“3D”に向けて本格始動するテレビ業界:本田雅一のリアルタイム・アナリシス(2/2 ページ)
家庭用“3D”システムの展開に向け、テレビメーカー各社の動きがにわかにあわただしくなってきた。来年から再来年にかけ、有機ELテレビなどとともに、“3D”が各社の大きなテーマとなっていくことは間違いない。
コンシューマー向け3D映像製品への展開は?
では、これまで沈黙していたコンシューマー向け3D映像製品への展開はどうなるのだろうか?
ソニーブースでは「プレイステーション3」の「グランツーリスモ 5」を3D映像出力にしたものがデモされていたが、こうした3Dゲームの3D映像出力対応はHDMI出力形式など接続方法が決まってくれば(→次世代HDMI規格が今年前半に登場、4K2Kや3Dに対応へ)、タイトル制作のハードルは高くないと思われる。
3Dゲームの場合、3D映像出力化のパラメータ(視差の作り方)を自由自在に変化させることができる(例えばサイズや視聴位置に応じて変えられる)という利点もあり、前記グランツーリスモの3D映像は今回、デモされている3Dコンテンツの中で、もっとも自然な立体感を感じることができた。
BD化に関しては、パナソニックなどいくつかの家電メーカーやメジャーな映画スタジオと可能性を探っているとのこと。パナソニックが今年3月に技術提案を行うとしていることから、こちらは規格を決めるまでの”時間の問題”となってきている。
問題は3Dディスプレイ技術を、ソニーとして提供するか? だろう。今回のCESでは液晶テレビに走査線ごとに異なる方向の円偏光をかけるフィルムを貼り付ける方式を採用し、展示している。この方式は以前から知られているものだが、2つの欠点があった。
1つは走査線を左右の目に交互に振り分けて3D化するため、縦方向の解像度が半分になる(フルHD液晶パネルの場合は540本)こと。さらに、それにともなってジャギーやモアレが見えるなど画質への影響があることだ。
もう1つは偏光フィルムの貼り付けにより、2D表示時の画質が低下すること。ただし、こちらは貼り付けるフィルムの質が向上したのか、数年前に見たものよりも格段に質が上がっており、問題のないレベルにまで達しているように見える。
一方、圧倒的な利点としてあるのが、フリッカーがまったくないことだ。偏光メガネをかける必要はあるが、左右の絵が常に同時出力されているので目への負担は、劇場用映画(144Hzの交互表示で3D化)よりも少ない。
展示会場ではソニー・ピクチャーズ(オープンシーズン)はもちろん、ディズニー(ボルト)、ドリームワークス・アニメーションズ(モンスターズ&エイリアンズ)、20世紀フォックス(アイスエイジ3)といった主要な映画スタジオの作品が流されていた。画質面ではさすがにパナソニックに落ちるものの、見やすさという点では将来の可能性を見せていた。
ソニーは最終的にどのような方式で、家庭向け3Dディスプレイを実現しようとしているのかを発表していないが、3D映像技術への傾倒を見せるライバル(パナソニック)に対して、ソニーグループ全体で対応していく姿勢を示したといえるだろう。
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