惜別の「KURO」を慕いて(1):本田雅一のTV Style
周知の通り、この年末に発売するモデルをもって、高画質で知られたパイオニア製プラズマパネルは新規開発が行われない。パナソニック製プラズマパネルの採用は、「KURO」シリーズにどのような影響を与えるのだろうか。
これまで単独で紹介はしてこなかったが、高価でもそれに見合う高画質が得られるなら……と、パイオニアの「KURO」シリーズに注目している読者もいることだろう。なにしろ、この年末に発売するモデルをもって、高画質で知られたパイオニア製プラズマパネルは新規開発が行われない。チューナーレスモデルの「KRP-600M」「KRP-500M」、チューナー付きモデルの「KRP-600A」「KRP-500A」の4機種がパイオニア第9世代パネルを搭載するが、来年以降の新モデルはパナソニック製プラズマパネルを採用したモデルになる(→パイオニア、プラズマパネル生産から撤退)。
<おわびと訂正:初掲時、「パイオニア第10世代パネル」と記載されていましたが、正確には第9世代です。おわびして訂正いたします>
ご存知のように日立製作所も自社による民生用プラズマパネルの生産から撤退し、自社製テレビにパナソニック製プラズマパネルを採用していくと発表しているから、今後は主要な国産プラズマテレビは、すべてパナソニック製パネルとなってしまう(→自社パネルはなくても――日立製作所が見いだした方向性)。
“なってしまう”というと、やや後ろ向きに感じるかもしれない。しかし中期的に見れば日本の家電メーカーが培ってきたノウハウが、1つに集約されることになるため、すべてが悪い方向へと向かっているわけではない。
とはいえ、パイオニアのダイレクトカラーフィルターによる発色や外光による画質低下を緩和するフィルター処理、疑似階調の少なさや階調そのものの多さ、コントラストの高さなど、プラズマテレビの中で群を抜く画質を実現していた技術が、きちんと継承されるのだろうか? という心配をしている人もいると思う。
すでにご存知の方も多いだろうが、パナソニックはプラズマパネルの技術開発や生産技術に関わる技術者の、ほぼ全員(移籍希望をしない者を除く)を受け入れた。パイオニアのプラズマ技術をわが子のように育ててきたパイオニア常務執行役だった佐藤陽一氏も、「部下だけが移籍して苦労するのは忍びない」と、自身の意志でパイオニアを辞してパナソニックに移籍している。
パイオニアのパネルはコストよりも画質を重視して開発されていたため、量産効率を重視して歩留まりを高く保つことを優先するパナソニックのパネルには、必ずしもすべての技術を盛り込むことはできないかもしれない。しかし、異なるアプローチで開発を行っていた両社の技術が1つになれば、あるいはパイオニア製の高画質だが高価なプラズマパネルと同等のクオリティを持つパネルをパナソニックが高い歩留まりで量産してくれるのでは……という期待を持たせる。もともとパナソニックと日立製作所はプラズマ技術で提携関係にあったこともあり、今後は3社の蓄積した知恵と経験が1つになる。
とはいえ、まだ来年のパネルがどうなるか? といった直近の話がどうなるのかは分からない。1+1が2以上になる化学反応を起こすこともあれば、1+1が1のままという可能性もある。大きな景気後退の波という逆風もあるが、個人的にはより幅広いユーザーが世界最高峰のプラズマの良さを経験できるようになるのでは? と楽観的に見ている。
なにしろ、パイオニア最後の第9世代パネルは、本当に鮮烈な画質を実現している。ここまで良い絵が引き出せているなら、当然、パナソニックもそれを自社の技術に組み入れようと努力するだろう。
私は初代KUROの「PDP-6010HD」を自宅で使用している。現在でも充分にトップクラスの画質を持つモデルだが、しかし今年のモデルはいくつかの点が改善された。もちろん、そのひとつは5倍になったコントラスト比だが、最大のポイントは単にコントラストが上がってダイナミックな映像表現が可能になっただけでなく、“絵の質”という点で進歩していることだ。
――以下、次回。
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