「どこでもキーボード」がPDA・携帯にやってくるPDAや携帯から机にキーボードを投射し、それに触れることで入力を行う──米Canestaが開発したそんなキーボードが実現間近だ。機構を組み込んだPDAも順調に開発が進んでいるという
モバイルデバイスが直面する課題の1つが入力デバイスだ。携帯電話では0-9、*、#のダイヤルボタンを押して文字を入力する方法が定着しつつあるものの、PDAでは文字認識から始まり、PalmのGraffitiなど特殊な文字を書くものやミニキーボードなどが乱立。決定打がなかなかない。 携帯電話の文字入力方法も、特にPCに慣れたユーザーには好評とは言い難い。「メールを見るためだけにPCを持って歩く必要がなくなって携帯電話は便利なんだけど、あのボタンで返事を書く気にならない」と話すビジネスマンは多い。 携帯機器でPCのキーボードのように使えるデバイスはないものか──。そんな問いへ答えの1つが、米Canestaが開発中の「Canestaキーボード」だ。
Canestaキーボードは、キーボードレイアウトを机などに投影し、それを指でタイプすることで文字が入力できるというものだ。国内でのマーケティング、セールスを行うカネスタ アジア社長の森本作也氏によると、9月18日にCanestaキーボードを構成する3つのチップを発表。この秋には製品に組み込んだプロトタイプも登場するという。
「携帯、PDA、Tablet PCなど、移動時に使われるデバイスが当面のターゲット」と森本氏。ただし、ここで使われる技術はキーボードに特化したものではない(3月26日の記事参照)。 1999年4月に米国で設立されたCanestaは、センサを使って周囲を知覚する技術を開発しているベンチャー企業だ。2年に及ぶ研究の成果を、「最初の製品として」(森本氏)キーボードに投入する。 認識の流れはこうだ。まず机などにキーボードの絵を投射する。同時にそこには赤外線が向けられ、指の動きを見張る。もしも、指が机に触れたら赤外線の反射率が変わり、それをセンサが捉えて“入力した”と判断するわけだ。 投射されたキーボードの絵は、どこに触れたらいいかをユーザーに知らせるためのものなので、位置さえ正しければ、紙に印刷されたキーボードの上を叩いても入力は行われる。
このような認識をうまく行うために、各部品は高い精度で動作する。森本氏によると「誤差は、横は1ミリ、奥行きは数ミリ程度」だという。指以外のものがキーボードに触れてもミスタイプされないよう「指の色と反射率にパラメータが設定されている」(同氏)という凝りようだ。 同社の技術の1つは、このように正確な認識を行うセンサにある。通常奥行きを感知するには、人間の目のようにセンサを2つ使う。しかしCanestaでは赤外線と組み合わせることで、安価なCMOSイメージセンサで奥行きを感知させることを可能にした。「2眼を使うやり方はソフトウェアも大規模なものになる。1眼のほうがはるかに容易」(森本氏)。 PDAや携帯電話への組み込みで事業が軌道に乗り始めたら、別の市場へもこの技術を展開していく構想だ。例えば「自動車の前後にセンサーを配置しておき、近づいてきた車をリアルタイムで認識する」ことや、「壁にパターンを投射し、そこを手で触れると家電製品を操作できるようにする」「顔を認識させ、入室のチェックの補助として使う」シーンなどを想定しているという。
さて、こう読んできた人は「でも、本当に使い物になるの?」という疑問を持つだろう。開発用のキットに触れた感覚では、「通常のキーボードと同じに考えてはいけないが、ほかのどの方法よりもキーボードに近い感覚で入力できる」というものだった。 森本氏によると、キーボードで65-85ワード/分・エラー率3%のユーザーが、Canestaキーボードを使った場合、45-50ワード/分・エラー率4-5%で入力が可能だという。手元を見ないとどこにキーがあるのか分からないためタッチタイプは難しいが、ちょっと触っただけでかなり高速なタイピングができた。 そして最大の利点は“新しく入力方法を学ぶ必要がない”点にある。モバイル機器向けに考案された高速な入力方法は多数ある。しかしそのためには新しく特殊な入力方法を覚えなくてはならない。 「キーボードには、レイアウト、タッチ感などいくつかのポイントがある。Canestaキーボードではタッチ感は再現できないが、レイアウトは慣れたキーボードと同様だ」と森本氏。デスクトップのキーボードとまったく同様ではないが、少なくとも同じようにキーが配置され、同じように指を動かせば入力できる。 あくまで叩くのは机であるため、タッチ感はない。しかしフィードバックとして入力が行われるとクリック音がするようになっている。 逆に、キーを“押し込む”必要がないことによるメリットさえありそうだ。例えば指の動きに障害を持っていてキーを“叩く”ことができない人でも、Canestaキーボードならその部分に触りさえすれば入力できる。 またあくまで“バーチャル”なキーボードであるため、簡単にマウスとして利用できる。机の上で指を動かせば、それがそのままマウスとなるわけだ。 実用性に関する数々の疑問を評して森本氏は、「使えない理由、使わない理由はいくらでも挙げられる」と語る。世にあるさまざまな入力デバイスは(一般的なQWERTYキーボードも)、欠点を挙げようと思えばいくらでも出てくるものだ。要は、ユーザーが実際に使ってみて受け入れるかどうかにある。 新しいユーザーインタフェースの実装は、PDAや携帯電話のメーカーにとってもチャレンジだ。ユーザーが使ってみるまで結論が出ないというのもネック。それでも、従来のキーボードの延長線上で利用できるCanestaキーボードは、革新的な入力方法であるだけでなく、携帯版“デジタルデバイド”の解決法にもなるかもしれない。 近々国内の展示会でもCanestaキーボードに触れる機会がありそうだ。今後の進展に期待したい。
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