薄型テレビは“プレミアム家電”になれるのか?:本田雅一のIFA GPCリポート(1/2 ページ)
イタリアで開催されたIFAの「Global Press Conference」。4K2Kと並び、テレビの産業の立て直しに有効な手段として紹介されたのが、”プレミアム製品”という軸だ。
IFAを主催するメッセベルリンとgfuが開催する「Global Press Conference」。今年のテーマの1つとして、テレビが4K2Kに向かうトレンドについてリポートしたが、もう1つの”軸”として、主催側および講演を担当したアナリスト、企業のマーケティング責任者などから出されていたのが、”プレミアム製品”という軸だ。
gfuの諮問委員会・会長ハンス=ジョアシム・カンプ氏は、いまだに家電業界にとってテレビが重要な商材であり、テレビ産業の立て直しが重要だと指摘。テレビの価格下落トレンドは、あまりにも急峻(きゅうしゅん)すぎると指摘した。カンプ氏の指摘はもっともなことで、これまで何度も”致し方ないこと”として許容されてきた。
例えば2007年、欧州におけるテレビの平均単価は789ユーロだったが、2012年には593ユーロまで下がっている。さらにさかのぼって1980年当時から比べて、テレビの価格は40%下がったという。これに対し、欧州における自動車の平均売価は30%以上も上昇した。
性能や機能、コンテンツソースの拡大(放送だけでなくネットコンテンツもという意味)などが続けられているのに単価は下落し、投資は増大している。これではテレビ産業に未来はない。そのために業界を挙げて製品のプレミアム性を上げていくべきという主張だ。
実はこのカンプ氏の講演の前日、デロンギグループがGPCで、「市況が困難な時のためのプレミアム製品」というセッションを展開していた。デロンギはご存知の通りイタリアの家電メーカーだが、現在はひげそりで有名なブラウン、フードプロセッサメーカーのケンウッド(日本のケンウッドとは異なるブランド)などのブランドを持つ企業グループで、主に白物家電を扱っている。彼らは「スマートフォンやタブレットで安価な製品ではなくプレミアム性の高い製品が何故好まれるのか、またプレミアムカーの売上げが困難な経済状況下でも伸びているのはなぜか?」と問いかけた。
そのデロンギは2012年の戦略としてプレミアム製品の充実を進めた。実際には超高級クラスではなく、一般ユーザーがプレミアム感を得られる製品……例えばコーヒー豆を挽くところから抽出までを完全フルオート化したエスプレッソマシーンを完全メタル外装とし、オートカプチーノ機能もフルオートで備えるデザイン性の高いモデルを、もっとも小型な製品クラスに導入するなど、幅広い層の消費者にプレミアム感のある製品を提供するという戦略だ。もちろん、上位モデルもより高級感を引き出したデザインと機能に更新し、ケンウッドのフードプロセッサもデザイン、機能ともにオリジナリティーの高い製品を投入したという。
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