ぜひ見ておきたい高画質&高音質Blu-ray Discたち――「第6回DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」(前編):麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/2 ページ)
「第6回DEGジャパン・アワード/ブルーレイ大賞」の授賞式が2月中旬に行われ、15作品が受賞した。審査委員長を務めたAV評論家・麻倉怜士氏に今年の傾向と注目作品について詳しく聞いていこう。
ベスト高画質賞・映画部門(洋画)「ザ・マスター Blu-ray」
麻倉氏: 洋画部門はアワードの華です。過去6回のグランプリ受賞作を見ると、初回の「ダークナイト」以来、ハリウッド作品が圧倒的に多いでしょう。
また、その年の画質トレンドも見えてくるのが洋画部門です。「ザ・マスター Blu-ray」は、これまで追求してきた大面積フィルムにおける芳醇さを再認識させてくれる作品。第1回グランプリの「ダークナイト」もIMAXの65ミリフィルムで圧倒的な解像感とS/N感を実現しましたが、今回も同じサイズのフィルムを使用しています。今回はまさに「フィルムで撮った」というところが受賞理由だと思います。フィルムグレインがあり、情報量の多い、温度感の高い質感が審査員に感銘を与えました。ラージフォーマットならではの魅力が最大限に発揮されている作品です。
評価時にはメーカーが指定して部分のクリップを見るのですが、ザ・マスターの場合は、砂漠をオートバイが疾走するダイナミックなシーンでした。砂漠の暑さ、冷たいバイクと疾走感、アップになる登場人物など、フィルムならではの深みに達していた映像でした。本当に画質は素晴らしくて、過去数年を振り返ってもトップクラスだと思います。グランプリは別のジャンルから出て射ますが、それに匹敵するほどの高画質だったと思います。
ほかのノミネート作品には、「アフターアース」や「オブリビオン」もありました。どちらも4K撮影で、デジタルらしい切れ味の鋭いディティール豊富な画調です。それも多くの人が賞賛していました。
ベスト高画質賞・映画部門(邦画) 「許されざる者」
麻倉氏: かつて映画部門は洋画だけでした。そうすると自動的にハリウッド映画ばかりになってしまうので、邦画部門を設けたという経緯があります。今回の「許されざる者」はワーナーが出資していますが、スタッフはすべて日本人です。クリント・イーストウッド作品のリメイクですが、これも素晴らしい出来です。
クリアできれいに見せるというが一般的な“高画質”の定義ですが、映画の場合は物理的な高画質だけではなく、映画の内容に合った画質が求められます。例えば重たい作品なら映像も重め。「許されざる者」では、階調性より重厚さ、色も粘着性の高い色を使った画調表現が作品性に貢献していました。映像がトータルで作品を支えていると言えるものはこれまで、邦画で追求したケースはあまり見られませんでしたが、今回は「これぞ映画」といえる深みを感じる映像でした。
ベスト高画質賞・TVドラマ部門「初回限定生産 ゲーム・オブ・スローンズ 第一章:七王国戦記 ブルーレイ コンプリート・ボックス」
麻倉氏: テレビドラマ部門は日本の作品も含まれますがとてもハリウッド製には太刀打ちできません。貧弱で画に力がないのです。一方、米国はテレビドラマは一回当てれば、続編が作られますからリターンも安定します。そのぶん、お金をかけているのです。つまり、映画そのもののパースペクティブとタレント力、画質があり、そのクオリティーのままテレビドラマにしています。全体の雰囲気も作品の方向性にあった深みのあるもので、テレビドラマを超えていると思いました。
先日、カルバシティのソニーピクチャーズに取材したところ、米国ではテレビドラマであってもフィルムで撮影してデジタルスキャンするケースが増えているそうです。テレビカメラではなく、フィルムによって画質的なドラマ性を発揮させる。米国ドラマの調子の良さが反映されていますね。
――後編では、グランプリ受賞作を含めて注目作品を取り上げます。
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