移動通信の未来を見通す「4つのシナリオ」――アクセンチュアと国際大学GLOCOM

2010年,携帯電話は無線LANにとって変わられる? アクセンチュアとGLOCOMの共同研究で,想定される“4つの普及シナリオ”が発表された。

【国内記事】 2002年1月23日更新

 アクセンチュアと国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(国際大学GLOCOM)は1月23日,第3世代移動通信システム(3G:用語参照)および第4世代移動通信システム(4G:記事参照)に関する共同研究の成果を「2010年の移動通信業界を見通す4つのシナリオ」と題して発表した。

 “シナリオ・プランニング”と呼ばれる手法に基づき,可能性がある状況を複数にわたって提示するという内容。どのシナリオが実現する確率が高いかといった点には言及しない。


シナリオは「3G―3G以外(=無線LANなどを介した移動通信サービス)」「マス化―ニッチ化」の2つの系列により4つのマトリクスに分けられる

 アクセンチュア戦略グループ統括パートナーの程近智氏は発表の狙いについて,「各プレーヤー(企業)に自分にとって理想のシナリオを想定し,対応能力をつけてもらうため」と説明する。今後も外部からの批判・評価を参考にしつつ,研究を続ける方向だ。

 各シナリオの概要は,以下のとおり。

「はてしない物語」シナリオ(3G:マス化,3G以外:ニッチ化)

 3Gに対するニーズが強く,ほぼすべてのユーザーが3Gを利用する。3Gでビデオフォンなどのリッチコンテンツが花開くいっぽう,3G以外は街角でホットスポットサービスなどが一時利用されるに留まる。特に規制が行われない限り,MVNO(用語参照)の参入可能性は低い。

 基本料金とトラフィック収入を合わせた移動通信市場は緩やかに拡大:2001年の6兆300億円が,2010年には8兆9600億円にまで伸びる。

「新時代の夜明け」シナリオ(3G:ニッチ化,3G以外:マス化)

 ほとんどのユーザーが3G以外の通信サービスに乗り換え,3Gはビジネスアプリケーションなど特定セグメントへの普及に留まる。マスユーザーは無線LANなどによるモバイルIPフォンを利用し,新たなモバイルコマース市場が誕生。既存キャリアは回線を提供するだけの「土管屋」化し,MVNOによる高付加価値サービスが増える。

 移動通信市場は大幅に縮小:2010年には4兆2700億円まで落ち込む。

「覇権争い」シナリオ(3G:マス化,3G以外:マス化)

 3Gおよび3G以外の通信サービスが,それぞれニーズを満たして棲み分ける。マスユーザーは3Gの通話端末を利用するほか,3G以外のデータ通信端末も所持してリッチコンテンツを利用。キャリアは差別化戦略として,MVNOを参入させる可能性がある。

 移動通信市場は4シナリオ中,最大の伸び:2010年は9兆7100億円に達する。

「神話の終焉」シナリオ(3G:ニッチ化,3G以外:ニッチ化)

 固定通信の余剰帯域を無線LAN基地局などを介して相互開放する動きが広がり,ボランタリーなネットワークが形成される。マスユーザーは無料のモバイルIPフォンを利用し,P2Pアプリケーションを利用したデータ通信を活発に行う。3Gはビジネスアプリケーションなどに特化し,3G以外のサービスも街角のホットスポットサービスなどに留まる。

 移動通信市場は壊滅的状態:2010年には2兆1700億円にまで縮小する。

どのシナリオが実現?

 会場で発表者に,どのシナリオが実現すると考えるか尋ねたところ,「国内では携帯電話の通信キャリアが強力で,この発展がメインになる」という答えが大半を占めた。現状としては,これが無難な判断というものだろう。

 ただし,無線LANなどを介した3G以外の移動通信サービスを「ある時期から急速に発展する可能性がある」と推す声も多かった。アクセンチュアの程近智パートナーは,「たとえば自動車メーカーがリスクテイクして,車載型の無線LAN基地局により街中の車をアクセスポイント化する可能性もある」という。今後の“破壊的技術”の登場に期待,というわけだ。

 もちろん,無線LANがメインの移動通信技術になるには,問題も多い。国際大学GLOCOMの山田肇教授は「一般に普及するには,現状の無線の帯域では足りない」と述べ,「その場合,政府が規制を緩和して,より多くの帯域使用を認める必要がある」と指摘していた。

関連リンク
▼ アクセンチュア
▼ 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター

[杉浦正武,ITmedia]

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