有機EL搭載の携帯,年内にも登場──しかし課題も(2/2)
2.2インチの携帯向け有機ELディスプレイを展示した東芝松下ディスプレイテクノロジーだが,「モバイルの用途で動画を扱うようになれば,(有機ELの)用途が出てくる。疑問もあるが……」と,携帯には及び腰。2インチサイズの有機ELは「結果としての動画用途」(同社)であり,有機ELのメインターゲットは10インチ超のテレビなどの用途ではないかと言う。 携帯への採用を進める東北パイオニアでも,「正直,携帯電話への搭載は怖い」と漏らす。テレビなどと違い,携帯電話は技術の移り変わりが早く,価格の下げ圧力も大きいからだ。 さらに,各種携帯向け液晶が有機ELに見劣りしない反応速度,視野角,薄さを実現してきているのも,有機ELにとっては苦しいところ。 各社の携帯向け液晶は,バックライトを点けた状態でも100mW程度,液晶のみなら数mWという消費電力を実現してきている。「250mW程度」(東北パイオニア)という有機ELにとっては,消費電力の削減が第1の課題だ。 東北パイオニアによると「250mWはサンプル品。製品では半分にはするというコンセプトで開発している」という。
輝度,消費電力,寿命のバランスをどう取るかさらに消費電力は,有機ELの大事な特性である「寿命」と「輝度」に大きく関係する。ある程度輝度を上げなければ,表示が美しくないばかりでなく屋外での視認性が低下する。しかし,輝度を上げると消費電力が増すだけでなく寿命も低下する。このバランスの取り方が有機ELの特性も決定する。 東北パイオニアでは,輝度は80カンデラ,寿命は5000時間程度を実現したという。有機ELでは利用に従って輝度が落ちていき,80カンデラの輝度が半減するのが5000時間なのだという。「5000時間利用できれば,携帯電話の場合,2年以上利用できるという話を聞いている」(東北パイオニア) ちなみに,80カンデラという明るさは最近の液晶と比べると暗め。例えばシャープが参考出品した新しいアドバンストTFT液晶では200カンデラを実現。明るい透過型液晶で話題になった「N503iS」のディスプレイは200カンデラ以上あったようだ。ただし,黒がまったく発光しない有機ELでは原理的に高いコントラスト比を得られる。50対1程度が多い液晶に対して,三洋も東北パイオニアも「コントラスト比は100対1以上は取れる」と語る。 このように,各スペックで見ていくと液晶にまだ有機ELが追いついていない部分は多い。価格についても,「構造が単純なため,いずれは液晶よりも低価格に」といわれれることが多いが,現時点では割高だ。 しかし,「視認性と高速応答では,絶対に液晶に負けない」と東北パイオニアは胸を張る。確かに屋内で見た有機ELの美しさは,どの展示会でも来場者が息を飲むほど。応答速度も,「1マイクロ秒」(東北パイオニア)と液晶より2桁速い。 なかなか“携帯電話用で液晶に圧勝”とはいかない有機ELだが,「絶対に勝てるところで勝っていく」という東北パイオニアの姿勢が,今後有機ELの携帯採用への突破口となっていきそうだ。
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