Mobile：NEWS

2002年7月17日　03:02 AM 更新

“夏野節”にみるモバイルビジネス急成長の理由

急成長を続けているモバイルビジネスだが、最近「成長が鈍化してきているのでは」といわれはじめている。これに対して、モバイル業界のキーマンたちが反論を唱えた

　ビッグサイトで7月17日から開催したワイヤレスジャパンのカンファレンス「ワイヤレス・ブロードバンド時代のコンテンツビジネス」の中で、モバイルビジネスの成長戦略についてのパネルディスカッションが行われた。

パネリストとして、モバイル業界のキーマン4人が出席。左からNTTドコモ iモード企画部長の夏野剛氏、ACCESS副社長の鎌田富久氏、KDDIコンテンツビジネス部長の高橋誠氏、サイバード社長の堀主知ロバート氏

　当初、モデレーター側や主催者側では「成長が鈍化しているといわれているモバイルビジネスで、今までの急成長の中でのビジネスモデルで果たしてよいのだろうか?」「今後、飽和状態になった時の、モバイルビジネスモデルを探っていく」というテーマでパネルディスカッションの進行を考えていたようだ。

モデレーターを務めるモバイルコンテンツフォーラムの岸原孝昌氏

　そのことは、冒頭でモデレーターを務めるモバイルコンテンツフォーラムの岸原孝昌氏が「年間30％というモバイルビジネスの成長率は、他の産業と比べるとまだ急成長市場といえるだろう。しかし、限られた日本の人口の中ではいつまでも成長は見込めず、そろそろ飽和状態に近づいていくと思っている。モバイル普及率が飽和状態に近づきつつある環境でのモバイルビジネスの成長モデルを語ってもらいたい」と切り出したことからも想像がつく。

　しかし、これにすかさず異を唱えたのが、NTTドコモ iモード企画部長の夏野剛氏。岸原氏が、モバイルビジネスが飽和状態に近づいている理由の1つとして、iモードの公式サイト数が急成長しているのに加入者数や有料サイト売上げ成長率が鈍化している点を指摘したのに対して「金融関連が多い公式サイトの数の伸び率と、有料サイト売上げ成長率とが一致しないのは当たり前。比較するなら、有料サイトの数とその売上げの成長率でやって欲しい。加入者数の伸びの鈍化が、全ての成長率に影響しているとは思わない」と反論した。

　サイバード社長の堀主知ロバート氏も「コンテンツビジネスを展開する側としては、実に素晴らしい市場になってきている。競争が激化しているのは事実だが、コンテンツプロバイダの淘汰によって、結果的にいいコンテンツが生まれている」とし、モバイルビジネス市場が飽和状態で成長が見込めなくなるというトーンを否定した。

　さらに“夏野節”は続く。「今はまだ、携帯電話が“話すためのもの”から“使うもの”に変わってきた段階。やっとこれから、ビジネスが始まろうとしている。その1例が、iアプリのようなJava技術の登場。これによって携帯電話がPCのようになり、できることが広がった。コンテンツプロバイダー側も、Javaというオープンな技術によって携帯電話の機能を自由にいじれるようになった」（夏野氏）。

　ここで、モデレーターの岸原氏は「ビジネスモデルを伸ばしていく上で、ネットワークの高速化が大きな可能性を秘めているといわれている」とディスカッションの軌道修正を試みるが、ここでも夏野氏が噛み付く。

　「携帯電話のスピードがビジネスモデルを変えるということはない。大事なことは、それ（高速化）がユーザーにとってどれだけ価値があることかどうかという点。携帯電話の動画性能がいくら上がっても、TVの代替には一生ならない。スピードが万能という考えは、間違っている」（夏野氏）。

　これには、KDDIコンテンツビジネス部長の高橋誠氏も口をそろえる。「私も夏野氏と同じく、高速化がビジネスモデルを変えるとは思わない。むしろキャリア側としては、高速化によってコンテンツプロバイダのフィールドを増やしていくことが重要だと考えている」（高橋氏）。

　最後に岸原氏が投げかけた「2005年、2010年、モバイルビジネスはどうなると予測するか」というテーマに対しても、「今までの経験から、3年先はどうなるか分からない」と一蹴する夏野氏に、会場からは失笑も。だが、このようなモバイル業界のキーマンたちのアクの強さが、急成長ビジネスを下支えしているのも、また事実なのだろう。

関連記事
iモードコンテンツは既に1000億円市場〜夏野氏
キャリアの主導でiモードマーケットは生まれた──ドコモ夏野氏
iモードのオープン化を巡る議論

関連リンク
WIRELESS JAPAN 2002公式ページ

[西坂真人, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

---