PDA組込型試作機も登場――凸版印刷の電子ペーパー

凸版印刷とE Inkが共同開発する電子ペーパーは,視認性に優れ,バッテリー消費が少ないことが特徴。国際電子書籍フォーラムの凸版印刷ブースでは,Palmデバイスに電子ペーパーを組み込んだ試作機がお目見えした。

【国内記事】 2002年3月20日更新

 凸版印刷は,3月19日に開催された国際電子書籍フォーラムに出展,電子ペーパーを使ったデバイスの試作機を公開した。Palmデバイスの液晶部分に電子ペーパーを組み込んだプレゼンテーション用のデバイスが公開されるなど,商用化に向けたアプローチが伺える。

 電子ペーパーを組み込んだ形で展示されたのは,パーム コンピューティングのPalm III系デバイス。本来,モノクロの液晶は灰色がかった色だが,電子ペーパーは紙に近い白色で,文字が読みやすいのが印象的だ。視野角も広く,斜めから見ても画面が見えなくなることはない。

 電子ペーパーのディスプレイは反射型。反射型の場合,上から光が当たらないと見えにくくなるが,環境光下でも,紙に印刷されたような形で表示されていた。

 今回はプレゼンテーション用ということで,実際の操作と連動はしておらず,いくつかの画面をループさせていた。画面は10秒ぐらいごとにフェードイン,フェードアウトしながら切り替わるが,その際,若干残像が残る感もあった。


Palm III系のデバイスに組み込まれた電子ペーパー

 携帯電話に外付けするタイプの電子ペーパーは,NokiaのGSM携帯の下部にあるシリアル部分から電源を取って稼働する仕組み。現段階で想定される利用方法は「携帯電話内に取り込んだ電子メールなどのテキストデータの閲覧」(凸版印刷電子ペーパー事業化プロジェクト 壇上英利課長)だという。


携帯電話に外付けするタイプの電子ペーパー。関心を示している通信キャリアもあるという


電子ペーパーを利用した電子ブックリーダ。これが商品化に一番近い位置にあるという

 凸版印刷とE Inkが共同開発する電子ペーパーは,紙のような視認性を備え,低消費電力であることが特徴。(2月4日の記事参照)。凸版印刷は2月4日,米E Inkに対し2500万ドルの追加投資を行うとともに,電子ペーパーの主要構成部分である「前面板」の量産体制確立に向けて動き出している。

 現在はモノクロ版電子ペーパーの商品化に向けて開発を進めているが,日本ではカラー液晶が主流であることから,カラー版電子ペーパーの開発にも力を入れているという。「ディスプレイのカラー化は2004年が目標。原理的には普通の液晶ディスプレイと同等の表示色を実現できる」(壇上氏)。しかし,現在のモノクロ版電子ペーパーでも画面書き換え時の反応が遅いことを問題として挙げ,「反応の速度を上げることが当面の課題」(同)だという。

 カラー化以降は,折り曲げたり丸めたりしても利用できるようフレキシブル性を持たせるほか,動画への対応を図るなど,マルチメディア対応も視野に入れている。


電子ペーパーでありながら本のようなインタフェースを持つ「Last Book」。ページをめくる感覚を電子ブックビューワで実現する

 同社が最終的に目指すのは「Last Book」。電子ペーパーを束ねた紙の本のような体裁で,データをダウンロードして書き換えることにより,1冊の“本”がいろいろな本になるという電子ブックリーダだ。「その時々で一番ほしい本になってくれる夢の本。何年先になるかは分からないが必ず実現させたい」(壇上氏)

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[後藤祥子,ITmedia]

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