「NAS」――注目される録画機器としての可能性:デジモノ家電を読み解くキーワード
HDDを手軽に利用できる「NAS」。従来はPC周辺機器というカラーが濃かったが、いまやデジタル家電の分野にも活躍の場を広げている。今回は、録画機器としてのNASの可能性に注目してみよう。
家庭における「NAS」の存在感
NAS(Network Attached Storage)は、直接ネットワークに接続するタイプのファイルサーバを指す。LANに接続するだけで利用でき、OSのセットアップは不要。設定はWebブラウザから行うため手間がかからず、HDDの価格低下もあり値段も手ごろとあって近年急速に普及した。当初は企業を中心に利用されてきたが、現在では家庭向け機種も多数登場している。
家庭向けのNASには、ファイルサーバ以外の機能も搭載されている。プリンタの共有(プリントサーバ機能)や、デジタルカメラで使用したメモリカードをUSBポートに接続して写真を取り込む、といった付加機能は珍しくない。LinuxなどのフリーなOSにより駆動する機種が多いため、OSをカスタマイズして楽しむ強者も少なくないというマニアックな一面も。価格も1万円台から数十万円台まで幅広く、用途に応じたさまざまな機能が提供されている。
「NAS」がデジタル家電の周辺機器になる
録画機器としての利用を意識したNASは、数年前から製品化されている。例えば、バッファローが2005年に発売した「HS-D1.0TGL/R5」は、ホームネットワーク向けのデジタル家電接続用ガイドライン「DLNA」に準拠しており、録画用のサーバとして活用可能な製品だ。
NASを利用するデジタル家電も登場し始めた。2008年4月発売の東芝“REGZA”ZH500/ZV500は、新たに「サーバーダビング」機能を採用、内蔵HDDに録画した番組をホームサーバにムーブすることが可能になった。時期を前後してアイ・オー・データ機器から発売された「HVL4-G2.0」は、NASではなく「ハイビジョンレコーディングハードディスク」と銘打たれてはいるが、DLNA 1.5およびDTCP-IP 1.2をサポートしたことを除けば、基本機能はNASそのもの。今後進むNASのデジタル家電分野への進出、あるいはデジタル家電化の好例といえるだろう。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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