フルHDは当たり前、春のデジタルビデオカメラ総括:麻倉怜士のデジタル閻魔帳(4/4 ページ)
春の行楽シーズンを控えてビデオカメラ売り場が盛況だ。今回は“ビデオカメラウォッチャー”麻倉怜士氏にハイビジョンビデオカメラの今年の傾向を解説してもらうとともに、各メーカーの人気機種にもコメントしてもらった。
――一昔前ならばメディアはテープのみでしたが、ハイビジョン化が進むと同時にメディアの多様化も進んでいるのは指摘頂いたところですが、HDD/DVD/メモリ/テープとあるなかでハイビジョン時代にふさわしいメディアとは何でしょうか。
麻倉氏: 最終的にはHDDとメモリ(メモリカード)に集約されるのではないかと思います。ですが、いずれも中間メディアなので、最終的にどう帰着させてアーカイブ化するかという問題は残ります。アーカイブ化にはBDメディアを利用するのがベストだと思いますが、いかにスムーズにBDへ移動させるかは課題ですね。
現在もUSBで接続するDVDライターというアクセサリーが用意されていますが、これがDVDではなくBDとなるのが望ましいスタイルではないかと思います。撮影した映像をビデオカメラの中に閉じこめておくのではなく、BDとしてコレクションしていくのがいいのではないでしょうか。せっかく撮影したフルHD映像なのですから、リビングなどのフルHD視聴環境で楽しみたいものです。
楽しむと言えば、注目できるデバイスがあります。バッファローの“LinkTheater”「LT-H90」シリーズです(関連記事)。いわゆるネットワークプレーヤーですが、ハイビジョンビデオカメラをUSBで接続、HDMIからテレビへ映像を出力する中継器として利用できます。
使ってみて快適なのが、ビデオカメラの種類を問わないことと(例外あり、製品情報参照のこと)、再生に便利なリモコンが付属することです。ビデオカメラは録画機なので再生には向いていませんが、こうした中継器を挟むことで快適に録画した映像を楽しむことができます。「撮るだけ」ではなく、「再生することが楽しい」を提案する製品も今後出てくることを期待したいですね。
また、これからのビデオカメラの在り方について言えば、携帯カメラで写真を撮るようにより感性のおもむくままにフルHD映像を撮影できるような製品、あるいはポータブルオーディオとの合体など、これまでにない考えを持った製品を送り出すメーカーが参加してくれれば、より面白くなりそうですね。その点で、アップルには期待したいですね。
麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴
1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。 日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNのCD12、JBLのProject K2/S9500など、世界最高の銘機を愛用している“音質の鬼”でもある。音楽理論も専門分野。
現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。
著作
「やっぱり楽しいオーディオ生活」(アスキー新書、2007年)――「音楽」をさらに感動的に楽しむための、デジタル時代のオーディオ使いこなし術指南書
「松下電器のBlu-rayDisc大戦略」(日経BP社、2006年)──Blu-ray陣営のなかで本家ソニーを上回る製品開発力を見せた松下の製品開発ヒストリーに焦点を当てる
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)──ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)──プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)──ソニーのネットワーク戦略
「DVD──12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)──DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)──記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)──互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)──プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)──新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)──シャープの鋭い商品開発のドキュメント
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