Mobile:NEWS 2002年10月31日 11:53 AM 更新

液晶の抱える3つの課題

液晶が抱える課題はなにか。パシフィコ横浜で開催されている「LCD/PDP International 2002」でシャープ・モバイルディスプレイ研究所の水嶋繁光所長は、3つのブレイクスルーが必要だと指摘した

 携帯向けの小型製品から30インチクラスまで、実に広範囲な分野をサポートし、フラットパネルディスプレイ(FPD)の主役と言える存在の液晶ディスプレイ。しかし、その将来は、安泰というわけではない。

 「中国やヨーロッパなどでも(モバイル分野などでは)カラー化の波がきている。液晶の需要は拡大してきており、世界的な需要に応えるためにも、性能向上と生産技術の拡大が必要だ。2005年に向けての課題としては、“技術革新”が重要になる」。

 「LCD/PDP International 2002」のパネルディスカッション「FPD技術の流れを読む」の中で、このように語ったのは、シャープのディスプレイ技術開発本部モバイルディスプレイ研究所の水嶋繁光所長だ。

 同氏の発言には“根拠”がある。FPD市場は、30インチクラスより上の大型ディスプレイには既にPDP(プラズマディスプレイ)があり、携帯用など小型分野では有機ELが存在する。両者に挟まれた格好の液晶ディスプレイは、技術革新なくしては、上と下から市場を侵食されかねない。

 その上、当初日本が発展させた技術であった液晶ディスプレイは、現在では、かつてのDRAMやLSIなどの競争になぞらえられるほど、他の国に圧倒されている(実際、液晶の事実上のトップメーカーは、現在では韓国のSamsungである)。

 差別化ができないままでは、「コスト競争」に陥るのは目に見えている。このまま行くと不毛な戦いになりかねない――日本の液晶メーカーには、そういう危機感が強いのだ。「液晶はこれまでマザーガラスの拡大、つまり投資の拡大によって世代を重ねてきた。しかしこの投資は(LSIやDRAMなどと同じで)あまりに多くのお金が必要になる。現行プロセスでは限界がきている」(水嶋氏)。

将来は多機能化が軸。システム・オン・パネルを実現へ

 水嶋氏は、“将来の液晶”を実現していくためには「作り方、性能、付加価値、の3つの面で技術革新が必要」と話す。

 まず、“作り方”というのは、言うまでもなく製造面の技術革新のことである。これは、前述したように、従来型の大規模投資に頼った製造の“拡大”ではなく、他の部分を統合することによる“効率化”である。

 これは具体的には、パネル以外にかかる部材のコストを削ることだ。「液晶では、パネル部分以外の部材のかかるコストが60%近くを占めており、部材の統合などによる効率化が必要だ」(同氏)。

 現在の液晶は、どのメーカーも「技術的には同じ」というような状況となってきており、部材のコストをどうやって引き下げ、利益を出すかという点が1つのポイントとなってきている。

 実際、液晶の分野で急成長を遂げた韓国Samsungは、かなりの部材を自社生産でまかなっているのではないかと言われており、台湾メーカーの液晶パネルがSamsung製よりも高くなってしまうのは、日本から多くの部材を購入しているからだという説もあるほど。結局、部材のコストが価格の60%を占める液晶では、人件費などの面以外でもまだ効率化できる部分があるというわけだ。

 次の“性能”は、画質面の向上が重要になる。液晶は、解像度という点は優れているが、視野角や応答速度、輝度、動画特性などの点においては、まだまだ問題を指摘されることが多い。

 特にテレビ用に使うためには、「軽い、薄い、丈夫、低消費電力、高機能化などの面での技術革新が望まれる」(水嶋氏)という。ただし、輝度については、「昔はテレビは輝度が命といわれたが、本来は“黒”のきれいさが重要」で、「輝度は、ある一定レベルまで出ていれば良い。黒は、まだまだきれいにできる」(水嶋氏)という。

 最後の“付加価値”は、これまでの“面積売り”から“機能売り”への移行だ。新たな価値を付けることによって、従来の液晶とは差別化を図るというわけである。これは、言い換えれば、いわゆる「システム・オン・パネル」を実現するということでもある。

 先日シャープは、ガラス板にCPUなどを形成できるCGシリコン技術を公開した(10月22日の記事)。この技術を使用して、より付加価値の高い液晶を設計するというのが同社の基本戦略といえるだろう。「液晶は15年周期で技術革新を遂げてきた。これからいくと2004年あたりに次の周期が来る」(水嶋氏)。

 また、水嶋氏は消費出力についてもふれ、「液晶は、周辺は数ワットの消費電力しかない。40インチクラスの製品でも、2004−5年ぐらいには、100ワットの消費電力を実現できるだろう」と話していた。



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[北川達也, ITmedia]

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