機能でも”カッコよさ”を追求する欧州の4Kテレビ:本田雅一のTV Style(2/2 ページ)
「IFA Global Conference」の番外編として欧州を中心としたテレビメーカーの動向を紹介しよう。あまり馴染みのないメーカーばかりだが、日本メーカーとは全く違う方向性が面白い。
テレビに関してはフィリップスよりも大型の4Kテレビをラインアップしており、65V型と55V型を用意する「FINE ART」シリーズがトップモデルとなる。前述したソリッドなデザインのアルミフレームは見た目もよく、確かに高級路線を志向していることが分かる。
ユーザーインタフェースの面でもグラフィカルなデザインのカッコよさなど、いかにもというう印象だ。実際の画質となると評価できる環境にないためコメントは差し控えるが、高級AV製品の概念が「より高級白物家電に近づいているな」という印象を強く受けた。
テレビ製品のビジネスが高級白物家電のビジネスモデルに近づいているのかもしれないという印象は、VESTELやTCLに話を聞いても同じだった。両社とも長らく映像製品に取り組んできた会社だが、AVメーカーとして”高画質”をコアコンピタンスとはしていない。
VESTELの話を聞くのは初めてだったが、デザインに関しても欧州らしいクリーンな印象な一方、価格は安い。多数のOEM製品を手掛けており、OEM出荷分も合わせると欧州ではトップ3に入るテレビメーカーになる。日本でいえば船井電機に近い印象だろうか。
TCLに関しては100V型を超えるサイズを含む大型4Kパネルでは世界トップの生産を誇る。自社生産分に関しても、高級製品はトムソンブランドで、自社ブランド分はスペックで勝負しつつも価格を抑えるというやり方で拡大している。自社ブランドの50V型フルHDは14万円ほど。一方で110V型も扱う。
もちろん、これが世界のすべてではない。しかしながら、画質・音質の話はほとんどなく、デザインとスペック、それに機能面では”カッコよさ”を優先して機能性は二の次(というと怒られるだろうが)という方向性は、日本のテレビメーカーとは真逆で興味深い。
もっとも、これは彼らが彼らの土俵で戦うための方法であり、テレビが成熟市場になったからといって、これまでAVの技術・ノウハウを蓄積してきた日本メーカーが、その位置まで行って戦う必要はない。が、テレビという商品のあり方を考え直す議論の種として、なかなか興味深く感じた。
では、これらの欧州テレビブランドに対して、日本のテレビメーカーはどういう方向へと舵を切り、歩もうとしているのか。今回のコラムで示した視点を引き継いだうえで、次回は国内メーカーのテレビについて再び考えてみることにしたい。
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