“音”を追求したHDMIケーブルが生まれた理由――サエク「SH-1010/810」(3/3 ページ)
画質の良さをうたうHDMIケーブルは数多く存在するが、“音”を追求したものは今までなかった。サエクコマースが発売する「SH-1010/810」は、“音の質感”を高めるために素材や構造から見直した初めてのケーブルだろう。実は、このケーブルが生まれた背景と筆者は無関係ではない。
“黒”“白”“水色”を使い分けよう
前述した音のインプレッションは、すべて「プレイステーション 3」(PS3)で映像出力をアナログコンポーネントに設定し、パイオニア「SC-LX90」に接続した際のSACD再生に対する印象だが、金井氏の開発している「TA-DA5300ES」でも同様の音質傾向があったそうだ。上記の条件は、HDMIで音を送る際に最も良い条件であるため、条件が変化すると音の傾向は変わる。
そこでパナソニックのBDレコーダー「DMR-BW900」と「SC-LX90」の間をSH-1010で接続し、いくつかのBlu-ray Discソフトを再生させてみた。「Chris Botti:Live with Orchestra」(24ビット96KHz、リニアPCM)、「New Days Cerine Dion Las Vegas Concert」(24ビット96KHz、ドルビーTrueHD)、「i.Robot」(24ビット48kHz、DTS-HD Master Audio)の米国盤3タイトルで試してみた。
いずれのソフトも、ソフトウェアの映像が収録されている解像度(1080/60iおよび1080/24pの8ビット色深度)で接続している際には、HDMIに映像がのることによる音質差は非常に小さい。特にChris Bottiではどっしりと安定した低域が印象的で、ライブ録音の前者2タイトルは、いずれもコンサートホールに漂う音の余韻が程よい包み込み感を出してくれる。S/N感の良さはセリーヌのヴォーカルの透明感、i.Robotにおけるダイナミックレンジの見事な描き分けなどで確認できる。
ただし、解像度が1080/60Pに上がると音の密度がやや下がり、各色12ビット伝送のDeepColorになると、ホールトーンが明確に薄く、余韻が粘りなく消えてしまうようになった。とはいえ、これはどんなケーブルでも同じこと。そうしたなかで、情報量の多さや周波数レンジの広さ、明瞭な音像と押し出し感の強い中低域のパンチは、SH-1010ならではの美点として残る。
一方、白ケーブルのSH-810だが、低価格モデルながら端子部の構造がSH-1010と同じであり、これにより音像にしっかりとした芯が感じられ、質感の描き分けも丁寧。周波数レンジやS/N感、質感表現の幅はSH-1010に及ばないが、キリキリとした耳障りな音が出てこないので、手軽な音用ケーブルとして使いやすい。
いずれものケーブルもサエクの公式ページなどでは“高音質”をうたうだけで画質への言及がされていないが、実際に映像を映してみると、これがなかなか侮れない。恣意(しい)的なほどにコントラストが伸びて見えるタイプではなく、透明感が増して適度に明暗のレンジが広がったかな? といった穏やかな見え方だが、純色の彩度はキレイによどみなく伸びてノイズっぽさが少ない。
個人的には圧倒的に音質の良いSH-1010が一番のお勧めだ。しかし、価格の高さは導入時にネックとなろう。プレーヤーとAVアンプなどオーディオ機器をSH-1010で接続し、そこから先、ディスプレイにはSH-810、あるいは画質面で定評のある、水色のSupra製HDMIケーブルを用いるといった使い方が、それぞれの製品特性に合っていると思う。
メーカー側もそうした使い方を想定してか、SH-1010は短めに細かく長さの違うケーブルを用意し、SH-810には最大15メートルまでの長尺ケーブルをラインアップしている。
型番 | ケーブル長 | 価格 | 発売日 |
---|---|---|---|
SH-1010 | 0.7メートル | 3万6225円 | 7月20日 |
SH-1010 | 1.0メートル | 3万9900円 | 7月20日 |
SH-1010 | 1.2メートル | 4万2525円 | 7月20日 |
SH-1010 | 1.8メートル | 4万9875円 | 7月20日 |
SH-1010 | 3.0メートル | 6万4050円 | 7月20日 |
SH-810 | 0.7メートル | 1万5225円 | 7月26日 |
SH-810 | 1.0メートル | 1万5750円 | 7月26日 |
SH-810 | 1.3メートル | 1万6275円 | 7月26日 |
SH-810 | 2.0メートル | 1万7850円 | 7月26日 |
SH-810 | 3.0メートル | 1万8900円 | 7月26日 |
SH-810 | 5.0メートル | 2万1000円 | 7月26日 |
SH-810 | 7.0メートル | 2万3100円 | 7月26日 |
SH-810 | 9.0メートル | 2万5200円 | 7月26日 |
SH-810 | 10.0メートル | 2万6250円 | 7月26日 |
SH-810 | 12.0メートル | 2万8350円 | 7月26日 |
SH-810 | 15.0メートル | 3万1500円 | 7月26日 |
繰り返しになるが、開発段階から音質面を磨いた初のHDMIケーブル「SH-1010」は、高音質なBlu-ray Discソフト、PS3からのSACD/CD再生に対して非常に効果的だ。まずは最もよく利用するプレーヤーとAVアンプの間から使ってみてほしい。
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