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インタビュー

「DVDにハイビジョン録画」はBD陣営の自己否定――東芝・片岡氏インタビュー(4/4 ページ)

H.264による「DVDメディアに長時間ハイビジョン保存」を可能とする技術を備えたレコーダーが複数登場する。東芝の「RD-A301」もその1台だが、同社はこの機能を新たなパラダイムシフトとして打ち出す。RDシリーズの父、片岡氏に話を聞いた。

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AVCRECは不整合な部分がある

 「TSであるからという理由でだけでSD放送でもなんでも、次世代メディアに記録しろというのはおかしいと思う。TSが現行メディア(DVD)に書けないと言うことは、本当に使いたい人にとって不便ではないかと思う」と話す片岡氏。片岡氏は、BD陣営内に不整合があるのではと指摘する。

 「AVCRECはH.264しか利用できませんが、デジタル放送そのままといっても、よくよく考えてみるとBS1やBS2、WOWOWは、SD放送で7〜8Mbpsぐらいのビットレートしかありません。e2 By スカパー!だと実はもう少し低くて5〜6Mbps程度なんですよ。これをなんでわざわざH.264で圧縮する必要があるんでしょうか?これらの番組ならTSでもDVDに1時間以上記録できます。例えば私などがそうですが、ハイビジョン放送でも、ビデオクリップやアーティストの出演場面だけなど好きなところだけ残す。こういう用途なら、TSも十分現行メディアで使用できます」

 もう1点、片岡氏が、AVCRECに対して苦言を呈したのが、ダビングするたびにディスクやフォーマットを入れ替えるのか――ということだ。「H.264をやるということは、裏返すと、放送の録画はTSもあればH.264もある、DVD-VRもありますということになります。しかし、AVCRECでは、H.264のみしか使えない。ということは、お客さんは、ダビングするたびにディスクやフォーマットをいれかえるんでしょうか?――これは、難しいと思います。これを考えると、DVDフォーラムで決めた混在可能というあり方というのが正しい解ではないのかなと思います」

HD Recが普及してもHD DVDは大丈夫

 「高画質だとか高音質だとか、そういうスペックが高いからいいという価値観の時代が終わっているんじゃないかという気がします。例えば、パソコンのCPU戦争がそうですが、クロック数がアップしたパソコンだから買い換えようという時代は終わりましたし、それは、ゲーム機でもそうですよね」

 「いまは“本当の価値”は何なのかを問うときに来ていると思うんです。ハイビジョン放送を残したいというニーズがあることは分かりますが、次世代メディアに残すのが必要なことかというと、それは違うのではないかと思います。

 やっぱり、本質は長時間記録であって、例えば、1時間ドラマを記録するのであれば、安いメディアに記録できるなら、それは悪いことではないと思います。メディアで決めるのではなく、ランニングコストで決まってくるのではないでしょうか。」

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 現在の状況をこう分析する片岡氏。だが、安価なHD Recがあまりに普及してしまうと次世代メディアが売れなくて困るのではと思う方も多いはずだ。しかし、片岡氏は、「結論としては、BDは困るのかもれないが、HD DVDは基本的には困らないだろう」とし、その理由を挙げる。

 「HD Recが普及してもHD DVDにが困らないのは、DVD-R/RW/RAM自体が、フォーラムの規格であるからです。つまり、HD-Rも同じメディアなんです。メディア製造における利点も大きいです。HD DVDなら、HD-Rの製造とDVD-Rの製造を日々切り替えることができます。次世代メディアが売れなくて、製造ラインが眠ってしまうことは起きにくいのです」

 「インストールベースさえ増えてくれば、コストダウンをしやすいHD DVDはポテンシャルの高さが活きてくるのです。現にRiTEKさんは実売想定価格が5〜600円のHD DVD-Rを発売するとアナウンスしました。対してBDでは、メディア製造に専用ラインが必要になりますから、コストリスクが高い。確かに数がでれば安くなると言うのは、HD DVDでもBDでも同じですが、DVDがより使われるようになってしまうと、逆に数が出ない方向に行くリスクの方が高いのではないでしょうか」

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