グランプリ「山猫」の衝撃――ブルーレイ大賞の舞台裏(前編):麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/3 ページ)
15日に発表された「第4回 DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」。グランプリに輝いたのは、なんと1963年公開の「山猫」だった。受賞理由と選考の経緯について、審査委員長を務めたAV評論家・麻倉怜士氏に詳しく解説してもらおう。
DVDまでのパッケージメディアと根本的に異なるのは、修復やリマスターを経たBlu-ray Discは、劇場で見るリバイバル上映よりもはるかに画質が良いという点です。劇場公開用のフィルムは、編集したマスターネガからポジに、また配給などのために何世代ものコピーを経ていますから、最新のリストア技術を用い、手間暇をかけて修復したBDのほうが画質が良い場合が多いのです。
しかも、最近はオリジナルネガからスキャンします。35mmフィルムは4K、65mmフィルムは8Kでスキャンし、4Kで編集する方法が一般的。編集技術の確かさも加わり、監督が思い描いた独自の世界がよみがえります。現代に生きるわれわれは、BDで初めて名作の“本当の姿”を見ることができるといっても過言ではありません。
――リストアBDのトレンドは、今後も続きますか?
麻倉氏:続くでしょう。2012年にリストアBDとなる作品の中で、最も期待されるのは「アラビアのロレンス」です。CES取材の後、カラー・ワークスというソニー・ピクチャーズ内のリストア専用プロダクションを訪ねる機会がありましたが、そこで8Kスキャン/4K修復で一年がかり、のべ100人が作業を行っていました。あまりにも作業量が多いため、1つの画面を4つに分割して、それぞれに担当者を付けて並行作業するのです。
アラビアのロレンスは1962年公開の作品ですから、当時のスタッフに現役の方はいないと思いますが、2005年のリバイバル公開時に撮影監督関係が色調整をやり直していたので、今回はそのときの指示をベースに色を修正するそうです。スタジオで1998年に作られた2Kマスターと、今回の4Kマスターを比較するチャンスもありましたが、実際に見比べると、ノイズ量や色のりが全く違いました。やはり2K(BD)で出すなら4Kマスターを使わなければダメだと感じましたね。
――後編では、「ベスト高画質賞」「ベスト高音質賞」などを解説していただきます。
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