「CEATEC JAPAN 2010」総括(2)、麻倉怜士的“CEATECベスト3”:麻倉怜士のデジタル閻魔帳(4/4 ページ)
「CEATEC JAPAN 2010」総括の後編は、展示会場のみならず、CEATECの周辺で見つけた新しい技術や提案を含めてAV評論家・麻倉怜士氏が選んだ“ベスト3”を発表。それぞれの項目を掘り下げ、詳しく解説してもらった。
番外:東芝の「レグザ Apps コネクト」に期待
麻倉氏: 番外として東芝の「レグザ Apps コネクト」を挙げておきたいと思います。さまざまなメリットがありますが、やはりタグ共有によって録画番組の“死蔵”を防ぎ、見るきっかけを与える手段になる点に注目しました。リタグのコメントなどを見ても面白いですし、スカパー!が公式タグの提供を検討していることも見逃せません。ただ、その仕組みがやはり一番便利に使えるのは“全録”のレコーダーです。せっかく他人からダギングが来ても、録っていませんでは話になりません。CELL REGZAだけでなく、REGZAやREGZAブルーレイは全録対応にしてほしいですね。
また、今はREGZAとRDシリーズという囲い込みの中にあるものですが、幅広いユーザーが恩恵を受けられるようにしてほしいと思います。タギングに注目して実用化したのは素晴らしい発想。将来的にはオープンにして、多くの人に使ってもらうことが必要だと思います。
――最後に告知をどうぞ
麻倉氏: 私の新刊案内です。11月22日に、日経BP社から「パナソニックの3D大戦略」を刊行します。本体2000円+税です。3Dに賭けたパナソニックのアクティヴィティを追いました。以下、ニュースリリースの内容紹介です。
「パナソニックはなぜ大画面・高画質の3D映像にこだわったのか。3Dテレビ開発でハーフHDの道を選ばず、あくまでもフルハイビジョンのクオリティーで、3D映像を家庭に持ち込もうとしたパナソニック技術者たちの2年間の苦闘を描いたノンフィクション。著者ならではの技術者たちへの徹底的なインタビューを通じて、規格作成から製品化までを詳細に追う。テレビ、レコーダー、プレーヤーといった川下部分だけではなく、川上部分のコンテンツ製作用の業務用3Dカメラレコーダーを含めたフルラインアップをそろえたパナソニックの3D戦略の全貌を明らかにする渾身の開発ストーリー」。
ぜひ読んでくださいね。
麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴
1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーとパナソニックのBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNの CD12、JBLのProject K2/S9500など、世界最高の銘機を愛用している“音質の鬼”でもある。音楽理論も専門分野。
現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。
著作
「ホームシアターの作法」(ソフトバンク新書、2009年)――初心者以上マニア未満のAVファンへ贈る、実用的なホームシアター指南書。
「究極のテレビを創れ!」(技術評論社、2009年)――高画質への闘いを挑んだ技術者を追った「オーディオの作法」(ソフトバンククリエイティブ、2008年)――音楽を楽しむための、よい音と付き合う64の作法
「絶対ハイビジョン主義」(アスキー新書、2008年)――身近になったハイビジョンの世界を堪能しつくすためのバイブル
「やっぱり楽しいオーディオ生活」(アスキー新書、2007年)――「音楽」をさらに感動的に楽しむための、デジタル時代のオーディオ使いこなし術指南書
「松下電器のBlu-rayDisc大戦略」(日経BP社、2006年)──Blu-ray陣営のなかで本家ソニーを上回る製品開発力を見せた松下の製品開発ヒストリーに焦点を当てる
「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)──ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く
「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)──プレイステーションの開発物語
「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)──ソニーのネットワーク戦略
「DVD──12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)──DVDのメディア的、技術的分析
「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)──記録型DVDの未来を述べた
「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)──互換性重視の記録型DVDの展望
「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)──プラズマ・テレビの開発物語
「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)──新しいディスプレイデバイスの研究
「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)──シャープの鋭い商品開発のドキュメント
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