東芝は2月19日、同日に行われた取締役会でHD DVD事業の終了を決定、発表した(HD DVD事業終息、東芝が宣言)。
「事業立ち上げ以来、慎重な判断をしてきたが、年度あけから早急な判断を求められる事態が生じてしまった。(HD DVD事業を終息させることは)パートナー企業に対しても苦渋の決断。自社への影響のみならず、複数規格が併存することによる消費者の混乱を収束させるために今回の決断とした」(同社 代表取締役社長 西田厚聰氏)
HD DVD事業の撤退に際して、消費者対応を行うコールセンターを強化するほか、8年間は関連部品を保存してサポートを行う。同社はHD DVDディスクの製造を行っていないが、ブランクメディアを一般ユーザーが一定期間入手できるよう、ディスク製造メーカーと協議するほか、同社直販サイトでのメディア販売も視野に入れるという。
「HD DVD製品が引き続き使えるかという問い合わせが多いようだが、利用に際してはまったく問題ない。適切な説明と対応を行っていきたい」
同社はHD DVD事業について、昨年末までは積極的なニュアンスの発言が多かったものの、いわゆるワーナー・ショック以降は若干トーンが変化していた。しかしながら、基幹事業のひとつと位置づけていた事業の撤退という大きな決断が下された割には、判断スピードが非常に迅速だという印象もぬぐえない。
西田氏は「ワーナーの判断は寝耳に水。結果として競争として勝ち目のない状況になってしまったのが、判断を早めた理由」と述べ、結果的には、ワーナーの判断に端を発する、BestBuyやWal-Martといった流通側のBDシフトが迅速な決断を促したと言えそうだ。
同社製HD DVDプレーヤー/レコーダーは日本で約1万台/約2万台が出荷されているが、新製品の開発は行われず、「VARDIA」シリーズにも新たなHDメディア対応機が登場しなくなることになる。そうなると気になるのが、Blu-ray Disc製品を今後展開するかだが、「現在のところ、BD製品を手掛ける予定はまったくない」と西田氏はコメントしている。
関連記事
- 速報:HD DVD事業終息、東芝が宣言
東芝が「HD DVD事業を終息する」と発表した。 - HD DVD撤退報道に東芝が公式コメント
HD DVDからの撤退を検討しているとの報道に対し、東芝が公式コメントを発表した。 - 本田雅一のリアルタイム・アナリシス:“東芝、HD DVD撤退で調整へ”報道を読み解く
2月16日夜、NHKが「東芝HD DVD撤退で調整」というニュースを報じた。1月のワーナー離脱やBDの寡占進んだ後も、HD DVD撤退の動きはなく、あまりに唐突な情報という印象がぬぐえない。しかし、根も葉もないニュースかと言えば、それも違うようだ。 - 麻倉怜士のデジタル閻魔帳:「ワーナー・ショック」の本質
ワーナーがBlu-ray Disc一本化を決定したいわゆる“ワーナー・ショック”で、次世代DVD戦争は終結に向かうとみられている。この「フォーマット戦争の終わりの始まり」は何を意味するのか。 - 本田雅一のリアルタイム・アナリシス:フォーマット戦争の「終わりの始まり」?――ワーナーがBlu-ray Discに一本化
ワーナー・ホーム・ビデオが、HDパッケージソフトをBlu-ray Discのみに一本化すると発表した。北米でHD DVDタイトルの約半分を供給しているワーナーだが、この決断が次世代光ディスク戦争に与える影響は大きい。 - HD DVD撤退、東芝株価は上昇 「選択と集中」に好感
HD DVD撤退報道を受け、東芝株価は上昇。 - HD DVD買った人はどうなる 規格戦争の果て、消費者置き去り
東芝がHD DVDから事実上撤退する方向になり、次世代DVDはBlu-rayに一本化される見通しに。ただ、「消費者置き去り」のまま続いた規格戦争は、すでにHD機を購入した消費者への対応など、重い禍根をメーカー側に残す。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.