H.264録画に対応した新「ブルーレイDIGA」を試す(前編)(3/3 ページ)
パナソニックからH.264エンコード機能を備えたBlue-rayレコーダーが登場した。フルHD解像度のH.264エンコード、そしてDVDメディアへのハイビジョン記録など、競合となるソニー製品にはない解りやすい特徴を持っている。詳しく検証していこう。
2つめのサンプル(写真下)ではDRモードに比較してDX/HEモードでの文字の表現がしっかりしているのが良くわかる。再生時の補完もあると思うが、エッジはかなり効かせている感じだ。反面、横スクロールしている背景部分はHXモードでもエッジの表現が甘くなり、HEモードでは結構乱れている部分もある。またベタ塗りされた部分の表現もDR/DX/HEモードの順にソフトな表現になっており、やはり細部の情報は欠落しているということになる。XPモードはここでもやはり「比べるまでもなく」といったところだろうか。
もちろんここに上げたサンプル以外の映像も多数確認しての結果だが、思いのほかHEモードは使える印象だ。良く見ると確かに細かい情報は欠落しているのだが、かなりエッジが効いているためハイビジョンならではのシャープさは十分に表現されている。同社がH.264エンコードにおいてもフルHDにこだわった理由もそれなりに理解できる。HG/HXモードではHEモードで少々感じるエッジの効かせすぎが薄くなり、よりDRモードに近い表現になる。
反面、気になったのは、やはり動きの大きなシーンと小さなシーンのギャップの大きさだ。とくにHEモードではこれが顕著で、やはり万能とはいえない。動きの小さなシーンではシャープなだけに、動きの大きなシーンは妙にソフトフォーカスな印象になり、サッカー中継などでは不自然さを感じることが多かった。傾向としてはHG/HXモードも同じだが、不自然さはぐっと小さく感じる。
HEモードはドラマや情報番組、それほど動きの大きなシーンの多くないアニメ向けといったところだろうか。特に今時のCGベースのアニメでは戦闘シーンで動きの大きなシーンが連続しない限り、画質面で破綻を感じる事は少なかったし、テロップの多いオープニング、エンディングなどではDRモードと比較しても違和感を感じなかった点は評価したい。放送波レベルの画質として色の均一性が保たれエッジもはっきりしているので、HEモードの傾向がネガティブに出ないのだろう。
余談だが、いくつか深夜アニメをHEモードとDRモードで録画しておいて画質チェックを行った際、HEモードでは数秒間に渡って画面全体がブロックノイズになってしまったシーンがあり、やはりフルHDで5.7Mbpsは無理があるのかと先走って考えた。ところがDRモードで同じシーンを確認してみると、まったく同じように数秒間画面全体がブロックノイズ化していて、少なくとも静止画としては見れたものではなかった。つまり放送波自体の問題だったのだ。
現在はアナログとサイマル放送の都合もあって送り出しレベルでリアルタイムMPEG2エンコードを行っている事情はわかるのだが、こんなレベルで地上デジタル放送は高画質といわれてもと、何か騙されているような悲しい気持ちになってしまった。アナログ停波後までに事情が改善すると良いのだが……。
話を戻すと、やはり番組の内容を問わず、日常的に利用するならばHXモードということになりそうだ。この点はソニー製品でも同じ結論になってしまったが、そもそもHEモードが万能であればHX/HGモードは不要な訳で、当然の結論でもあるのだろう。
そのHX/HGモードでの画質の差は解像感や質感表現力よりもやはり動きの大きなシーンと小さなシーンのギャップの違いという感じで、当然の如くHXモードの方がそのギャップは小さい。反面HGモードのビットレートは地上デジタル放送の放送波の3/4程度であり、スポーツ中継などを録画するならDRモードの方が良いと感じたのも事実。HGモードに関して言えば、DRモードではBDメディアに収まらない場合や、BSデジタル放送の録画向けという考え方で良いのではないだろうか。
H.264エンコードに関してソニー製品と比較すると、ソニーが「バランス重視の画質」なのに対し、パナソニックは「フルHDエンコードに合わせこんだ画質」といった印象だろうか。
残念ながら貸出の都合で実機を同時期に利用できた訳ではなく、筆者の記憶(とメモ)、ソニー製品でBDメディアに保存しておいた番組を再生しての比較となったが、たとえばビットレートが近い本機のHEモードとソニーのXLRモードでは、シャープさや情報量では本機が上だが、動きの大小に伴う画質の変化はソニー製品の方が違和感が小さいように感じる。これら以上のビットレートでの画質モードになってしまうと、同じフルHDテレビを2台準備して横並びで同じ番組を録画、再生しないとどちらが(トータルで)高画質か、という評価は下せない。ただ、見栄えという点では本機が上かなとも感じるので、この点は良くも悪くもパナソニックのうまさだと思う。
後編ではレコーダーとしての使い勝手を中心に触れていきたい。
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