史上最高の画質が手に入る! パナソニックのUltra HD Blu-rayプレーヤー「DMP-UB900/UB90」を試す:山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(2/2 ページ)
Ultra HD Blu-rayタイトルの発売に合わせて投入されるパナソニックのプレーヤー「DMP-UB900」「DMP-UB90」。先に発売された「DMR-UBZ1」と合わせ、その実力を評価した。
DMP-UB900にはDMR-UBZ1同様、HDRコンテンツをSDR表示した場合にHDRライクな画調に近づけられる映像調整機能がある。それが「ダイナミックレンジ変換調整」機能だ。これをプラス方向に持ち上げると白ピークは伸びるが、白が飛んでハイライトの階調が犠牲になってしまう。マイナス方向に寄せていくと、そのハイライトの階調が精妙に表現されるようになる代りに白の伸びが抑えられる印象となる。
ベストな調整法は、この「ダイナミックレンジ変換調整」機能を−5前後まで落とし(最大値は±12)、本機の他に用意された画質調整項目の中から「明るさ」「色の濃さ」をともに+5前後まで持ち上げること。この合わせ技によって、SDR仕様のVPL-VW500ES で「レヴェナント:蘇えりし者」をHDR仕様のTH-58DX950で観た印象にかぎりなく近づけることができるようになるのだ。
この調整を施した後、同様の画質調整を行った最新ファームウェア版のDMR-UBZ1といくつかのシーンで見比べてみたが、どちらも非常にクリアで見通しがよく、すばらしい画質。その違いはほとんど分からなかった。オープニング・シーンの川面の輝きや朝靄の向こうに見える野牛のシルエットがうっとりするほど美しい。まさにタルコフスキー作品を彷彿させる静謐な映像詩の趣。ぼくはこの作品を映画館でも観賞したが、わが家で観るHDR非対応の4K映像のほうがはるかに画質がいいと断言できる。
ちなみにパナソニックならではのマルチタップ処理でクロマ復元を受け持つDMP-UB900の「4KリアルクロマプロセッサーPlus」は、DMR-UBZ1開発以降の研究成果が盛り込まれ、いっそうの高画質化(色切れのよさ)が図られたというが、 5月25日からダウンロードが可能になった最新ファームをインストールすれば、DMR-UBZ1でもDMP-UB900と同等の果実が得られるようになるという。
DMR-UBZ1にはないDMP-UB900ならではの機能で、「これはいい!」と思わず感心したのが、再生しているディスク情報と出力された状態が一目で分かる「再生情報」表示機能だ。例えば「レヴェナント:蘇えりし者」を再生しながら、操作メニュー内にあるこの機能を呼び出すと、画面上方にディスクの映像情報として、「3840×2160/24P HDR/BT.2020 Y Cb Cr4:2:0/10bit HEVC 22Mbps」というふうに表示されるわけだ。時々刻々と変わるビットレートまで分かるのが興味深い。
一方、出画情報としては、HDR非対応のVPL-VW500ESとの組合せでは「3840×2160/24P SDR/BT.709 Y Cb Cr4:2:2/12bit」と表示される。色域がBT.2020 からBT.709に変換され、輝度・色差信号が12bit出力されているのがおわかりいただけるだろう。
さて、DMP-UB900には同軸と光(Tos Link) のデジタル音声出力の他に、7.1chと2ch専用のアナログ音声出力が用意されている。そこで音楽CDを用いて2ch専用出力の音を聴いてみた。
192kHz/32bitタイプのDAC チップ(バーブラウン『PCM5102』)が採用された2ch専用出力の音はHDMI出力と共通した持味で、じつに歯切れがよく軽快。音楽を闊達にテンポよく描写する印象だ。ダブルレイアードシャーシのDMR-UBZ1の音と比較すると、低音の力感や中低域の厚みなどでは後塵を拝するが、そのキビキビとしたフレッシュなサウンドには、本機ならではの魅力があると思った。
また、本機にLANケーブルをつないでネットワーク経由でハイレゾファイル(本機の『ホ−ムネットワーク』メニュー内に『メディアレンダラー』という項目がある)も聴いてみたが、CD再生に比べると音に伸びやかさが足りず、いまひとつ冴えない印象。気合の入ったCD再生系に比して、ネットワーク系の音質ケアが十分ではないのかもしれない。
「DMP-UB900」と「DMP-UB90」の違い
最後にDMP-UB900とDMP-UB90の違いについて触れておこう。先述したようにDMP-UB90にはアナログ音声出力は用意されていないが(同軸・光のデジタル出力はあり)、HDMI出力は2系統持っていて上位機同様、映像/音声の分離接続が可能。HDMI音声出力は、音質面で有利な「映像信号<黒レベル固定>」に設定されており、また音声伝送にもっともふさわしいクロックが与えられている。
画質面では、クロマ復元処理がDMP-UB900は「4KリアルクロマプロセッサーPlus」でDMP-UB90は「4Kリアルクロマプロセッサー」。Plusの有無は、急峻(きゅうしゅん)な色エッジの周りに発生しやすいオーバーシュートを抑える処理が加わるかどうかの違いだ。
実際にTH59-DX950で両モデルを見比べてみたが、「レヴェナント:蘇えりし者」のような実写映画では、その違いは分からなかった。大面積の色エッジが目立つCGアニメなどでその違いが出てくるのかもしれない。それよりも大画面スクリーンで観たときにS/N感、映像の見通しのよさでDMP-UB900がわずかに上回る印象を受けた。
いずれにしてもアナログ音声出力が必要ないという方は、価格差を考えて積極的にDMP-UB90を選ぶという選択も当然アリだとは思う。
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