「DLNA」 (1)――デジタル家電のホームネットワーク:デジモノ家電を読み解くキーワード
ビデオで録った映像はビデオで、PCに保存した写真はPCで、というデバイス間の垣根が取り除かれつつある。今回は、異種機器間でコンテンツの共有を可能にする「DLNA」について解説する。DLNA
DLNAとは
DLNA(Digital Living Network Alliance)は、デジタル家電や移動端末、コンピュータなど、異種機器間の相互利用を推進するために結成された業界団体。参加企業は松下やソニーなど家電メーカーを中心とするが、インテルやマイクロソフトなどIT企業の影響力も強いとされる。
その団体が策定したガイドラインが、ネットワーク規格としての「DLNA」だ。2004年に公開された最初の版(DLNA 1.0)では、DVDプレイヤーなどのAV家電やコンピュータ用ソフトウェアを対象とした仕様を策定。2006年3月にはDLNA 1.0の拡張版(正式名称はDLNA Network Device Interoperability Guidelines expanded: March 2006だが、DLNA 1.5と略されることが多い)をリリース、モバイル機器やプリンタが対象機器に含まれるようになった。
DLNAでなにができるか
そのDLNAは、主に「ホームネットワーク」での利用が前提だ。DVDプレイヤーで録画した映像をコンピュータで再生する、コンピュータ上に蓄積した静止画像をテレビで見るなど、映像や音声が主要なコンテンツとして想定されている。DLNA 1.5はその活用範囲を拡大し、携帯電話やPDAで映像の再生や印刷処理を行うことも可能になった。
例えばWindowsマシンにデジオンの「DiXiM」などDLNAサーバソフトをインストール、LANに接続すれば、LANごしにほかのDLNAクライアントからそのマシンのコンテンツを再生できる。アイ・オー・データやバッファローから発売されている一部のNAS機器も、DLNAサーバとしての機能を備えるため、一種のメディアサーバとして機能する。ビデオやPCなど1つの機器に閉じこめられていたコンテンツを、ほかの機器と共有可能になるわけだ。現在は試作段階だが、DLNA対応携帯電話がこのようなネットワークに加われば、映像や音楽の楽しみ方も変わるに違いない。
広がるDLNAの輪
DLNAを採用したデバイスは、急速とはいえないが増加傾向にある。2004年のDLNA 1.0制定直後は「DIGA DMR-E500H」(パナソニック)など採用機種は限られていたが、ソニーの液晶テレビ「BRAVIA」はシリーズ製品の多くが対応、PlayStation 3もクライアント機能を搭載するなど、積極方針で臨むところも出てきた。家庭内の電力線を通信に使うPLCも普及段階に入ったことから、「DLNAでホームネットワーク」という時代も近いかもしれない。
次回は、DLNAの規格の詳細と、DTCP-IPとの関係について解説する予定だ。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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