今年のCESで気になった製品、技術、動向:2009 International CES(3/3 ページ)
今回は、展示会と各社のカンファレンスを振り返りながら、改めてテレビ・ディスプレイ関係で気になった製品、技術、動向についてまとめてみることにしたい。
一方、画質の面で個人的に注目しているのが、パナソニックのNeo PDPである。Neo PDPというキーワードとその背景については、1年前のCESで紹介されていたが、実際にその技術を採用したパネルを使った製品「TC-P54Z1」が今年夏にも北米で発売される。
コントラストは4万対1だが、ここでの数字はさほど問題ではない。見た目にはもっと高コントラストに見える。加えて階調が多いにもかかわらず、プラズマにはつきもののの疑似階調が抑えられており、”Neo”と銘打つように従来のパナソニック製プラズマテレビを大きく超える画質を実現していた。プラズマ最後のとりでともいうべきパナソニックのパネルだが、その出来は製品化前の現段階でも大きく従来のものを上回っている。
絵作りはパイオニアのようなモニターライクな方向ではなく、パナソニックらしい華やかさのあるものだが、最終的な製品化時にはさまざまな作り込みが行われるはずだ。加えて将来、このパネルをパイオニアが調達してテレビを開発するならば、パナソニックとは違うマニアックな絵作りをしてくるだろう。
“ステイケーション”はどこまで続く?
北米市場では不景気の影響でAV家電が売れないといわれているが、実はBDプレーヤーとともに、テレビもまた影響は最小限にとどまっているという。
ソニーエレクトロニクスのテレビマーケティング・ジェネラルマネージャーの松尾俊宏氏によると、“ステイケーション”という現象が、テレビ売り上げへのインパクトを最小限に抑えたという。もちろん、売り上げ下落の影響がないわけではないが、例えばビデオカメラやデジタルカメラほどには、大きな変化はないという。
ステイケーションとは、StayとVacationを組み合わせた言葉だ。つまりお金がないから旅行を見合わせ、家族で自宅にいて家の中で何か楽しいことをやろう、という行動を表している。とくに昨年の前半、ガソリン価格の高騰もあって家族旅行が大幅に減り、ステイケーション傾向が強まった。このため一部のAV家電はサブプライム問題が叫ばれながらも売り上げが伸びたという。
その一方で、旅行に出かけるときにほしくなる製品は売り上げが減っている。ビデオカメラやデジタルカメラはその代表例というわけだ。
とはいえ、このステイケーション現象も、リーマンブラザーズ破たんによる金融危機の後は、もう通用しないと業界の中ではあきらめ感が漂っていたという。まずはディーラーが急ブレーキを踏んで仕入れを絞った。
ところがブラックフライデーを迎えてみると、予想以上に価格が下がったことも影響して売れ行きは悪くなかった。そもそもの発注数が少なかったことは影響したようだが「皆さんがいうほどテレビの市況は悪くないのがアメリカ。市場全体では売上げ金額が下がっているが、ソニーだけで見るとシェアは上がっている」(ソニーの担当者)のだという。
もちろん、楽観はできないが、どこにいても何かを楽しみたいという欲求があるならば、確かに自宅にいるだけでは楽しくない。そこにハイビジョンテレビが売れるというのは、確かにその通りかもしれない。価格が安くなれば、さらに大型テレビがリビングから各部屋に拡散し始めるだろう。
ステイケーション傾向は、景気後退に歯止めがかかるまで、当面は続くのかもしれない。
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