Mobile:NEWS 2002年10月2日 11:23 PM 更新

新CLIEは「ネットワークに羽ばたく鳥」になる〜ソニーの吉田社長

本家Palmに先駆けて登場したソニーのARM搭載CLIE、NXシリーズ。従来の約20倍というマルチメディア性能や無線通信でユーザー層の拡大を図る

 Palm OS 5を搭載し、XScaleのパフォーマンスを備えた新しいCLIE「NXシリーズ」がついにお目見えした(発表記事参照)。新CPUでマルチメディア機能は「従来CLIEの約20倍」(同社)に向上。Type II CFカードスロットの内蔵、CF型の無線LANカードやPHSで可能になったワイヤレス通信にも注目だ。


発表会に出席したソニー幹部。左からソニー モーバイルネットワークカンパニーの執行役員常務、木村敬治氏、同社社長の吉田雅信氏、ソニーマーケティング社長の小寺圭氏

 Palm OS Ready Programに参加しているチップメーカーの中から(2001年7月24日の記事参照)ソニーが選んだのはIntelのXScale。この理由について、ソニー、モーバイルネットワークカンパニーのプレジデント、吉田雅信氏は「現時点でプロセッサとしての完成度が抜きんでていたため」と話す。

 Palm OS 5搭載で気になる従来ソフトとの互換性については「現時点でメジャーなソフトウェアの60%ぐらいの互換性を確認」しており、最終的には「80%はいくだろう」と吉田氏。デベロッパーにも情報を公開し、協力しながらPalm OS 5への対応を進めていくという。

 NXシリーズを紹介した吉田氏は、CLIEのコンセプトを「いつでもどこでも誰でもが、音楽やコミュニケーション、ビデオやゲームができる、新しいライフスタイルを提案するためのツール」と説明。もともと「Communication、Link、Information、Enterteinment」の頭文字を取って命名されたCLIEだが、これからは「Create、lifestyle、Inovation、Emotion」というイメージで開発を行っていくと話した。「(Create、lifestyle、Inovation、Emotionという言葉には)革新的技術と感動を届けることで、新たなライフスタイルを創造してもらいたいというソニーの願いが込められている。それを体現したのが新しいCLIEだ」(吉田氏)。

鍵はワイヤレスとマルチメディア

 ソニーが新しいCLIEの利用法としてアピールするのはワイヤレスでの情報活用。ホットスポットでのインターネット利用やコンテンツのダウンロードが新しいCLIEのニーズを掘り起こすという考えだ。

 同社はこれに合わせ、CLIE専用のポータルサイトとして10月19日から「CLIE Style」をオープン、コンテンツのダウンロードや各種オンラインサービスを提供する。「(CLIE Style)は、CLIEユーザーをサポートするハブ空港のような役割を果たす」(吉田氏)。

 また、ビー・ビー・テクノロジーとのタイアップで10月5日から、Yahoo!カフェやマクドナルドの一部店舗でCLIEによる無線LAN体験イベントを行うなど、端末とサービスの両面からユーザーへのアプローチを図る。

 一方、「パフォーマンスの向上」もNXシリーズに活かされている。「ユーザーにも違いがはっきり体感できる」(吉田氏)というパフォーマンス向上を生かすため、マルチメディア機能も大幅に強化された。新たに加わったのはボイスレコーダー機能やムービー撮影機能(NX70Vで対応)、ハイクオリティな動画の再生機能などだ。


AV機能が惜しみなく搭載されるNXシリーズ

 パフォーマンスは大幅にアップしたが、消費電力も、ソニーが指標として定めた範囲内に収まっているという。PIM的な利用では従来機種と同等の10日ぐらいの使用が可能。音楽再生は1割ほど時間が短くなったが「ほぼ従来なみ」を維持している。動画周りは新機能のため「新たな指標として2〜3時間ぐらい」を設定し、それが実現されているという。

 ビデオやデジカメ、ICレコーダの機能も併せ持っていることから、ソニーマーケティング社長の小寺圭氏は「PDA売り場だけでなく、(量販店の)デジカメコーナーやウォークマンのコーナーなどいろいろな売り場に置いてもらえるようアプローチする」という。


NXシリーズは、既存ソフトとの互換性・マルチメディア機能、ワイヤレスにフォーカスして開発された

Palmのライセンシーであることが端末をユニークに

 Palmは、OSからの制約事項を少なくすることで、ライセンシーが個性のある端末を自由に出せるような仕組みをとっている。XScaleベースのPocket PCが、単体としては未だ搭載していないカメラや動画撮影機能がNXシリーズで搭載できたのは、開発の自由度の高さによるものとも考えられそうだ。

 「CLIEのウィングスタイルはネットワークという大空に大きく羽ばたく鳥をイメージしている」。こう話す吉田氏は「いろいろな空間を飛び回れる翼を持ったNXシリーズは、これからのユビキタスネットワークの中心的存在になると確信している」と、世界初のARM対応Palm機の出来栄えに自信を見せていた。


「PDAはPCに強い先進的なビジネスマンが使うツール」という既成概念をCLIEが変えると吉田氏。今後は使いやすさや便利さで、学生や主婦層にもアプローチする


CLIEは米Palmデバイスのリテール市場において金額ベースでナンバー2、国内市場では台数ベースでナンバー1を獲得している


CFカードスロットではCF型PHSカードも利用できる



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▼ Palm OS 5用開発ツールがダウンロード可能に

関連リンク
▼ PDA Style

[後藤祥子, ITmedia]

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