Mobile:NEWS 2002年10月25日 03:53 PM 更新

なぜ、今Bluetooth HDDなのか〜東芝に聞く「HOPBIT」

WPC EXPOで披露されたBluetooth HDD「HOPBIT」。サポートするのはFile Transfer Profileのみで、極めてベーシックな使い方しかできない。この製品を、東芝はなぜこの時期にリリースするのだろう

 低消費電力がウリのBluetoothを搭載した、東芝製のワイヤレスハードディスク「HOPBIT」。どんな機器とでもワイヤレスでアクセスできるというBluetoothのコンセプトを、まさに体現した製品だ。

 しかし、なかなかBluetoothの普及が進まない日本では、「Bluetooth対応機器」そのものが少なく、HOPBITはFile Transfer Profile(用語参照)が載った機器でしか使えない。こうなると、さらに限られた機器でしか利用できなくなる。

 File Transfer Profileでは動画や音楽のストリーミング再生も行えないため、ハードディスク内のデータをいったん相手機器側のメモリに移してから利用しなければならない。

 現状では「ニッチな製品」と言わざるを得ないHOPBITは、なぜこの時期にリリースされるのだろう。その理由を、ストレージデバイス商品企画部の主務、近江隆夫氏に聞いた。

まず存在を認知してもらうことから

 「まず、ワイヤレスハードディスクの存在を知ってもらうことから始めて、一緒に育てていきましょう」というのがHOPBIT発売のスタンスだと近江氏。

 開発は、ウェアラブルPCやノンPCのデバイスが普及するといわれる中で、「メモリデバイスだけをデジタルパッケージングして持つことができれば、ヒューマンインタフェースやビューワ部分は部分は小さくて済む」という発想から始まったという。

 Bluetoothなら、有線のハードディスクやシリコンメディアのように、ピンやスロットの形状に左右されることなくアクセスできる。用途から考えれば比較的Bluetooth搭載が進んでいるPCやPDAだけでなく、携帯電話やデジタルカメラ、ビデオカメラなど応用範囲は広い。また、1つでさまざまなデバイスで利用できるメリットもある。

 それでも対応機器がなかなか出そろわない現状では、どこかが動き始めなければ何も始まらない。こうした理由から、東芝では、まずベーシックなHOPBITをリリースして関連各社に働きかけ、ニーズを探りながら「仕様を積み重ねていく」ことにしたという。

 手探りを続けている部分の1つがプロファイルだ。Bluetoothには、用途に合わせたさまざまなプロファイルがあり(2月28日の記事参照)、新たなプロファイルも策定されていく。「どのプロファイルをどのタイミングで搭載するか、どんな対応アプリを作り込んでいくのか」の見極めが重要になってくるのだ。

 例えばストリーミング1つをとっても、対応を可能にするプロファイルにはPAN Profile、Audio/Visual Profile、Serial Port Profileがある。HOPBITが発売時にストリーミングに対応しなかったのは、今後主流になるプロファイルが現時点で図りにくいことだと近江氏は話す。

 「Serial Port Profileは搭載している製品も多いが、(ストリーミングを実現するには)その上のアプリケーションを作り込まなければならない(ため互換性が取りにくくなる)。PAN Profileは、Microsoftが推進していて、今後主流になる気配はあるが、携帯電話に搭載されるとは考えにくい」(近江氏)。

PDA、デジタルカメラから携帯電話へ

 当初のターゲットは「先進的なモバイルユーザー」だといい、販売も最初はWeb販売のみ。「手厚くサポートできる」体勢で、ユーザーのニーズや提案に耳を傾けたいと近江氏は話す。

 HOPBITは、基本的にはFile Transfer Profileを積んだBluetooth機器とのデータのやりとりが可能。現在動作確認機種の検証中で、発売日には対応機種が発表される予定だ。

 近江氏が当初の想定する利用方法はPDAの大容量外部ストレージとしての利用だ。5Gバイトの容量は、「DVDが1枚まるまる入る」ということも考えたサイズで、例えばGPS用の地図なら1枚分入れておくこともできる。「切り出した地図データや仕事の資料などを容量を気にせず入れておける」(近江氏)。待ち受け時間が200時間と長いことから、ちょっとした出張ならACアダプタを持ち歩く必要もなく、「USB接続もできるからBluetooth未対応のPCでも使える」。

家電へのアプローチも

 デジタルカメラや携帯電話、デジタルビデオカメラなどの家電メーカーにもHOPBITとの連携に向けたアプローチを始めていると近江氏。

 ムービーを扱うには転送速度が300Kbpsと、読み書きに時間がかかるのが難点だが、「ストリーミングに対応すれば音も映像もきれいに再生できる」ため、低消費電力のメリットを生かしたい考えだ。

 携帯電話との連携については、Bluetooth対応端末が少ないことと、「(通信キャリアは)周りの状況が整ってから進む向きがあるので」難しいのが現状だという。携帯電話のBluetooth対応が進んでいる海外メーカーのほうが反応はいいそうだが「日本で生まれたものだから、本音をいうと日本の携帯電話で最初に使えるようになってほしい」(近江氏)。


ACアダプタは、携帯電話用の薄型のものとほぼ同等のコンパクトさ


HOPBITの側面下部には切れ込みがある。クレードル対応を考えたのかもしれない

[後藤祥子, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.



モバイルショップ

最新CPU搭載パソコンはドスパラで!!
第3世代インテルCoreプロセッサー搭載PC ドスパラはスピード出荷でお届けします!!

最新スペック搭載ゲームパソコン
高性能でゲームが快適なのは
ドスパラゲームパソコンガレリア!