次世代携帯に向けて工夫を重ねる液晶メーカー──電子ディスプレイ展

次世代携帯電話で求められる，高速な応答速度，多色化，低消費電力に向けて，さまざまな工夫を凝らしたディスプレイが量産を控えている。

【国内記事】

2001年4月18日更新

　東京ビッグサイトで4月18日に開幕したEDEX2001 電子ディスプレイ展では，液晶ディスプレイ，PDP，有機ELなどさまざまなディスプレイ技術が展示されている。

　展示された各種のディスプレイの中で，ひときわ目立っていたのは，2インチ前後の携帯電話向けディスプレイと3インチ前後のPDA用ディスプレイだ。

　IMT-2000では，携帯電話で動画の利用が見込まれており，これまで以上に高速な答速度と多色化，低消費電力が要求される。ノートPCなどに使われるTFT液晶は応答速度が高速で色数も多いが，携帯電話向けとしては価格や消費電力の面で問題が多い。そのため，STN液晶やTFT液晶を改良し，さまざまな工夫を凝らした製品が登場してきている。

シャープは2世代目“GF”“PF”液晶を展示

　GFカラー液晶（Glass Fine color LCD）とは，ガラス基板を用いてシャープがSTN液晶を改良したもの。J-フォンから発売予定の携帯電話「J-SH06」に採用されている。従来のSTN液晶に比べ，「色味は倍くらいよくなっている」（シャープ説明員）という。

　今回展示されていたのは，J-SH06に搭載されるGFカラー液晶の次世代にあたる。1.9インチサイズで120×160ピクセル。6万5000色表示が可能だ。応答速度も，TFT液晶の2倍程度である60ミリ秒程度まで高めた。「夏くらいには出荷したい」（シャープ）という。

　PFカラー液晶（Plastic Fine color LCD）は，GFカラー液晶の表示性能を生かしながら基板にプラスティックを使い，“薄く，軽く，割れにくい”という特徴を持つ。スペック的にはGFカラー液晶と同等ながら，重さは3割ほど減っている。

　また，シャープが参考出品していた3.8型（QVGA）の透過型カラーSTN液晶モジュールは，ネット家電を対象にしたものだ。特に，Lモードを意識したようで，会場ではLモード端末のモックアップに組み込んだ形で展示されていた。ただしシャープの担当者によれば，「将来的にLモード端末に装備していきたい」とのことで，5月に発売する予定の製品には搭載されないという。

本体には「Lmode information terminal」と書かれている

　なおスペックは，応答速度が350ミリ／秒，コントラストが40：1，輝度が90カンデラ，消費電力は1.1ワットと標準的だが，「コストパフォーマンスに優れる」（シャープ）としている。

エプソンは画像処理で26万色相当に

　エプソンは，NTTドコモの「N503i」や「D503i」にも使われている「MD-TFD液晶」（用語）を改良した「MD-TFD II」を展示。MD-TFD IIでは，従来5ミリほどあった左側の額縁部分を3ミリにスリム化し，左右対称とした。また，動画表示時の消費電力を2分の1に削減している。

　多色化への要求に対し，エプソンが取った手段はソフトウェアによる画像処理だ。これは「EPSON Color Modulation」と呼ばれ，ルックアップテーブルを使ったトーンカーブ補正とディザ処理により，4096色対応の液晶を使いながら，26万色相当の画像表示を行えるという。

　EPSON Color Modulationは，静止画の処理に関してはソフトウェア，動画の処理に関しては専用のハードウェアを用いる予定。また，TFD液晶だけでなく，STN液晶にも採用される見込みだ。単に液晶の色数を増やすのと異なり「液晶自体は4096色に抑えたことで，省メモリと省電力になっている」とエプソンの解説員は語る。

　スペックとしては，2インチサイズ，MD-TFD方式で132×176ピクセル表示可能。動画表示時も消費電力は5ミリワットだという。

三洋電機は有機ELディスプレイもアピール

　三洋電機は，2.4インチ，5インチの低温ポリシリコンTFT有機ELディスプレイや，1.3インチのパッシブマトリクス型有機ELディスプレイ（用語）を多数，参考展示した。

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