現実のような都市を再現する3次元立体地図が登場

デジタルマップの特徴は検索しやすいことだけではない。カーナビがそうであるように,2次元から3次元への流れは着実にやってくる。インクリメントP,キャドセンター,パスコの3社は高精度で低価格な3次元地図のデータ「MAP CUBE」の販売を始める。

【国内記事】 2002年3月25日更新

 インクリメントP,キャドセンター,パスコの3社は3月25日,3次元デジタル地図を「MAP CUBE」として発売すると発表した。

 MAP CUBEは「限りなく現実に近いデジタル空間を再現」(インクリメントP)するためのデジタル地図。2次元の詳細地図のほか,航空写真,建物の高さのデータ,壁面テクスチャが用意され,3次元の都市を描き出すことが可能になる。


左がMAP CUBEのデータを使って表示した3次元画像,右が実写真。このクオリティの3次元画像の中を,視点を変えながら動いてみせるデモも行われた

 MAP CUBEは,カーナビ用などで2次元のデジタル地図のノウハウを持つインクリメントPと,建築や都市開発などに向けた3次元CG技術を持つキャドセンター,航空写真を使った地図など「GISのリーディングカンパニー」(パスコ)であるパスコの3社のデータを組み合わせたもの。


MAP CUBEは,3社がそれぞれ得意とする部分のデータを持ち寄ってできあがっている。インクリメントPが2次元詳細地図,パスコが高さデータと航空写真,キャドセンターがテクスチャデータや高速立体化技術,CG技術などを提供している

 従来も一部地域のデータについては販売していたが,これまで個別の受注だったものをMAP CUBEというブランド名で販売する。

 データは建物にテクスチャが貼られない「形状モデル」と,リアルな外観を持った「テクスチャモデル」が用意される。

 価格は,形状モデルが1平方キロメートル当たり2万〜60万円。例えば港区では約580万円となり,区域の広さに応じてボリュームディスカウントされる。テクスチャモデルは形状モデルのオプションとして用意される。道路の長さが単位となり1キロメートル当たり20万〜80万円。銀座地区を例に取ると,形状モデルとテクスチャモデルを合わせて約500万円となる。


左が形状モデル。右がテクスチャモデル。テクスチャモデルでも建物の高さが正確なため,都市開発後の影の出来具合や,火災時の被害の進行などをシミュレートする用途にも利用できるという

高精度のデータを用意

 MAP CUBEの最大の特徴は「各種解析やシミュレーションにも使える高精度」(インクリメントP)。これまでの3次元地図は建物の高さなどが正確ではなかったが,MAP CUBEでは航空機からレーザー光線を照射し,高度を計測することで誤差15センチの精度を実現したという。「ビルの上のエレベータ室まで再現している」(キャドセンター)

 従来3次元地図は高価なものだったが,3社は協業によるローコスト化を強調。例えば壁面のテクスチャは「航空写真と通常に撮影した写真を,中国に持っていってデータ化する」(キャドセンターの浜野美行社長)といった工夫でコストを削減する。

 またデータだけでなく,データを見るためのビューワも提供される。現在はWindows向けのみだが,各種デバイスに向けて開発を進める。

 データの販売は3社が別々に行う。インクリメントPはカーナビやインターネットサービスなど一般ユーザー向けに,キャドセンターはプロユース,パスコは自治体などを主体とする。

 現在,「DVDに入れても,東京9区くらいでいっぱい」(インクリメントP)というほど大きなデータなのに加え,テクスチャを張り込んだ3次元画像は処理にCPUパワーが必要とされる。しかし,「高さ情報もきちんと持った地図があれば,バードビューも写真のような美しさで再現できる」(インクリメントPの清水敏彦社長)と言うように,モバイルデバイスでも3次元地図の需要が高まっていることを強調。今後のデバイスの進化を見込んで,カーナビ,インターネット上のサービスなどへの採用も狙っている。

 MAP CUBEの販売スケジュールは以下の通り。

形状モデル
東京23区・横浜市・大阪市発売中
名古屋市・川崎市2002年6月発売予定
神戸市・京都市・千葉市・さいたま市2002年9月までに発売
その他政令指定都市2002年12月までに発売

テクスチャモデル
東京都千代田区・中央区(主要繁華街・主要沿道)発売中
東京23区(主要繁華街・主要沿道)・大阪市中心部2002年6月までに発売
名古屋市中心部2002年9月までに発売
その他政令指定都市2002年12月までに発売


既にデータが利用された例。建築中の高層マンションから,どのような景観が楽しめるかを表示する用途に使われた。何階の何号室からなら富士山が見える,といったことがグラフィカルにチェックできる


MAP CUBEデータを利用した徒歩ナビの例。リアルな景観を持った3次元データの中を地図に沿って歩くことができる

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[斎藤健二,ITmedia]

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