「Cellテレビ」、登場は意外に早い?:2008 International CES
東芝がテレビなど家庭用AV機器へCellプロセッサを導入した際のモデルケースを展示している。意外に「Cellテレビ」の登場は近いのかもしれない。
International CESの東芝ブースには新発表の北米向けREGZAの新モデルが多数展示されて、メインステージの眼前にはHD DVDタイトルの“ツリー”もそびえ立っているが、注目なのがCellプロセッサを利用したデモ。いわば「Cellテレビ」とも呼べる存在のものだ。
同社はCEATEC JAPANでもSD解像度の映像をHD解像度にCellプロセッサを用いてリアルタイムにアップコンバートするデモを行っているが、今回はそのアップコンバートデモに加え、48本分のSD解像度の映像をリアルタイムに同時にエンコードし、1画面に映し出すデモを行っている。
あくまでもCellを家庭用AV機器に搭載した際にどのようなアプリケーションが有用かということを検証する展示ではあるが、同社は以前からCellを用いた映像処理の研究を行っているほか、2007年9月にはCellの技術を用いた画像処理コプロセッサ「SpursEngine」も開発しており、家庭用AV像機器へのCellプロセッサ実装は十分に可能性があると言える。
今回のデモの範囲ではまだプロセッサパワーに余裕はあり、純粋なプロセッサパワーだけを問題とするならば、現時点でもデモ以上の本数のリアルタイムデコードも可能だ。SpursEngineと比較しても「はるかに上」(同社)のパフォーマンスを発揮することが可能であり、48本リアルタイムデコードについてもSpursEngineではデコード自体は行えるものの「リアルタイムとは呼べない状態なってしまう」そうだ。
CellのAV機器実装について、現在の最大の課題は熱対策だという。Cellは90ナノプロセスルールで製造が開始され、現在はより発熱が少ない65ナノへのシュリンクが進められている。今回のデモ機材は90ナノプロセスルールのCellにて動作しているが、プロセッサパワーに余力を残した状態でも冷却ファンが必要になるほどの発熱があるという。
AV機器は、PCやゲーム機に比べてより高いレベルでの静音性・耐久性が求められる。ただ、発熱については65ナノ版ならばかなり改善される可能性があり、その65ナノ版は2007年3月にIBMが生産を開始している。今回のデモで同社が模索している“Cellのパワーでどのようなユーザーメリットを提供できるか”に解答が見つかれば、その際には「Cellテレビ」が出てくるのだろう。その登場は意外に早いのかもしれない。
関連記事
- 2008 International CES:CESプレスデーにおける「テレビのトレンド」
今年のCESプレスデーでは、昨年ほどのテレビに関する新トレンドが見られない。ただ、各社が同じ方向を目指しているのは間違いない。それは「デザイン」と「ユーセージ」で薄型テレビの可能性を広げようとしていることだ。( - 2008 International CES:“飛ばさない”高速無線技術、ソニーが開発
米Sonyが1月から春にかけて北米市場に投入する新製品を紹介した。同社の説明会はブース内で行われるため、展示品の内覧会といったテイストを併せ持つ。今回も一足先に展示物を見ることができた。 - 2008 International CES:Digital Experienceで面白アイテムへタッチダウン
International CESの出展社と報道関係者のカジュアルなパーティー、「Digital Experience!」。今年はアメフトちっくな雰囲気のなかで、iPod対応テレビなどのユニークなアイテムへタッチダウン! - 2008 International CES:超薄型にワイヤレス、LGは薄型テレビを大量発表
LG Electronicsは、International CESの開幕前日となる1月6日、バラエティに富んだ8シリーズ24モデルの薄型テレビを発表した。 - 2008 International CES:シャープ、65V型の“次世代液晶テレビ”を披露
米シャープが初公開時よりも大画面化した、65V型の次世代液晶テレビを披露した。“次世代”でも液晶の大型化を牽引するという自負の表れか。 - 2008 International CES:東芝、299.99ドルの“第3世代”HD DVDプレーヤー
東芝アメリカはInternational CESにて、第3世代となるHD DVDプレーヤー3モデルを発表した。価格は299.99ドルから。 - 2008 International CES:予備放電ゼロ――パイオニアがPDPコンセプトモデルを発表
パイオニアが2種類のPDPコンセプトモデルを発表した。1つは最も薄い部分で厚さ9ミリという“超薄型”の50インチモデル。そしてもう1つは、予備放電をなくして漆黒の表現を可能にした“究極のコントラスト”モデルだ。 - 2008 International CES:フォーマット戦争の「終わりの始まり」?――ワーナーがBlu-ray Discに一本化
ワーナー・ホーム・ビデオが、HDパッケージソフトをBlu-ray Discのみに一本化すると発表した。北米でHD DVDタイトルの約半分を供給しているワーナーだが、この決断が次世代光ディスク戦争に与える影響は大きい。 - 2008 International CES:ラスベガスにたどり着くのか?──2008 International CES“会場500マイル手前”リポート
「なにもそんなにあわてなくても」と書いている本人も思っているCES正式開幕“前前前”夜リポート。急ぐあまり、2008年はラスベガスに着かないうちから書きはじめた。 - 特集:2008 International CES
- 松下、ソニーら日米韓大手、業界団体「WirelessHD」設立
大手家電メーカー7社が、ワイヤレスHDデジタルインタフェースの仕様策定を目標とする業界団体を設立した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.