グランプリ「山猫」の衝撃――ブルーレイ大賞の舞台裏(前編):麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/3 ページ)
15日に発表された「第4回 DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」。グランプリに輝いたのは、なんと1963年公開の「山猫」だった。受賞理由と選考の経緯について、審査委員長を務めたAV評論家・麻倉怜士氏に詳しく解説してもらおう。
――山猫は、グランプリと「ベストレストア/名作リバイバル賞」のダブル受賞になりました
麻倉氏:前回まで、グランプリを獲得した作品は、部門賞から外れていたのですが、今回からシステムを変えています。例えば去年の「ベスト高画質賞映画部門」は、本来「アバター」が受賞していたのですが、アバターがグランプリを獲得したために次点の「インセプション」が繰り上がり受賞となったのです。そのようなシステムになっていた理由は、「なるべく多くの作品に受賞機会を与えたい」という思いからですが、実際には2位だったのに1位に繰り上がるというのもおかしな話でしょう。このため、今回から部門賞とグランプリの“ダブル受賞”が出るようになったのです。
賞 | 部門 | 受賞作 | 発売/販売元 |
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グランプリ | 山猫 | IMAGICA TV/紀伊国屋書店 | |
ベストBlu-ray 3D賞 | 塔の上のラプンツェル | ウォルト・ディズニー・ジャパン | |
ベスト高画質賞 | 映画部門(洋画) | ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1 DVD&ブルーレイセット(3枚組) | ワーナー エンターテインメント ジャパン |
ベスト高画質賞 | 映画部門(邦画) | 相棒ー劇場版IIー警視庁占拠!特命係の一番長い夜 | テレビ朝日/ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパン合同会社 |
ベスト高音質賞 | ビデオ(TV・ドキュメンタリー・音楽)部門 | Healing Islands OKINAWA3 〜沖縄本島〜 | ビコム |
ベスト高画質賞 | アニメ音楽部門 | カーズ2 | ウォルト・ディズニー・ジャパン |
ベスト高音質賞 | 音楽部門 | 佐渡裕 指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 武満徹:フロム・ミー・フローズ・ホワット・ユー・コール・タイム ショスタコーヴィチ:交響曲 第5番 | NHKエンタープライズ |
ベスト高音質賞 | 映像部門 | バーレスク | ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント |
ベストレストア/名作リバイバル賞 | 山猫 | IMAGICA TV/紀伊国屋書店 | |
ベストインタラクティビティ賞 | 浜崎あゆみ/FIVE | エイベックス・エンタテインメント/エイベックス・マーケティング | |
審査員特別賞(3作品) | ソーシャル・ネットワーク | ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント | |
審査員特別賞(3作品) | ヴェルディ:歌劇《椿姫》英国ロイヤル・オペラ 2009 | 日本コロムビア | |
審査員特別賞(3作品) | スター・ウォーズ コンプリート・サーガ ブルーレイBOX | 20世紀フォックス ホームエンターテイメント ジャパン | |
ユーザー大賞 | ユーザー大賞 トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン ブルーレイ+DVDセット | パラマウント ジャパン |
――なぜ、それほどまでに支持されたのでしょう?
麻倉氏:山猫がグランプリを獲得した理由の1つは、非常に画質が良いことです。オリジナルのフィルムは保管状態が悪かったようですが、スコセッシ財団が1万5000時間以上を費やしてフィルムを修復し、8Kスキャン、4K編集、2K(フルHD)デリバリーという流れでBlu-ray Discになりました。ルキーノ・ヴィスコンティ監督が描こうとした光と影、これほどの豪華さとリアリティーに彩られていたのかと驚かされます。
ブルーレイ大賞の表彰式でもコメントしましたように、山猫はBlu-ray Discの可能性をすごく感じさせてくれる作品です。つまり、最新作のようにシャープで美しい映像を入れることもできますが、65mmの大きなフォーマットが持っていた微細な信号でも直径12センチのディスクにしっかりと格納できる。芸術作品を収容する媒体としてのBlu-ray Discに器の深さを感じました。考えてみれば、第1回のグランプリを受賞した「ダークナイト」もIMAXの65mm大判フィルムの良さを引き出して評価された作品でした。
もう1つのポイントは、過去の名作がBlu-ray Discで美しくよみがえり、それを楽しむ人が増えていることです。一昨年の「サウンド・オブ・ミュージック」、その前の「風とともに去りぬ」あたりから、その傾向はありました。「山猫」の受賞について、最初は唐突な印象を持ったかもしれませんが、これもトレンドの1つだと思います。
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