“カタ破り”の新事業も――ビクターとケンウッドの統合ビジョン
日本ビクターとケンウッドの経営統合が“第2フェーズ”に入った。両社は、10月1日付けで共同持株会社「JVC・ケンウッド・ホールディングス」を設立すると発表。それぞれのブランドを維持しながらシナジー効果を狙う。
日本ビクターとケンウッドの経営統合が“第2フェーズ”に入った。両社は、10月1日付けで共同持株会社「JVC・ケンウッド・ホールディングス」を設立すると発表(関連記事)。事業会社としてのビクターとケンウッドは、それぞれのブランドを維持しながらシナジー効果を狙う。
両社は、2007年7月に経営統合を目標とした資本・業務提携を発表した(関連記事)。一年前のケンウッドは、最悪の時期を脱してはいたものの全面回復には至らず、一方のビクターはもっとも苦しい時期。ケンウッドの河原晴郎会長は、その背景を「デジタル化の進展とともに設備投資やソフト開発負担が増加する一方、汎用部品による商品化が容易になって韓国や中国のメーカーが台頭してきた。さらにIT業界など異業種からの参入も競争の激化に拍車をかけた」と説明する。経営統合は、スケールメリットとシナジー効果を求めた“生き残り策”だった。
ただし、単純に合併するという手法はとらない。まずケンウッドとスパークスからビクターへ350億円を出資する形で資本提携を行い、昨年10月には合弁会社「J&Kテクノロジーズ」を設立。カーナビのエンジン部分などの共同開発と生産・調達の分野で協業を始めた。例えば、昨年11月にはケンウッドのオーディオをビクターのインドネシア工場で生産し、出荷を始めている。
さらにビクターは「アクションプラン2007」に沿って一部事業からの撤退や早期退職優遇措置などを実行。昨年から3四半期連続で営業黒字になるなど、徐々に効果が現れ始めている。またケンウッドもカーエレクトロニクスのOEM事業改革を経て、両社が主要な改革にメドがついたと判断。河原氏は、「それぞれの構造改革を終えた上で、経営統合を“新たな成長戦略の出発点”にする。非常に前向きな経営統合だ」と胸を張る。
4つの事業セグメント+カタ破りな新事業
JVC・ケンウッド・ホールディングスは、株式移転によって事業会社となるビクターおよびケンウッドの株式を100%保有する。東証および大証に上場しているビクターとケンウッドは上場を廃止し、代わりに持株会社を東証一部へ上場する予定だ。それぞれの株主に対しては、所定の比率で共同持株会社の株式が交付される。
カーエレクトロニクス、ビデオカメラ、業務用システム、エンタテインメントの4事業に注力する。両社が手がけているカーエレクトロニクス製品は技術開発や部材調達で協調する一方、市場では競合することになるが、それを問題として捉えてはいない様子だ。
共同持株会社の会長に就任する河原氏は、「両方のブランドを残しつつ、コスト効果を出す。そこに“合併”ではなく“経営統合”にした意味がある」と言う。またビクターの佐藤国彦社長も、「ブランドは両社が長い時間をかけて培ってきたもの。大事にして、市場で切磋琢磨するのがいい」と話している。なお、佐藤氏は持株会社の社長に就任する予定だ。
さらに、4事業のほかに“第5の事業セグメント”を育成する考えも示した。詳細は明らかにしていないが、「両社が持つ映像・音響・無線技術を高いレベルで融合することで、デジタル・ネットワーク時代をリードする“カタ破り”な新事業を創造する」という。「イメージは、アップルがiPodで起こしたようなイノベーション。われわれは単なる老舗の寄り合いではないことを示したい」。
関連記事
- ビクターは“大画面”に特化、高級路線へシフト
ビクターが「新中期経営計画」を発表。国内テレビ事業を再編し、製品ラインアップを42型以上に限定することを明らかにした。販売ルートも系列店およびAV専門店に絞り込むなど、“選択と集中”を加速させる。 - ビクターとケンウッド、共同持株会社を設立
日本ビクターとケンウッドが経営統合へ向けて共同持株会社「JVC・ケンウッド・ホールディングス」を設立する。 - ビクターとケンウッドが経営統合へ 正式発表
日本ビクターとケンウッドが経営統合に向けて資本・業務提携すると正式発表した。紆余曲折をたどった松下のビクター売却がようやく決着。ケンウッド会長は「ビクターとの協業でシナジーを追求したい」と意気込む。 - ビクター、経営統合に伴い次世代リアプロの開発を見直し
ビクターがケンウッドとの経営統合をにらんだ事業計画を発表。カムコーダとカーエレを柱にする一方、リアプロについては次世代機開発を含めた基本戦略の抜本的見直しが行われる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.