オンキヨーの本気と遊び心、ずっしり重いBluetoothスピーカー「SAS200」:潮晴男の「旬感オーディオ」(2/2 ページ)
今回取り上げる製品は、オンキヨーのポータブルワイヤレススピーカー「SAS200」だ。常々、圧縮音声のオーディオ機器はそこそこ鳴ればそれでいい、なんて悪態をついてきたが、作り手がこんなにも正攻法に迫ってくると、こりゃあ襟を正して聴かなければと、背筋を伸ばしてしまう。
ビル・フリーゼルのアルバム「ギター・イン・ザ・スペース・エイジ」からビーチボーイズがヒットさせた「サーファー・ガール」のカバー曲を聴いてみる。このアルバムはジャズシーンで活躍するビルが、音楽に目覚めた1960年代にラジオから流れていたであろうポピュラーソングを中心に当時のミュージシャンに敬意を捧げて制作したものだ。1曲目の「パイプライン」は日本ではベンチャーズの演奏が有名だが、見事なまでにビル流にアレンジされ、彼がプレイするとこんな風にまで長閑になるのかと感心させられた。
アルバムにはペダル・スティールの盟友グレッグ・リースがゲストで加わり彩を添えているが、演奏だけでなく録音のクオリティーも抜群に高い。だからこの楽曲を聴いて良い音がしないシステムは、きっとどこかに欠陥があるのだと思う。SAS200は、このサイズにして詰まった感じがなくゆったりと音楽を描き出す。横幅わずか180ミリのステレオセットだが、波音が聴こえてきそうなさわやかさと、砂浜を吹き抜ける涼しそうな風の音が目の前に広がる。さすがに大音量再生は望めないが、デスクトップでそれは不要だ。
もっともオンキョーの製作者たちの遊び心が満載されているのもこのモデル特徴である。SAS200を2基使ってそれぞれLチャンネルとRチャンネル用に指定できるので、そうすればもっと音場感の豊かな再現も可能になる。「ミュート」キーとボリュームの「−」キーを長押しするとLチャンネルに、「ミュート」キーとボリュームの「+」キーを長押しするとRチャンネルになる。解除する時は「ミュート」キーと「+」、「−」キーを押せば元に戻るという仕組みだ。彼らはこれを「TWS」(トゥルーワイヤレスステレオ)と呼んでいるが、この時はSAS200の2基のスピーカーが同時にL、R用として動作するので音圧が足りない時にも有効である。
近々バックキャビティの材質をウォルナットの無垢材に変更して音の響きを豊かに感じてもらえるオプションも用意するということなので、先々の楽しみも広がる。4時間の充電で8時間駆動できるメリットを活かせば電源のないところでも活躍してくれるので、手軽に音楽を持ち運びできるポータブルオーディオ・ギヤとしてこれまでの非礼を詫びながらぼくも使ってみることにした。
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