“壁掛けテレビ”の復権(2/2 ページ)
軽薄なテレビ(ほめ言葉)が壁掛けテレビ需要を喚起した。日立によると、「UTシリーズ」ユーザーの6割が「薄さ、軽さ、壁掛け」を購入理由に挙げ、実際に15.2%の人が壁掛け設置にしているという。そして同社は「日本全国壁貼り計画」の開始を宣言した。
石膏ボードに壁掛けできる理由
テレハング方式では、35ミリ径の太い樹脂製ブッシュを金具と石膏ボードに通し、表と裏を連結して壁と一体化。壁内部に飛び出たブッシュの先端を内桟(間柱)に接着剤もしくはネジで固定することで強度を高めるというもの。同社の検証によると、剥離限界点はボードアンカーなどに比べて4倍も高いという。
少しかみ砕いて解説してみよう。
まず問題になるのは石膏ボードの強度だが、同社の言葉を借りると、「チョークは横から負荷をかけるとすぐに折れてしまう。しかしチョークを立てて、上から負荷をかけても簡単には折れない」。チョークと石膏ボードは基本的な素材は同じ。壁面に対して正面から力を加えると簡単に割れるが、ボードに対して垂直に力がかかるようにすれば意外と強いのだ。
もちろん、単純に石膏ボードに穴を開けてボルトを通すだけではテレビの重さが重量バランスを崩し、壁の穴を広げながら前に倒れるだけだ。そこでまず穴を補強し、壁とテレビ取り付け金具を一体化する。穴は3つ(32〜37型)あるいは4つ(42型)。壁の負荷を分散した上で、前述のようにブッシュの先端を石膏ボードの向こう側にある間柱やコンクリート壁に接着もしくはネジ留めする。
例えば、壁を貫くボルトをテコと見立てると、重量物(テレビ)のすぐ近くに支点(石膏ボードの穴)があれば、反対側は比較的軽いものでも均衡できるはず。テレビの重量負荷は、そのほとんどが支点となる石膏ボードにかかるが、立てたチョークに上から負荷をかけても折れにくい、というわけだ。
なお、一般的な家屋の場合、間柱は45センチ間隔で設けられているため(手抜き工事でなければ)見つけるのはさほど難しくない。壁の加工は基本的にブッシュ穴だけなので、工事自体も3時間程度で済むという。持ち家であることが前提とはいえ、テレハング方式は優れた壁掛けソリューションだ(より詳しい情報がほしい人は同社サイトを参照してほしい)。
全国壁貼り計画に期待
問題は、テレハングが工事を行えるエリアが基本的に関東地域だけで、あとは一部の量販店が工事を請け負っているだけという現状だ。そのほかの地域に住む人たちは工事業者を探すのに苦労することになってしまう。
日立は「日本全国壁貼り計画」の具体的な展開について明らかにしていないが、ここはやはり全国各地にある日立特約店や量販店、施工業者などに対して同方式を浸透させることを期待したい。容易な壁掛け設置を身近なお店に依頼できるようになれば、大きな潜在需要が掘り起こせるはず。ユーザーはもちろん、販売店やメーカーにとっても嬉しい状況を作ることができるだろう。
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