3D映像を再評価、「ルミエール・ジャパン・アワード2013」で見つけた新しいリアリティー表現(後編):麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/2 ページ)
3Dは映像のリアリティーを増す表現手法の1つとして磨かれ続け、中にはステレオ撮影を上回る「2D-3D変換」コンテンツまで存在するという。おまけコーナーではキヤノンとソニーの4Kモニターを取り上げよう。
おまけコーナー:キヤノンとソニーの4Kモニター
――おまけコーナーです。今回は業務用4Kディスプレイですか
麻倉氏: 4K対応モニターは、今までアストロデザインとソニーしか出していませんでしたが、秋の国際放送機器展(InterBEE)などで注目を集めたのがキヤノンの30型4Kディスプレイ「DP-V3010」です。
実際に画質をチェックしたところ、階調のリニアリティーが素晴らしいですね。ここまで緻密(ちみつ)に表現できるのかと感心しました。また色ムラも少ない。ローカルディミングによってリニアな階調性を実現しています。キヤノンは、ムラ取や階調再現の専用ICを開発するなど、ハードウェアにも投資していますが、その成果が出たと思います。30インチ台という小さな4Kモニター、それも液晶パネルですが、液晶の問題点にうまく対処していますね。
――キヤノンは4K映像制作用ディスプレイには新規参入ですが、いきなりの大絶賛ですね
麻倉氏: キヤノンが、SED(Surface-conduction Electron-emitter Display)をやってたこと、忘れていませんか? 今は製造設備も残っていませんが、人員は残っています。平塚の事業所には、SEDを手がけていた技術者が数百人もいて、彼らが今回のモニターを開発したそうです。映像出力への夢をあきらめず、それが実を結びました。
私が最初に見たのは2010年のキヤノン技術展「Canon Expo」でしたから、開発を始めてから4年以上は経過しています。遅くなったとは思いますが、発売のタイミングとしては悪くないですね。4Kが盛り上がってきたときに番組制作に適切なモニターが出てきたのですから。またキヤノンは4Kカメラを出していますので、その出口としてもちょうどいいと思います。
今回、キヤノンは液晶パネルを使いましたが、今後は間違いなく有機ELに行くでしょう。SEDをやっていた同社は、自発光パネルの優位性を熟知しています。現在、台湾メーカーやソニーなどは、30インチ前後のパネルを作り始めています。コストやムラの問題でまだ市場には出てきませんが、ピクチャーモニタークラスで、もう少し低コストの製品が出てくれば、AVファン層も喜ぶでしょう。
最後にソニーが「InterBEE」で展示した4K有機ELモニターにも触れたいと思います。有機ELパネルの視野角を改善したモデルの30インチ4K版です。「CEATEC JAPAN」などで展示した民生用56V型は派手目の画質でしたが、今回は誇張のないしっかりした画でした。
本来、有機ELは自発光で視野角が広く、とても魅力のある映像デバイスです。ソニーとキヤノンの製品は、今後の方向性を示していると思います。
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