ハイビジョン時代のムービー保存学:小寺信良(2/3 ページ)
着々とハイビジョン記録への対応を進めるビデオカメラだが、HD化によってPCでの編集は高負荷なものとなっている。そうなるとレコーダーで行うという手段が注目されるが、そのアプローチはさまざまだ。
BD一本勝負のソニー
この秋モデルとして、ソニーではX、L、Tという3タイプのBDレコーダーを発売する。(→たっぶり録画に高速ダビング、ソニーの新Blu-rayレコーダー)レコーダーでありながら、ハイビジョンカメラからの保存をうたったのがLシリーズ、「BDZ-L70」である。
前面に大きく「ワンタッチダビング」ボタンをフィーチャーした。AVCHDのカメラをマスストレージモードにしてUSB接続すると、このワンタッチダビングボタンが白く光る。あとはこれを押せば、HDDへの映像転送が始まる。未転送部分だけを差分バックアップする機能も備えている。
USBで接続できるのは、HDDとメモリ記録タイプのハンディカムだ。同じAVCHD記録でも、DVDタイプのハンディカムの場合はDVDメディアをBDドライブにマウントして、HDDに取り込む。
なぜDVDメディアのみUSBでつながらないかと言えば、HDDとメモリがFAT32でフォーマットされているのに対し、AVCHDのDVDはUDF2.5でフォーマットされているからである。UDF用USBドライバを新たに起こすコストを考えたら、メディアベースではどうせBDで対応しているので、そちらで対応したほうが妥当ということだろう。
USB接続では、ビデオカメラ側にもワンタッチでマスストレージモードになるボタンが欲しかったところだ。だが発売時期がビデオカメラの方が早かったので、仕方がないところだろう。ビデオカメラも次期モデルでは、もしかしたらそういうボタンが付くのかもしれない。
ダビング対象はあえてHDDに絞り、BDへの直接ダビングはサポートしない。今年秋以降のソニーの戦略は、DVD止まりのレコーダーはもうやめて、BD一本に絞っている。従ってAVCRECも、今後再生はサポートするかもしれないが、録画までサポートするかはわからない。
ダビング先をHDDに固定したのは、「ワンタッチ」にこだわったからだ。メディアが決め打ちなので、本当にボタンを1度押すだけである。また、テレビでいちいち状況を確認する必要もないということで、あえてCEC(HDMIによる機器間制御コントロール)による自動切り替えは行われない。
さらにHDDに取り込むことで、多彩な編集機能が使えるのもメリットだ。録画番組と同じように、チャプター消去やAB間消去といった機能が使える。映像のプレビューも、簡易再生ではなく、レコーダーのフルパワーを使った全画面表示である。もっとも手前に編集ツール類がオーバーレイされているので、編集には邪魔といえば邪魔なのだが、フル解像度でコマ落ちもなく再生しながら編集できる点は、現行のPCでも適わない。
編集精度はフレーム単位だが、再エンコードされるわけではない。なぜならば、大枠の編集はGOP単位で行ない、再生時にはGOP内の編集点フレームにジャンプするという仕組みだからだ。従って、編集後にレコーダーやプレーヤーを使って再生する分には問題ないが、ファイルを直接取り出してPCで再生するような場合は、カットしたはずのフレームが見えてしまう場合もある。
ソニー最大の特徴は、ビデオカメラからテレビまで、トータルで広色域をサポートしていることである。x.v.Colorの名称で知られる技術だが、レコーダーで編集しても、x.v.Colorで撮影したものは、そのフラグが残るようになっている。したがって編集後の映像を再生したときには、BRAVIAが自動的に広色域モードに切り替わる。
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