“壁掛けテレビ”にみる日本と欧米の違い:本田雅一のTV Style
今年の 「International CES」は、昨年の倍速技術のような大きな技術の流れはないものの、一方でより生活スタイルに合ったテレビの置き方や使い方を提案する傾向が目立った。とりわけ多かったのが“壁掛け”提案。実はアメリカの場合、ほぼ100%に近い購買者が壁掛け設置を前提に購入の検討を行うそうだ。
先週、世界最大の家電の展示会「International CES 2008」が開催された。年を追うごとに拡大しているこのイベントの主役は、やはりテレビだ。特にホームエンターテイメントの分野において、ディスプレイは家庭の中でもっとも重要なアイテムだからだ。
現地からの速報でも、今年のトレンドについて伝えていたが、この連載ではさらにブレークダウンしていきたい。
さて今年は、昨年の倍速技術のような大きな技術の流れはないが、一方でより生活スタイルに合ったテレビの置き方、使い方を提案する流れが定着しつつある。その流れが、要素技術としてはWireless HDといった無線HD映像伝送技術や、超薄型ディスプレイ化といったトレンドにつながっている。
例えば超薄型化。実際に薄型テレビを購入している人ならば、おそらく分かると思うが、超薄型になっても実用上の違いはあまりない。いくら薄くても、パネルを支える足や、テレビを置くための台までが超薄型になるわけではないからだ。
それよりも、スタイリッシュな専用スタンドでインテリアとしての美しさを引き出したり、生活空間のバランスを崩さないよう配慮する一環として、超薄型デザインを提案するといった意図の展示が多かった。
とりわけ多かったのが“壁掛け”提案。実はアメリカの場合、ほぼ100%に近い購買者が壁掛け設置を前提に購入の検討を行うそうだ。実際に壁掛けで設置する薄型テレビユーザーは、そのうちの半分程度ということだが、それでも日本より圧倒的に多い。特に暖炉などの上に壁設置というパターンが多いらしく、暖炉を囲んで家族団らんという、昔からの西欧的文化の流れからきたものかもしれない。また、賃貸の家でも、ガンガン穴を空けて設置してしまう人が多いという、部屋の加工や工事に寛容なお国柄という違いも大きい。
とはいえ、単に金具を取り付けて壁掛けにするだけだと、本体の厚みと金具の厚みで壁から結構出っ張ってしまうため、本格的にインテリアにフィットさせようとすると、一部を壁に埋没させるなど、さらに一工夫が必要となる。しかし超薄型なら、薄型なぶん軽量でもあり、壁に絵を飾る感覚で設置できるというわけだ。
ただし、この際に邪魔になるのがケーブル類。きちんとしたインストーラーに頼めば、もちろんケーブルなどの接続も見えないように加工してくれる。しかし、状況によっては部屋が少し狭くなったり、大きな規模の工事になったりすることもある。テレビに新しい接続ラインを加える際にも、簡単にはいかない。
しかしWireless HDを用いれば、薄型・軽量に加えてケーブルの問題が大幅に解決する。もちろん、ワイヤレス化してもディスプレイの電源ラインは取る必要があるが、電源さえなんとかすれば、他の接続ケーブルはすべて、ディスプレイ部とは別に用意したチューナーボックスに接続しておけばいい。これなら工事を簡素化できるし、軽量ならば工事を自前でできるケースは増えるはずだ。
一昔前までは「夢の壁掛けテレビ」と言われたものだが、実際に壁掛けの時代になってみると、壁に掛ける人がいない日本市場。しかし、もっと生活スタイル、利用スタイル、住宅事情に合わせた提案をメーカーが意識するようになれば、日本でもだんだんと壁掛けスタイルが定着してくるかもしれない。
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