薄型テレビ、2008年春の新モデルを検証する(2):本田雅一のTV Style
最近、個人的に注目しているのが20〜16インチ程度の小型液晶テレビだ。以前は小型テレビといえばコスト最優先の製品ばかりで、画質に関してはさほどケアされていないものが多かった。ところが最近は事情が変わっている。
オリンピック商戦に的を絞ったミドルレンジの大型テレビが登場しているのとは別に、昨今、個人的に注目しているのが20〜16インチ程度の小型液晶テレビだ。以前は小型テレビといえばコスト最優先の製品ばかりで、画質に関してはさほどケアされていないものが多かった。
ところが、昨年の1月に東芝が発売した“REGZA”「20C2000」は違った。上位機種と同じ映像エンジンを搭載し、広視野角のIPS液晶パネルを採用することで、小型でも画質が良い液晶テレビを作ってみせた。
残念ながらその後、テレビ用20型IPSパネルの調達が難しくなり、品不足が続いた後に生産終了。後継機種もないという状況だが、ほかにもリビングへの薄型テレビの普及が一巡してきたあとの市場や一人暮らしの消費者向けに、画質面でも十分に評価できる小型液晶テレビが増えてきた。
ソニーの“BRAVIA”「M1」シリーズは、ポップな外観デザインやカラーバリエーションだけを見ると、どうしても画質は二の次の製品と思われやすい。実際、筆者も全く注目していなかったのだが、先日、20インチモデルを“マジメに”視聴する機会があった。
すると、これがなかなかどうして、キレイな製品に仕上がっている。同じソニーでも、BDレコーダーにはデフォルトで強いフレーム相関フィルターがかかっており、強い残像が残って見えたりするのだが、本機に内蔵されている「ブラビアエンジン2」にそのような傾向はなく、クリアでメリハリのある映像を引き出している。
といっても、以前のソニー製液晶テレビのように、白ピークがギラギラと眩しい印象ではなく、きちんと画質を作ってある。VA型液晶の弱点である視野角も、こうしたパーソナルなテレビならば、大きな問題ではないだろう。おそらく素のパネル特性が良いのか、あまり無理に絵を作った感がなく、素直な絵が出てくるので好感を持った。
こうした小型テレビがキレイに見えるのは、画面サイズが小さいことにより画素が緻密になること。WXGAに縮小表示されるため、ノイジーで情報の少ない地上デジタル放送の欠点が若干、緩和されることなどが理由だろう。
しかし他社の傾向を見ても、小型液晶テレビの方が不自然な描写(色同士の相関関係が崩れて妙な表現になること)が少ない。どのメーカーも「小型機をマジメに作ってみたら、意外にキレイなんで自分たちでも驚いた」と同じようなコメントをしていることから、小型パネルの方が品質の安定や色再現の素直さといった面で、根本的に有利なのかもしれない。
同様の好印象は、シャープの「LC-20D30」や、(残念ながら国内市場では大型テレビだけになるが)ビクターの「EXE L1」シリーズにも感じられた。パーソナルテレビという視点では、24インチのパソコンディスプレイ用パネルを用いてテレビを作り、PCとの接続性にも配慮したナナオの「FORIS.HD」という製品もある。テレビとパソコンの画面を1台で! という人には注目の製品だ。派手さのないマジメな絵作りだが、階調表現が丁寧でAVメーカーにも負けていない。
世の中、商戦期には大型テレビの情報ばかりになってしまうものだが、画面サイズは用途と目的によって選ぶべきだろう。パーソナルサイズのハイビジョンテレビにも、メーカーの目が向き始めているというのは良い傾向だ。
おそらく、今後は映像エンジンを共通化した、本気印の小型液晶テレビが増えてくるのではないだろうか。その実力は決して侮ることなかれ、である。
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