徴的な液晶テレビだ。従来の「REGZA」シリーズとは一線を画すコンセプチュアルな新製品はどのように誕生したのか。詳しい話を聞いた。
スリムベゼルによってパッケージはPCモニターに近くなりましたが、やはりテレビという視点で購入されるものです。PCモニターのようなプラスチックの質感では受け入れてもらえないかもしれない。リビングに置いて価格に見合う満足感を得られるもの。あえて艶のある表面を選んだ理由はそこにあります。
本村氏: 画質だけを考えると、光沢のあるベゼルは鑑賞の邪魔になることはわかっています。しかし、ここまでベゼルが細くなるとあまり気にならないと判断しました。
佐川氏: 造形には柔らかさを取り入れました。非常に細いフレームですが、見ると色の中にハイライトが走って、角度をかえると色も変わって見えるような、(アールのついた)柔らかい面の作り方をしています。側面にもほんの少しだけアールがかかっています。
しかし、柔らかいだけでは親しみやすくなりすぎるので、同時に緊張感もあるデザインを目指しました。キーワードは「表面張力」です。曲面デザインにもいろいろありますが、表面張力は物理法則で一発でできるものです。柔らかいけれど“無駄”はない。このキーワードを持ってくることで、柔らかさと緊張感を両立できました。
――スタンドのデザインも大きく変わりました
佐川氏: われわれはREGZAのスタンドを“ブーメラン”と呼んでいますが、本体がより細くなるとブーメランには主張が強すぎます。実際に試作段階でブーメランを組み合わせてみましたが、やはり似合わず、ちょっと感覚的にずれてしまう。
いままではフラットなフレームにラウンドした足(スタンド)を組み合わせて全体のバランスをとっていましたが、今回はフレーム自体が主張するようになりました。そこで、今までとは逆に足をシンプルにしてあげることでフレームの細さが際だちます。
同時にスピーカー回りの金属の質感を出しつつ、過度に主張しないデザインにしました。表面処理もサンドブラスト風の加工をくわえて質感を変えています。
――カラーバリエーションも大きな特徴になっています
本村氏: 実をいうと、当初はカラーバリエーションのテレビを作ろうとは思っていませんでした。開発時はずっと黒だけで、赤くらいはあったほうがいいかな? と考えていた程度です。ただ、開発の最終段階になって出来上がったものを見ると急に増やしたくなって……急遽デザインに掛け合いました。
――急に対応を求められたのですか?
佐川氏: そうですね。開発作業はずっと黒をベースに進めていました。ただ、インテリアや色のトレンドは普段からチェックしていて、どういう色が合うのか検討はしていました。もちろん関係者にも見せていなかったのですが、そのおかげでリクエストが来たときにタイミング良く提案することができました。
――では、4つのカラーはすんなりと決まったのですか?
本村氏: いいえ。実際はかなり議論を重ねましたね。最終的には、室内の壁に馴染みやすく画面が引き立つ白、シブい印象の紺、ちょっとワクワクして選んでもらえそうな赤を選びました。もちろん多くの人はベーシックな黒を選ぶと予想していましたし、実際にも黒が一番人気ですが、色を選ぶ幅は広がりました。
たとえばハンドバックを買うにしても、黒しかない製品を買うときと、いくつも色があって目移りしながら選んだ場合では気分が違うでしょう。ですから結果的に「黒」を選ぶことになっても、それまでに「赤もいいね」「紺もいいね」とワクワクしてもらえればいいと考えています。
佐川氏: 他社のように“カラバリありき”の企画では、実際に家に置いたときの相性より、色単体の魅力や押し出しの強さを追求してしまいがちです。そうするとカタログや店頭では魅力的なのに実際に家に置ける色はあまりない。その点、RFシリーズの場合はスタイルから入ったため、それに似合う色だけを揃えることができました。
――店頭に出てそろそろ2週間になります。市場の反応はいかがですか?
本村氏: 予想を超える好リアクションで、一生懸命増産しているところです。スペックではなくデザインは感性で判断するものですから「これいいね」と素直に言ってもらえる。そこからワンサイズアップの話もできるので、従来とは(売り方も)少し違う。4本目の柱としては好スタートを切れたと思いますし、過去にないという点では新カテゴリのテレビができたと自負しています。
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