年末年始に見よう! 映像と音響で選んだオススメBlu-ray Discタイトル:本田雅一のTV Style
この時期、新しいテレビやプロジェクターを入手して、さて、年末年始にどんな映像を見ようかとワクワクしている方もいらっしゃることだろう。今回は、音と映像の質に特長のあるBlu-ray Discタイトルを紹介していきたい。
この時期、新しいテレビやプロジェクターを入手して、さて、年末年始にどんな映像を見ようかとワクワクしている方もいらっしゃることだろう。映画にしろ、音楽にしろ、人の好みは千差万別。映画の中身に関しては、個人の好みで選ぶほかない。これは紹介する側も同じで、結局のところ自分の好き嫌いが作品の評価に影響する。
映画の情報はさまざまな切り口でインターネット上にたくさん転がっているが、意外にないのが画質や音質の評価。せっかく新しい映像、音響機器をそろえたなら、できれば良い音や映像を堪能したいと思うものだ。
ということで、簡単に作品の内容に触れる部分も書くが、ここでは基本的に音と映像の質に特長のあるBlu-ray Discタイトルを、年末向けにピックアップしてみた。主に今年後半に発売されたものを中心に選ぶが、いくつかは今年前半に発表されたものもある。
ハッと驚く高鮮度の音「9 <ナイン>9番目の奇妙な人形」
「9(ナイン)」というタイトルを見ると、名の通ったミュージカルを想像する方もいるだろう。ややこしいことに、ミュージカルの「NINE」もBlu-ray Disc化されているので混乱するのもしかたがないのだが、ここで紹介する方の「9(ナイン)」は、ティム・バートンがほれ込んだ若手アニメーション作家のシェーン・アッカーが監督した映画の方だ。
シェーン・アッカー監督が作ったショート作品をティム・バートンが気に入り、「これまでの人生で見た映画のなかで、最高の10分間だった」と言わせ、さらには映画製作まで買って出たというのだから、かなりの熱の入れよう……っと、これは作品紹介ではなかった。とはいえ、それだけ力の入った作品ということ。
この作品のBlu-ray Disc、CGの出来や映像の質もさることながら、何よりすごい! と思ったのが音である。含まれているのは他のBlu-ray Discと同様の24ビット/48kHzのサラウンド音声トラックをドルビーTrueHDで圧縮したものなのだが、その鮮度感がとっても高い。
どこか空虚感を感じさせる荒廃した世界。その世界観や冷たい空気感、部屋の中のぬくもり、上下の異動感や立体的な音場など、場の雰囲気を繊細に音で伝えてくるかと思えば、ガツーンと金属系の強い音が突然脳みそを刺激してくる。丁寧でいて、濃密で、そして時に豪腕とも言える力強さを持つ音は、映像の良さをさらに引き立てている。
TrueHDは、DTS-HD Master Audioに比べるとひずみ感は少ないものの、やや低域が腰砕けになりやすいか? と思っていたのだが、本作品は素晴らしく腰のすわった力強い低域が出てくる。TrueHDになんとなく感じていた不満は、ここにはもう全くない。それでいてTrueHD的なひずみ感の少ない、柔らかな質感の音も出るのだから、きっと何かが変わったのだろう。
そう思っていたら、どうもTrueHDのエンコーダーが変更されたのだという。ロスレスなのだから、エンコーダーが何であれ、音なんか変わるわけがないということは、誰もが思うことなのだけど、作り手側が音質改善のためにエンコーダーを改良したというのだから、何かが違うのだろう。
まぁ、エンコーダーの何が変化したのかは想像しても分からない。しかし、その良さは「9(ナイン)」を買えば分かる。音の良さを感じ取りたいなら、是非、ごらんになっていただきたい。
あでやかな色の世界へ、バズ・ラーマンの2作品
このところ過去の名作を丁寧に仕上げてBlu-ray Discにすることで、映画好きにはすっかり評判が定着してきた20世紀フォックスのプレミアム・ブルーレイシリーズ。昨年は「ブレイブ・ハート」が旧作ながらブルーレイディスク大賞の高画質部門を受賞し、今年になっても「マイノリティ・リポート」「ロード・トゥ・パーディション」など、その品質レベルをずっと維持してきているのはすごい。
年末に向けては、「エイリアン」のアンソロジーパック(これも画質がすごくいい)、「チキ・チキ・バン・バン」「サウンド・オブ・ミュージック」(2作品とも笑ってしまうぐらい現代的な情報量の多い絵と鮮やかな天然色に修復されている)なども出てくる。どれも素晴らしいのだが、個人的にはバズ・ラーマン監督が直接、色再現や画質の調整に関わったという「ロミオとジュリエット」「ムーラン・ルージュ」の2つを推したい。
ロミオとジュリエットは画質面は素晴らしく、独特の色使いによる映像を、違和感なく、そしてノイズやひずみ感を感じさせることなく見せる。フィルム本来の質感をそのまま損ねないよう収録しているため、ヘタをすると圧縮ノイズだらけになるところを、うまく作った印象だ。ただし、若干ながら音の抜けが悪い印象。質が悪いというほどでもないのだが、どこか空虚さを感じるのは、元のサウンドデザインがそうなのだろうか?
ところが、同じバズ・ラーマン作品でも、ムーラン・ルージュは音も映像も両方いい。どちらか1つならムーラン・ルージュを選ぶべきだろう。スカッと抜けよく透明感もある音は、ロミオとジュリエットよりも濃密な印象。ミュージカル映画において、音の良さはそれだけでも武器だが、さらに画質もいいのだから文句なし。
19世紀のボヘミアニズムを感じさせる不思議な色彩の世界と、豪華絢爛(けんらん)さと淫靡(いんび)な夜の雰囲気を両方漂わせる映像美は、色の洪水に酔ってしまいそうになる。これだけ色情報たっぷりで、しかも輪郭はシャープ。さらにフィルムの質感を含む情報量もたっぷり。単にシャープでクリアな、単調画質ではなく奥深さを感じさせる。もともと、ムーラン・ルージュはフォックスが誇る高画質なマスターだったが、そこに監督自身の意志も加わってさらに魅力が高まった。
こちらも要チェックだ。
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