ハイレゾをもっと気持ち良く――2016年、心に残ったホームオーディオ機器4選:山本浩司の「アレを聴くならぜひコレで!」(2/2 ページ)
ヘッドフォンもいいけれど、スピーカーで聴く音はもっと味わい深い。今回は、今年出会って心に残ったスピーカーリスニングのホームオーディオにおけるデジタル・ギアを紹介しよう。ラインアップはChord「DAVE」、DELLA「N1A/2」、PS Audio「NuWave DSD」、OPPO Digital「Sonica DAC」だ。
米PS Audioの「NuWave DSD」
コードの「DAVE」は、ハイレゾファイル再生でもCD再生でもじつにすばらしい音を聴かせてくれ、がんばって購入してよかった! と大満足しているのだが、定価150万円と高価な製品なので、誰にでもおいそれとお勧めできる製品ではない。そこでここでは、最近聴いて感銘を受けた、音楽ファイルの高音質再生用として多くの人にお勧めできる、比較的手頃な価格のUSB-DACを2つご紹介しようと思う。
最初に挙げるのは、米PS Audioの「NuWave DSD」。筆者は20万円以下のUSB DAC の多くを集めてテストしたことがあるが、その中でもっとも音質が好ましいと思えたのはこの製品と米OPPO Digitalの「HA-1」だった。
PS Audioは、1973年に米国カリフォルニア州で創立されたオーディオ専業メーカーで、1990年代には交流波形を再生成するパワーコンディショナーのヒットで名を上げたブランド。現在はDACの他、プリアンプ、パワーアンプなど、幅広く魅力的なラインアップをそろえている。
本機NuWave DSDは、同社製DACの中で最廉価モデルだが、ESSの32bit DACチップを採用し、完全ディスクリート構成のクラスA出力段と大容量コンデンサーをおごった強力な電源回路を有する本格設計が採られている。
実際に聴いたその音は、中低域の押し出しがよく、音楽を力強く描く印象で、どんな音楽を聴いても不満を抱かされることはなかった。広大な音場感の再現やローレベルの微細な暗騒音なども巧みに描写し、ハイレゾファイルならではの魅力を満喫させてくれる。15万円という価格が信じられない見事な音といっていいだろう。
また、ハーフサイズ(横幅210 ミリ)の外装デザインの魅力も際立っている。黒いアクリルのトップとシルバー・アルミのフロント、両パネルのコントラストが鮮やかで、四隅にゆるくアールを付けた意匠上の工夫も洒落ている。
OPPO Digital「Sonica DAC」+もう1つ
自室でも使用しているOPPO HA-1の魅力については以前本欄で指摘したことがあるが、この冬には同社からまたまた魅力的なデジタルギアが登場する。
それが「Sonica(ソニカ) DAC」だ。USB-DAC として使えると同時にUPnP準拠のネットワークプレーヤーとして、また豊富なデジタル入力を有した(アナログ入力も1系統あり)プリアンプとしても活用できる興味深い製品だ。ただし、HA-1にあったヘッドフォンアンプ機能は省略されている。
まず注目すべきは、ESSテクノロジーの最新最高峰DACチップ「ES9038PRO 」が1基採用されていることだろう。これは8チャンネル仕様のチップだが、1チャンネルあたり4つのDAC が動作するように設計されているので、合計32基のDACを内蔵するチップということになる。本機の場合、ステレオモードで使用されるので、L/R チャンネルそれぞれ16基のDACを並列動作させることができる。その並列動作の手法によってダイナミックレンジをかせいで、高音質化を図っているわけだ。
対応レゾリューションは、USB-DAC使用時は768kHz/32bit(PCM)、25MHz(DSD)まで、ネットワーク使用時は192kHz/24bit(PCM)、2.8MHz(DSD)までとなっており、現在楽しめるほぼすべてのハイレゾファイルが楽しめる。その点でも本機に死角はない。
DELA N1Aとつないで評価機の音を聴いてみたが、いかにもオッポらしい腰の座った安定感に満ちたサウンドで、これまた10万円を切るという価格設定が信じられない本格的なものだった。USBケーブルの持ち味もストレートに伝えるところにも本機の実力の片鱗がうかがえた。
いずれにしてもNuWave DSD、Sonica DACともに今買い時のデジタルオーディオギアであることは間違いない。スピーカーリスニングでハイレゾファイル再生に挑戦したいという音楽ファンに、太鼓判を押してお勧めできる製品と断言したい。
そういえば、OPPOからこの冬にUHD BDプレーヤー「UDP-203」が登場するという話も。詳細が分かり、視聴テストの機会が得られれば、また本欄でお伝えしたいと思う。
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