“フルスペック”とはいえないシャープの8Kテレビ:CEATEC JAPAN 2017
10月2日に予約受付を開始した初の8K対応テレビ「AQUOS 8K」。CEATEC JAPAN 2017の会場ではさかんにその映像美をアピールしているが、お茶の間のテレビとしては気になる部分も残っている。
シャープは「CEATEC JAPAN 2017」で同社が進める「8Kエコシステム」を大々的に展示。開幕前日の10月2日に予約受付を開始した初の民生用8K対応テレビ「LC-70X500」を中心に8K映像の魅力をアピールしている。ただし、コンシューマー製品としては気になる部分もある。
8Kは、現行フルハイビジョンの16倍となる約3300万画素(7680×4320ピクセル)の高精細な画面を持つテレビ。解像度の高さに加え、そこで生まれる階調差によってハイビジョンや4Kでは表現できない臨場感や実物感、自然な立体感を生み出す。LC-70X500は8K/60Hzまで対応し、色域も先に発売された業務用70V型8Kディスプレイ「LV-70002」に迫る。民生用という位置付けながら、100万円(税別)という価格で映像製作や医療分野など業務用途の引きあいも多い。
展示会場では、シャープがカイロスと共同開発した世界初の8K対応硬性内視鏡システムも展示した。「医師は8Kモニターを見ながら手術を行うことで広い視野と高精細な映像を得られる。これまでの内視鏡では広い範囲を映そうとしても映像がボケてしまっていた。8Kでは広い範囲の細かい血管や神経など、これまで見えなかった部分が鮮明に表示されるため、一定の時間で施せる手術の件数が増加した」(同社)
チューナーや入力端子に注意
一方、民生用テレビとしてのLC-70X500には、初の製品だけに気になる部分も残されている。まずLC-70X500は12月に販売を開始する予定だが、8Kのネイティブコンテンツはまだ市場に存在しない。2018年12月にNHKの「8K実用放送」が開始されるまで、1年間も待たされることになる。
またLC-70X500は8K実用放送対応のチューナーを内蔵していないため、放送を視聴する場合は必ず追加コストが発生する。シャープは8K実用放送に対応したチューナーの開発を進めており、放送開始に間に合わせる計画だが、当然価格などの詳細は決まっていない。
もう1つ、8K映像信号の入力端子も課題だ。LC-70X500は4K対応のHDMIケーブル4本を使用し、4分割した8K信号を伝送する方式を採用している。同様の入力端子を持つ製品も存在するが、あくまでも独自仕様のため他社製品との接続は保証されない。また1月の「CES 2017」では、HDMIの規格化を進めているHDMI Forumが8K/60Hz伝送に対応した新規格「HDMI 2.1」を発表済み。将来的にHDMI 2.1が8K伝送の主流になるのはほぼ確実で、LC-70X500の8K入力は過渡期ならではの独自仕様となってしまう。
コンシューマー製品としてはまだ“フルスペック”といえず、高価なLC-70X500だが、業務用途ではむしろ低価格な8Kモニターとして人気を集める可能性がある。8K映像製作の現場などで導入が進めば、シャープの考える8Kエコシステムを進展させるドライバーになるはずだ。同社では、「発売までに200台(予約)、2018年の3月末までに1000台」という目標を掲げている。
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