News 2002年2月4日 08:22 PM 更新

凸版印刷,電子ペーパー商用化に本腰――E Inkとの関係強化へ

凸版印刷が米E Inkとの提携を強化し,紙メディアと電子ディスプレイの長所を持つ「電子ペーパー」事業に本腰を入れ始めた。電子新聞や電子書籍など,紙メディアの代替用途が期待されている次世代メディアでの本格商用化にいち早く着手することで,同分野のアドバンテージを得る構えだ。

 PCや携帯情報端末がこれだけ普及しているのに,いまだに新聞や雑誌,書籍といった紙メディアは重宝されている。オフィスや家庭でも,PCで作成した文章を結局プリントアウトして確認しているというケースは少なくないだろう。IT化によって,ペーパーレスどころかかえって紙ゴミは増えるばかりだ。これは,電子ディスプレイが,結局は“紙”の一覧性,手軽さ,読みやすさに追いついていないのだ。

 紙のように薄く・軽く,読みやすい。それでいて電子ディスプレイのように何度も書き換え可能なメディア――「電子ペーパー」が次世代のメディアとして注目される理由はここにある。

 その電子ペーパーの実用化に向けて,日米の有力企業2社がしっかりと手を結んだ。

 凸版印刷は2月4日,米E Inkとの提携強化を発表。紙メディアと電子ディスプレイの長所を持つ「電子ペーパー」の本格商用化に向けた事業計画を明らかにした。


凸版印刷と米E Inkとの提携強化に関する発表会

 電子ペーパーは,紙のように薄いディスプレイの総称だ。表示するための技術方式はさまざまあるが,共通するのは,紙のように軽くてフレキシブルに丸めて持ち運べる上,高コントラストで低消費電力な点だ。

 電源をオフにしても表示内容が保持されるため,省電力性という点では特に,他の表示デバイスに比べて大きなアドバンテージがある。そのため,電子新聞や電子書籍など,紙メディアの代替用途が期待されている。


電子ペーパーを利用した電子ブックリーダー

 数ある電子ペーパーの表示技術方式の中で,E Ink社のそれは,「マイクロカプセル型電気泳動方式」という独自の表示原理を使っている。

 その表示原理とはこうだ。まず,正(+)に帯電した白い粒子(酸化チタン)と,負(−)に帯電した黒い粒子(カーボンブラック)とが入ったマイクロカプセルが,透明電極と背面電極との間に敷き詰められている。この電極に電圧をかけると,正の電極側には黒い粒子,負の電極側には白い粒子が引き寄せられるのだ。


E Inkの表示原理

 あとは,液晶パネルのようにたくさんの電極のスイッチ(薄膜トランジスタなど)を背面板に取り付ければ,電極に電圧を加えるだけで白黒のパターンを表示することができるというわけだ。さらに,一度引き付けられた粒子は,電源を切ってもしばらくは静電気の力で当分の間はそのままの状態を保つ。

 マイクロカプセル内の白と黒の粒子は,必ず全部が一方向に向かうわけではない。1個のマイクロカプセル内の左右で,白と黒が異なる事もあるのだ。つまり,解像度はマイクロカプセルの大きさではなく,背面板の電極の数(細かさ)で決まるという。「文字ギワがキレイに表現され,モノクロでは非常に見やすい」(凸版印刷)。


1個のマイクロカプセル内の左右で,白と黒が異なる事もある

 白と黒がしっかり表示できれば,あとはカラーフィルタを使ってカラー化も容易になる。例えば,黄色を表示させるには,RGBの3原色のうち赤と緑だけを反射させればよいのだ。このカラーフィルタに関しては,凸版印刷が全世界トップの60%のシェアを誇る。


カラーフィルタによるカラー化も

 今回の提携で凸版印刷は,このマイクロカプセルを一面に塗布した「前面板」を生産していく。「前面板の生産ラインを2002年後半に立ち上げ,2003年春までには最初の商用出荷を行いたい。2005年には8インチ換算で月産150万枚体制まで生産能力を拡大する予定」(凸版印刷)。

 凸版印刷は昨年5月に,E Inkへの500万ドルの出資および共同開発を明らかにした(別記事を参照)。この時の出資の見返りは,「電子ペーパー用カラーフィルタの独占製造権を一定期間得る」ということだった。

 今回の追加出資額は,昨年5月の時の5倍となる2500万ドルとなっている。この金額を見ても,電子ペーパーにかける凸版印刷の意気込みが伝わってくる。今回の追加出資によって凸版印刷は,製造面で世界初の電子ペーパー量産体制による安定供給体制を整えることができるほか,日本企業および日系企業向けに前面板を戦略的・優先的に販売できるようになる。

 今月15日には「世界初の電子ペーパー商用化製品」(E Ink社)として店頭POP広告用電子ペーパー「Ink-in-motion」を発売。本日明らかにされたロードマップによると,2003年半ばにはPCモニタ並みのグラフィカルな表示が可能なモノクロ電子ペーパーが登場し,2004年初頭にはカラーに対応。2005年には紙のようにフレキシブルに丸められる電子ペーパーをリリースする予定だという。

 電子ペーパーの研究には,多くのメーカーが取り組んでいる。例えば,キヤノンでは「ペーパーライク・ディスプレイ」と呼ばれる電子ペーパーの研究を以前から実施。これは,2枚のプラスチックフィルムの間に帯電したトナーを封入して,トナーの面内分布を電気的に変化させることで画像を作り出すというものだ。電極面に吸着したトナーは電気を切ってもそのまま残るため,画像形成後は電源不要となるという点では,E Inkの方式と似ている。

 そのほかにも,Xeroxなどは20年以上も電子ペーパーに取り組んでおり,凸版印刷と同じく印刷会社の大日本印刷も,電子ペーパーには力を入れている。

 携帯電話やPDA向けなど小型情報端末用の電子表示装置としては,有機ELなども期待されている。電子ペーパーは,省電力面や軽量性などでその性能を発揮するものの,画面の応答性能では有機ELなどに比べるとやや劣る。「動画コンテンツなどを多用する情報機器では,有機ELの方が有利。通電しなくても画面情報を保持できる電子ペーパーは,電子新聞や電子ブックリーダーなど,やはり紙の代替利用がメインとなるだろう」(凸版印刷)。


視野角の広さは電子ペーパーならでは

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[西坂真人, ITmedia]

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