H.264録画に対応した新「ブルーレイDIGA」を試す(後編)(4/4 ページ)
前回は、“ブルーレイDIGA”「DMR-BW900」の外観やスペック、H.264録画の画質などに触れた。後編では、録画予約から編集、ダビングといったデジタルレコーダーとしての基本操作を中心に、ソニー製品との比較を交えながら検証していこう。
現時点では「AVCREC」に対応したプレーヤーは存在しないはずなので「オート」で良いのだろうし、本機は高速ダビング中であれば1番組なら手動録画、予約録画も行えるため、設定は「オート」にしておきたい。ただし互換性ウンヌンをいわれると、やはり気になってしまうのも事実だ。「AVCREC」に関しては本機(と姉妹機)でダビングしたディスクが事実上のリファレンスにはなると思うので、さほど心配する必要はないとは思うのだが……。
デジタル放送を録画した場合の「おまかせダビング」での録画モードと光学メディアへのダビング動作の関係を簡単に下表にまとめた。「詳細ダビング」ではDRモードで録画した番組は、高速ダビングが可能な場合でも明示的に録画モードを変換しながらダビングできる。
また正確にはダビングではなく編集機能に位置づけられているが、本機はHDD内でDRモードからほかの録画モードへ変換する機能も備えている。即座に開始した場合は光ディスクへの等速ダビングと同様の制限を受けるが(実行中は予約録画が実行されないなど)、電源OFF時に実行させることも可能で、この場合には録画予約などの動作を妨げることはない。H.264での録画モードや高速ダビングを活用する意味でも結構重要な機能といえるだろう。
基本に忠実な新タイプのレコーダー
まとめの前に、本機の強力なマルチタスク能力にも触れておきたい。既に触れたが、高速ダビング中であれば1番組の録画が可能であり(ただし、おまかせダビングでは不可)、この点だけでもダビング中は事実上何もできないといえるソニー製品に対しては大きな武器になる。
また2番組同時録画時にも録画番組の再生はもちろん、編集作業まで可能になっている。録画中に編集作業を開始できても、編集作業中には予約録画は開始されないといった「逆が真ではない」といったあたりに注意しなければならないが、マルチタスク機能は総じて強力だ。2番組同時録画中でも操作レスポンスがとくに悪化する印象はなく、せいぜい「見るナビ」の動画サムネイル再生の開始がちょっと遅れる程度。正直、感心してしまった。
本機はやはり「4倍録画」ことH.264での録画が大きな特徴であり、その画質もフルHDにこだわっただけのことはある(→前編を参照)。その「4倍録画」に相当する「HEモード」は万能とはいえないものの、ドラマなどの録画ならば大きな不満もでないし、同じ表現を使うなら「約3倍録画」になる「HXモード」なら大抵の番組を不満のない画質でハイビジョン録画できる。順調に値下がりを続けるBD-Rの1層メディアを有効活用できるという点でも存在意義は大きいはずだ。
一方でもう1つの特徴であるDVDメディアへのAVCRECでのダビングは現時点でも魅力は感じるが、将来的に再生環境がどれだけ充実するかでもその価値は左右されるだろう。依然としてBDメディアの方が容量あたりの価格は高いが、1層BD-Rなら1枚1000円を切る価格でも購入が可能になっており、CPRM対応のDVD-R/DVD-R DLに対してもう2倍の価格差はない。
どのメディアを選択するかは、個々の価値観次第だと思うが、どうせ自己録再が基本なら、筆者は保存スペースという点まで考慮してBDメディアを中心に利用するだろう。AVCRECはあくまで付加機能として捕らえた方が正解だと思う。これが片面1層15GバイトのHD DVD-Rが対象になるとDVDメディアへのハイビジョンダビングの価値観も微妙に変わってくるので、評価は非常に難しいともいえる。
これらを踏まえて総括すると、本機の魅力はH.264録画も含めた画質の良さと、レコーダーとして基本に忠実な点といえるだろう。H.264録画に関してはソニー製品と比較した場合には好みの問題もあると思うが、自己録再を基本にすれば本機の方が最終的な見せ方がうまいのは事実だと思う。自動録画に関しては頑ななまでに否定的スタンスとも言えるが、番組表からの予約録画が中心であればそうそう不満は出ないはずだ。既にハイビジョンレコーダーを所有している人にとって重要なi.Linkによるムーブに対応している点が大きいと思う人も少なくないだろう。
あちらがPSP連携ならこちらはSDメモリカードを軸にSDオーディオなら多くの携帯電話と連携ができるし、当然ながら自社のハイビジョンカムコーダーとの連携でも必要十分な機能を備えている。ソニー製品との2択であれば、リビングにおいて(年齢幅の広い)家族で使うなら使い勝手の点で本機かなと思うし、フルHDテレビとの接続が前提でH.264録画もしっかり活用するつもりなら見せ方の旨さで本機かなと思う。とにかく“ソツのなさ”はいかにもパナソニック。あえて不満をいうなら、外観に価格相応の重厚感がない点だろうか。
現時点でのライバルであるソニー製品は高度な自動録画機能、DLNAサーバ機能、俊敏なユーザーインタフェースがあり、筆者はこれにも正直強く惹かれる。というか、結局DVDレコーダー時代の図式はここへ来ても基本的には変わっていないとことも強く感じた。ただしパナソニックは自らの弱点を着々と改善しつあるのに対し、例えばソニー製品の場合ダビング時の不自由さは従来製品からまったく改善されていないに等しい。これに東芝の「RD-A301」や「RD-X7」といった新モデルがどのような形で絡むことになるのか、ここ数カ月はハイビジョンレコーダーがちょっと楽しそうだ。
関連記事
- H.264録画に対応した新「ブルーレイDIGA」を試す(前編)
パナソニックからH.264エンコード機能を備えたBlue-rayレコーダーが登場した。フルHD解像度のH.264エンコード、そしてDVDメディアへのハイビジョン記録など、競合となるソニー製品にはない解りやすい特徴を持っている。詳しく検証していこう。 - 松下、AVC録画対応のBlu-ray DIGAを発表
パナソニックは10月2日、「CEATEC JAPAN 2007」の会場でBlu-ray Discレコーダーの新製品3機種を発表した。MPEG-4 AVC/H.264エンコーダーを搭載。フルハイビジョン解像度のまま長時間録画が可能だ。 - H.264録画で何が変わるのか、ソニー「BDZ-L70」
ソニーからほぼ1年ぶりのモデルチェンジとなるBlu-rayレコーダー4製品が投入される。H.264エンコーダーを搭載し、「ダビング10」にも対応を予定するなど、待ちに待った新モデルといえる。今回は「BDZ-L70」を使用して、ハイビジョンレコーダとして何が変わったのかをチェックしていこう。 - ソニーのBDレコーダーでH.264録画を検証する
ハイビジョン映像圧縮方式の本命ともいえるMPEG-4 AVC/H.264に対応したソニーのBDレコーダーがいよいよ登場する。今回はファーストインプレッションとして、H.264関連の録画、ダビング、その画質について速攻チェックを行った。 - 「AVCREC」――AVCHDとはどう違う?
「AVCHD」という名前を聞く機会が増えたが、そこへ新たに「AVCREC」というよく似た名前の映像規格が現れた。今回は、両規格が登場した経緯と違いについて解説してみよう。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.