ガジェット&エージェント──モバイルツールの新しい役割

今後のモバイルツールは,単体でのみ利用されるものではなくなる……。そう予感させるツールがソニーの「eMarker」だ。オンラインサービスとモバイルガジェットの融合がもたらすものは?

【国内記事】 2001年2月8日更新

 気になる楽曲をマークできるソニーの「eMarker」は,液晶さえなく本体だけではなんの用途にも使えない。しかしインターネットと接続することですごく便利なツールになる,今までにないタイプの情報アイテムだ。どんな経緯でeMarkerのような製品が登場したのか? そして今後のモバイルツールやインターネットサービスにどんな影響を与えるのだろうか。

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アメリカで法人化されたeMarker事業

 eMarkerは構想2年。ソニーによると,eMarker事業のプレジデントが,過去に放送局でアルバイトをしていた経験から,このビジネスを思いついたという。一日に1000件単位で寄せられる“曲名の問い合わせ電話”のニーズを,eMarkerサービスにつぎ込んだのだ。その後,この事業は米国で法人化することとなる。

 2000年8月,eMarkerを販売するために国内で行われた1000名程度のフィールドテストでは,現在日本で販売されているものよりも一回り大きなボディが使われ,テストを通じさまざまな意見が採り入れられていった。そして翌9月には米国で,そのボディのまま米SonyStyleで販売。大きな反響を呼んだ。

 米国では,日本に比べてラジオ番組が豊富で,人気が高い。また,オンラインショップでCDを購入する大きな要因となる“試聴”も,日本と違って各レコード会社の権利を包括してライセンスする団体があるため,実現が容易だった。このように事業の障害が少なかったのも米国で先行できた理由だ。

 日本では同年12月にeMarkerは発売された。初日で数千個が完売し,2001年度は数十万台規模の販売目標を立てているという。

実放送から楽曲を解析するサービス!?

 eMarkerの実際の使い方はこうだ。聞いている楽曲が,ラジオから流れていれば1回,テレビだったら2回本体中央のボタンを押す。あとで付属のUSBケーブルでPCと接続して,eMarkerのWebサイトに接続すると,その楽曲が何だったのかが表示される。

楽曲が入っているCDがリストアップされる。ここから直接購入することも可能

 マークした楽曲は通常,放送の15分後には調べることができる。この曲名だが,実は放送局が用意するタイムテーブルから判別するのではなく,実際に流れている放送を音声解析にかけ,その楽曲が何だったのかを判別しているのだという。

 この解析サービスを提供するのはプランテックという企業。放送された楽曲(60秒以上)を音声検知ソフトなどを駆使して解析し,逐次楽曲データベースを更新している。システムは自動処理なので,解析しにくい楽曲の場合は手作業になるため時間が掛かる。eMarkerのサイトに曲名が登場するまでに半日から一日と時間が掛かるときがあるのはそのためだ。

 eMarkerのWebページでは,検索されたリストから直接音楽CDの情報を閲覧でき,そこでそのままCDを購入することもできる。ソニーは,「あくまで中立的な立場でeMarkerサービスをライセンスしていきたい」と話す。ソニーグループのコンテンツ販促ではなく,eMarkerを通して,ソニーが運営するCDオンライン販売全体の売り上げ拡大を狙っていきたいと考えているからだ。

 今後eMarkerは「iモードメールのコンテンツとして登場」したり「AV機器などに組み込まれる」予定だという。

モバイルツールの新しい役目

 eMarkerには液晶画面もなく,本体だけでは何の機能も持たない。しかしインターネットと接続することで「クリックすればリアルな世界を“ブックマーク”できる」という新しい可能性が生まれる。これは,今までにはないモバイルツールのあり方だ。

 高速なCPUを載せメモリーを積み込み,本体だけで何でも実現しようとする必要はまったくないし,オンラインだけに固執することもない。自由な発想のモバイルツールなのである。

 プランテックが提供する楽曲リサーチシステムは,単にWebページ上のサービスとして提供されたとしたら,あまり使われなかったかもしれない。手間をかけて気になる曲が流れていた時間をメモすることはないだろうし,膨大なWebページの中からプランテックのURLを思い出してタイプする可能性も薄いからだ。

 しかしeMarkerとタッグを組むことで,理想のモバイルサービスが登場する。何の機能も持たないeMarkerが,オンライン上のサービスに生命の息吹を吹き込んだのだ。しかも私たちが望む最適の形で。

 いわば「ガジェット&エージェント」。モバイルツールはよりシンプルに,インターネット上のサービスに可能性を与えるために生まれ変わるだろう。オンライン上には,良質なサービスが山ほど眠っているのだ。例えば,ラジオ番組の会話を“検索”できるサービス「SpeechBot」はどうだろうか?

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[増田(Maskin)真樹,ITmedia]

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