Mobile:NEWS 2002年9月4日 02:16 AM 更新

メモリカードの技術動向と将来像

モバイル機器には欠かせない記録媒体「メモリカード」。電子情報技術産業協会(JEITA)が開催した「デジタル家電フォーラム2002」の中で、メモリカードの技術動向と将来像が語られた

 デジカメやDVC、シリコンオーディオプレーヤ用の記録メディアとして普及しているメモリカード。小型・軽量で低消費電力、振動や衝撃にも強い高信頼性といった特徴から、モバイル性が求められるエレクトロニクス機器には欠かせない記録媒体だ。だが一方で、カード規格がいくつも乱立し、そのサイズもさまざま。大容量化もそろそろ限界がきているという声もある。メモリカードは、今後どうなっていくのだろうか。

 電子情報技術産業協会(JEITA)が9月4日に開催した「デジタル家電フォーラム2002」の中で、東芝・技術企画室の下田乾二氏がメモリカードの技術動向と将来像について語った。


メモリカードの技術動向と将来像について語る東芝の下田乾二氏

 小型記録メディアとして現在広く普及しているのは、コンパクトフラッシュ/スマートメディア/SDメモリーカード/マルチメディアカード(MMC)/メモリースティックという5種類のメモリカードだ。以前は、デジカメ分野で強いスマートメディアが他のメディアよりもアタマ1つ抜き出ていたが、現在は各メディア規格がそれぞれ10―20数%のシェアを確保し、まさに“小型メディア戦国時代”の様相を呈している。


メモリカード需要予測(2000年度における東芝の予測値)

 さらにこの5種類に加えて、今夏、新たに2種類の小型メディアが規格争いに名乗りをあげた。1つは、ソニーが以前から提案していたメモリースティックの新規格「メモリースティックDuo」で、7月から発売されている。もう1つは、富士写真フイルムがオリンパス光学工業と共同開発したデジタルカメラ用小型メモリカード「xD-Picture Card」だ。

 下田氏は今後のメモリカードの動向として「現在多くの規格が乱立しているが、今後はブリッジメディアカードとしての役割が重要になってくることにより、高速化/大容量化の流れが必要視されるほか、コンテンツ保護以外のセキュリティ機能付加や、フラッシュメモリ以外のメモリ素子の登場が考えられる」と語る。

 メモリカードには、不揮発性メモリ(EEPROM)の一種で大容量化に適している「フラッシュメモリ」が使われている。このフラッシュメモリは、内部の回路構成によってNAND型/AND型とNOR型という2種類に分けられる。「NAND型/AND型はNOR型に比べて書き込みや消去のスピードが速く、大容量化にも適しているので、データ記録用として向いている。メモリカードに使われているフラッシュメモリは、ほとんどがNAND型/AND型」(下田氏)。

 NAND型/AND型の欠点は、供給メーカーが少ないことだ。現在、メモリカード用にNAND型フラッシュメモリを生産しているのは、東芝、日立製作所(AND型)といった国内メーカーが中心で、海外メーカーではSamsungとSanDiskぐらいだ。「供給メーカーが少ないと、価格が大幅に下がるということが通常ではあまり期待できない。また、コスト削減のためにメモリの内部仕様を変えたりする」(下田氏)。

 例えばスマートメディアなどは、これまで容量が変わるとNAND型フラッシュメモリのスペックも微妙に違ってきた。スマートメディアを採用したデジカメメーカーは仕様の変化に対応するため、コントローラのファームウェアを常にアップグレードできるような仕組みをデジカメに搭載しなければいけなかったのだ。「そんなこともあり、メモリースティックやSDメモリーカードなどNAND型の後発メモリカードは、コントローラを内蔵して外部機器に影響しないような仕組みを作ったという経緯がある」(下田氏)。

 さらに、デジカメなどでは動画機能の搭載や高画素化によって、メモリカードにもより高速な読み書き性能が求められている。NOR型に比べて高速な書き込みが特徴のNAND型でも、書き込み時間(待ち時間)の長さやカード内蔵コントローラによる処理時間のロスが問題点として挙げられているという。

 「対応策として、フラッシュメモリのページサイズを変えることで速度が改善されるが、内蔵コントローラの改善によって書き込みを並列処理することで高速化を図る方法がすでに採られているカードもある」(下田氏)。

 また、東芝が昨年末に発表した従来の2値セルに比べて2倍のデータ容量が可能となる「多値セル技術」や、日立製作所が今年4月に発表した「AG-AND」「superAND」といった新技術が開発されるなど、もう1つの課題である「大容量化」にむけての取り組みも進んでいる。

 ただ、フラッシュメモリの大容量化の流れに壁が見え始めてきているのも事実だ。「フラッシュメモリのプロセスルールも0.13μメートルになり、微細化による大容量化が厳しくなっている。NOR型では次世代、NAND型でも次々世代のプロセスルールが限界ではないかといわれている」(下田氏)。

 このような状況を受け、米国などではフラッシュメモリに替わる新メモリ素子の開発が積極的に行われているという。「強誘電体を使ったFeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)や磁界の向きを記憶素子として使うMRAM(Magnetic Random Access Memory)、少ないマスク数で実現可能な相変化メモリ(Ovonic Unified Memory)といった3つの新メモリ素子が、フラッシュメモリの代替として期待されている。ただ、読み書き速度の向上やマスク数の低減、低消費電力といったメリットはあるものの、現時点では集積度がフラッシュメモリほどになってなく、容量の面からもまだフラッシュメモリがメモリカードの主役であることは間違いない」(下田氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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