Mobile:NEWS 2002年10月22日 08:54 PM 更新

オムロンがテレマティクスのオープンプラットフォーム――オンデマンドラジオを来春開始

オムロンとモバイルキャストテレマティクスが、オープンプラットフォームのテレマティクス総合ポータル事業を発表。テレマティクスサービス第1弾として、2003年5月からオンデマンドラジオ配信サービスを開始する

 オムロンとモバイルキャストテレマティクスは10月22日、テレマティクス(自動車内のIT化)の総合ポータル事業で提携し、コンテンツ配信用データセンター設立と車載サーバの共同開発を行うと発表した。「プラットフォームがオープンなテレマティクス総合ポータル事業の構築は、独立系としては日本初」(オムロン)。同事業の第1弾として、車載サーバを共同開発。音声テレマティクスサービスとして、2003年5月からオンデマンドラジオ配信サービスを開始する予定。

 今回のテレマティクス総合ポータル事業に採用するプラットフォームは、コンテンツを置くデータセンターと、それを受け取る車載サーバから構成される。カーオーディオやカーナビゲーションなど既存の車載AV機器と接続できる標準インタフェースを装備しているため、車載端末メーカーを問わずにテレマティクスプラットフォームを構築できる「オープンプラットフォーム」が特徴だ。


テレマティクス事業のプラットフォーム概念図

 オムロン副社長の増田英樹氏は、「現在のテレマティクスサービスは、自動車メーカー/保険会社/ロードサービス/運送会社などがそれぞれ独自に行っているため、ハード構成やサービス内容で共通性がない。このような車載機器間のクローズドな関係を、オープンに使えるようにする汎用車載端末を作ることで、経済的で便利なサービスになる」と語る。


「オープンなプラットフォームが特徴」と語るオムロン副社長の増田英樹氏

 車載サーバには、KDDIの第3世代サービス「CDMA2000 1x」方式の通信モジュールを内蔵。KDDIの高速パケット網を利用して、ゲートウェイ機能や個人認証、顧客情報管理、決済システムなどを行う。「大容量データのやり取りができるCDMA2000 1xによって、幅広いテレマティクスサービスがオープンな環境で提供可能になった」(増田氏)。


CDMA2000 1xによって、幅広いテレマティクスサービスが提供可能に

 テレマティクスとは、安全性や利便性を向上させるための車載電子システム・情報サービスの総称。盗難防止システムやカーナビゲーションシステム、走行中に故障した際の遠隔エンジン診断や修理工場への連絡、盗難車輌を追跡するトラッキング機能、自動衝突通告、電子メールやニュース情報などへアクセスするためのワイヤレスインターネットシステムなどがテレマティクス分野に位置付けられ、今後大きな市場が期待されている。

 オムロンは2000年10月に、ネットワーク経由で判断・分析機能を持ったサーバーとネットワーク接続することで、より高度な作業を可能にする「M2M(マシン・ツー・マシン)ビジネス」を発表。M2Mを具現化した事業として、昨年6月にテレマティクスの新会社「オムロン セルポート テレマティクス」を設立。テレマティクス事業に本格参入していた。

 今回のテレマティクス事業での両社それぞれの役割は、オムロン側がこれまで進めてきたテレマティクス事業(セーフティ&セキュリティサービス)やセンサー/音声認識/M2Mセンター/ハンズフリー端末/M2M技術などを提供し、モバイルキャスト側は同社テレマティクスポータル「MTC(モバイルキャスト・テレマティクス・センター)」のコンテンツサーバやエンタテインメント系コンテンツ、著作権処理ノウハウなどを提供するというもの。テレマティクスシステムの心臓部となる車載用ブロードバンド通信サーバ「TAS(テレマティクス・アプリケーション・サーバ)」の開発は、オムロンが中心となる。

 「ハンズフリーシステムでは、音声データをパケットデータで送信するIP携帯電話が考えられる。また、カーオーディオからのオンデマンドラジオ再生でも、CDMA2000 1xによる大容量データ転送によって高品質の音楽を配信できる。オムロンは先進のセンシング技術を駆使して、TASの開発にあたる」(増田氏)。

 提供されるコンテンツは、「エンタテインメント」「セーフティ&セキュリティ」「ドライバーサポート」の3つのカテゴリーに大別される。

 モバイルキャストテレマティクス社長の赤池英二氏は提供コンテンツについて「運転中にも利用するためには、安全に聴けなければならない。自動車向けに適したコンテンツや配信サービス技術を約2年かけて研究してきた。また、通信モジュールは移動体通信だけなく、コンビニやSSなどで情報を蓄積できるようにDSRC(狭域無線通信)や無線LANモジュールの搭載も検討している。このようにデータセンター/インフラ/車載サーバのサービスを一貫して提供する“オープンプラットフォームビジネス”を提案していく」と語る。


モバイルキャストテレマティクス社長の赤池英二氏

 エンタテインメントからドライバーサポートまでのコンテンツ提供を行う総合ポータル化は2003年の秋頃を予定しているが、それに先駆けた音声系コンテンツとして、オンデマンドラジオサービス「テレマティクスラジオ」を2003年5月から開始する。

 既存のラジオ放送をサーバに蓄積してオンデマンド配信することは、著作権問題などから配信権をクリアできないため、独自のオンデマンドラジオ放送局を開設。「ニュースや道路交通情報など情報系コンテンツや音楽などエンタテインメント系コンテンツまで80メニューを用意。車の中で双方向のラジオ放送が聴ける。ただ、車の中で何でも聴ければいいというわけではなく、厳選した音楽を提供することで、車内をサロンと位置付けた“モバイルサロンミュージック”を目指す」(赤池氏)。

 発表会場では、テレマティクスサーバの試作機が紹介されていた。オムロンの音声認識技術を用いて、聴きたい音楽の検索や交通情報の取得といったコンテンツ操作を音声で行える。「試作機は既存の汎用部品で作られたものなので、実際のサーバ製品はもっと小さいサイズになる予定」(オムロン)。


テレマティクスサーバの試作機。音声で操作できる


カーオーディオでの表示イメージ

 テレマティクス事業におけるオムロンの売上げ目標は、初年度(2003年)が5億円、2006年には230億円を見込んでいるという。「2006年には100万台の販売を目標としている。アフターマーケットから展開し、将来的にはメーカー純正品として採用されるようにしていきたい」(増田氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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