パナソニック「TH-50PZ800」のカラーリマスター効果をBD版「ドラキュラ」で確認する:山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.18(3/3 ページ)
パナソニックの「PZ800」シリーズには、カラーリマスターシステムと呼ばれるハリウッド仕込みの色彩表現技術が盛りこまれている。その効果を「ドラキュラ」で試した。
真っ赤なガウンが示唆するものは……?
「ドラキュラ」(原題:BRAM STOKER'S DRACULA)は、ブラム・ストーカーの原作を得て、フランシス・フォード・コッポラが監督・製作した1992年作品。異教徒との戦いに明け暮れた、15世紀のトランシルヴァニア地方に君臨したドラキュラ伯爵が、400年後の19世紀末のロンドンに現れ、自殺した愛妻の生まれ変わりのようなミナと出会い、恋をするというお話。永遠の愛を求め、時空を超えてさまよい続ける男の悲しみを壮大なスケールで描いたコッポラならではのゴシック・ロマン大作である。
本作は、第65回アカデミー賞で、衣装デザイン、メイクアップ、録音効果編集の各賞でオスカーを獲得しているが、とくに石岡瑛子が担当した衣装デザインがたいへん素晴らしい。19世紀末の英国貴族階級のニートなファッションの描写など、BDの高精細映像で見ると、生地のテクスチャーまでリアルに実感でき、その美しさに思わず感嘆の声を上げてしまった。
また、PZ800のカラーリマスター効果のすごさを実感したのは、暗うつなトランシルヴァニアの屋敷の中を徘徊(はいかい)するドラキュラ伯爵の真っ赤なガウンの描写。血の色をほうふつとさせるそのナマナマしい赤は、本機で見ると鮮烈という他ない訴求力を持っている。試しに画質調整項目を呼び出し、カラーリマスターをオフにしてみると、このガウンの赤が朱色がかるのが分かる。なるほど、血を連想させないこの色では、コッポラ監督の演出意図は伝わらないのではないかと思った。
このBD ROMは、フィルムグレインを極力残そうというマスタリングがなされており、ノイズもかなり目立ちやすいソフトなのだが、部屋を暗くして見る本機の「シネマ」モードは、ノイズを目立たせずにフィルムルックを生かした絶妙のトーンを楽しませてくれる。
もう1つ感心したのは、暗部から明部までホワイトバランスがじつに安定していること。黒に近いグレーが緑がかったり、白が青みがかったりせず、しかもミナを演じるウィノナ・ライダーのスキントーン(肌色)がシーンによってバラつくことがない。本機は3種類の色温度(6500/9300/13000ケルビン)が設定されているが、それぞれの色温度設定でホワイトバランスのトラッキングをデジタル制御で完全に調整しているという。
「パワーアスリート画質」を掲げ、お茶の間に浸透しているPZ800シリーズ。実は真摯(しんし)に画質を追い込んだ、かなりマニアックな製品であることがよく分かった。
「ドラキュラ」は第65回アカデミー賞で録音効果編集賞を獲得した作品だけあって、BD ROMに収録されたドルビーTrue HD5.1chのサラウンドサウンドの迫力も、そうとうすごい。ここはぜひ本格的な5.1ch システムを整備して楽しんでほしいと思う。TH-50PZ800は、その画質の素晴らしさに比べ、音は残念ながらかなりショボイ。同社がビエラリンクで組合せを推奨しているラックシアター「SC-HTR310」でも聴いてみたが、それなりの低音感は得られるものの、この映画の途方もない音響エネルギーを体感するには、まだまだ力不足だ。このPZ800シリーズの高画質に見合うような、パナソニック製サラウンドシステムをぜひ発売してほしい。
10月から社名もパナソニック株式会社に変更されることだし、社名に恥じないソニックパフォーマンスを持ったAV機器を期待して待ちたいと思う。
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