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高知の山奥で見つけた「異世界」 極楽を作り続けるモイアさん(2/4 ページ)

極楽の入口は死の先ではなく、高知の山奥にあった。

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 摩訶不思議なモノ達との遭遇に、くらくらとする頭を抱えずにいられない。

モイアさん、どうしてこんなの作っちゃったの?

 モイアさんは、普段ストーンロードにはいない。常に新たな作品を産み出さんと、自宅やアトリエにいるからだ。今回は偶然にも会えたので、モイアさんのご自宅でお話を聞かせていただくことになった。

――とりあえず、気になってたんですけど「モイア」ってなんですか? まさかとは思いますが本名ですか?

 「いーやいや、石をいっぱい置いてるけえ。モイアっていう名前は、ほら、モ・ア・イから取ったの。あっははは」

 石が好きで石をたくさん置いているから、ザギンやギロッポンのように業界読みでモイア。本名は橋本晃光さんと言い、確かにモアイとは全く関係ない。


イースター島のモアイに、見えなくもない……か……?

――極楽というのはどういう意味なんですか?

 「この辺は美しい棚田が有名やけ。最初は天国って看板にしちょったけど、天国やと死ぬみたいやけぇ、人間の楽しいを極めるちゅうことで、極楽に変えた」

 なるほど確かに、モイアさんの個性的な「楽しさ」は、極みの境地にある。美しい棚田の高角は、モイアさんの作品群によって、見たこともないような異空間になっているのだ。

――最初に作ったのはどれですか?

 「最初にツリーハウスつくったなあ。焼肉したり泊まったり遊べる様にしたんけえ。これができたって時は、すごかった。みんな来て遊んでって」


高角から少し離れた河川敷にあるツリーハウス

昔は、お店として営業もしていたようである

――ストーンロードにツリーハウス。素人の仕事とは思えないのですが、建築のお仕事をされているんですか?

 「若い頃はダム工事とかしてたけんどな、最終的な仕事は作るんでなく、壊すほうやった。ぼくはもともと解体、掃除の免許もっとるけえ」

 「特に建築の勉強はしちょらんけど、若い頃からいろいろ発明しとった。その頃は仕事ばっかりやったけぇ。今は引退して余裕があるけ、どーーんどん作っちょる」

 モイアさんは若い頃、早明浦ダム・稲村ダムなどの建設工事に携わってきた。その経験と、解体業をしていた頃に手に入れた重機を駆使し、モイアさんの思う極楽は形成されたのだ。しかも、現在進行形で極楽は広がっていっている。


なんと、この木のぬくもり溢れるご自宅もモイアさんの手作りだった

――どうしてこの極楽を作ろうと思ったのですか?

 「解体してると、いらないものがいーっぱい出るけんど、どれも捨てとうないんじゃあ」


学校から持ってきたという鉄棒

もう使わないブイを使った街灯

 解体業をしている頃、モイアさんは数多くの現場をまわった。そこでは、庭石、木材、家に置かれていた記念品、まだまだ使えるものが全て捨てられていっていた。

 「もともとこういう、木とか石とかが好きやったけぇ。人間というのは、何を好きになるかわからんもんじゃなあ」


ボーリング場を撤去した時に持ってきたボールのモニュメント

 「ひっくり返ってた石を、思うように立てなおす。うんと廃材を生かして、思うように作る。それは、使われんなったものに命をもう一回吹き込むっちゅうか。普通の人じゃ、よう続かんし魅力もないじゃろけんどな。こんな風に石ころが好きって物好きもおるんじゃの」

 そう言ってモイアさんは、自分が作った庭を眺めて、微笑んだ。

 モイアさんにもう一度命を吹き込まれると、それらは普通の人には考えもしないような形に転生する。モイアさんが「極楽」と形容したストーンロードは、輪廻天生のそれと似ている気がした。もっとも、モイアさんはそんなことを考えてはいないかもしれないけど。

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