Mobile:NEWS 2002年10月31日 01:22 AM 更新

最強のモバイル向け液晶は「プラスチック基板+低温ポリシリコン」

薄く軽量で衝撃にも強いモバイル向けディスプレイとして、各社が開発に力を入れているプラスチック基板の液晶ディスプレイ。低温ポリシリコンTFTとの組み合わせで、プラスチック基板のメリットを最大限に生かせるという

 薄く軽く曲げることもでき、落としても割れない液晶ディスプレイ――携帯電話やPDAを落として、ディスプレイを割ってしまった経験のある人は「こんなディスプレイがあったら……」とつい考えたくなるだろう。そんな夢の液晶ディスプレイが、そう遠くない将来に登場しそうだ。

 フラットパネルディスプレイ(FPD)関連の展示会「LCD/PDP International 2002」の技術セミナーで、ソニーモバイルディスプレイ事業部の浅野明彦氏が、プラスチック基板を使ったTFT液晶ディスプレイの仕組みや将来展望を語った。


ソニーモバイルディスプレイ事業部の浅野明彦氏

 液晶ディスプレイは、光の透過性に優れたガラス基板上に駆動回路を形成する。もちろんガラス素材なので、落下など衝撃が加われば割れてしまうし、強度の問題から薄くするのにも限界があるため、どうしても重くなってしまう。このガラス基板を、同じく光の透過性に優れながら比重はガラスの半分以下というプラスチック素材に変えることで、薄く軽量で衝撃にも強い液晶ディスプレイができあがるというわけだ。

 「例えばPDA用の3.8インチTFT液晶パネルでは、ガラス基板タイプだと15グラムだが、プラスチック基板では3グラムとガラスの1/5になる。また厚さも、ガラスでは0.5-0.7ミリだが、プラスチックなら0.2ミリも可能」(浅野氏)。

 本体は0.1ミリでも薄く、重さは1グラムでも軽くしたいと考えている携帯電話/PDAメーカーにとっては、プラスチックLCDは喉から手が出るほど欲しい部材。そのため現在、次世代LCD技術として各社が開発に力を入れている。すでに、パッシブマトリックス方式のSTN液晶では、シャープや松下などがモノクロタイプの量産を始めているほか、カラータイプの開発も完了している。しかし、STNでは高画質化は望めないことから、現在はアクティブマトリックス方式のTFT液晶のプラスチック基板化に各社の開発が移行している。

 TFT液晶タイプでは、セイコーエプソンが0.4インチのモノクロ透過型をすでに発表しているほか、今回のLCD/PDP International 2002で、シャープがプラスチック基板を使った4インチ反射型TFTカラー液晶ディスプレイを参考出品した。シャープによると、従来のガラス基板に比べて厚さで1/3、重さで1/4、耐衝撃性は10倍以上になるという。


シャープが参考出品したプラスチック基板のカラーTFT液晶。クレジットカード2枚の重さと比べて軽さをアピール

 このように、プラスチック基板のカラーTFT液晶では、シャープが一歩先を行くカタチとなったわけだが、浅野氏は「シャープのTFTはアモルファスシリコンを使っている。プラスチック基板のメリットを最大限に生かすためには、低温ポリシリコンTFTの搭載が欠かせない」と語る。

「プラスチック基板+低温ポリシリコン」で最強のモバイル向け液晶が

 製造プロセス的に複雑な低温ポリシリコンを、なぜ浅野氏はプラスチック基板に必要だと訴えるのだろうか。

 ポリシリコンTFTは、TFT素子の材料として従来のアモルファスシリコンの代わりに「ポリシリコン(p-Si)」を使うもの。従来、高温でしかTFTを形成できなかったポリシリコンを低温で形成できるようにしたのが低温ポリシリコンTFTだ。アモルファスシリコンは結晶になっていないために構造にバラツキがあり、電気抵抗も大きい。一方、電子移動度が高い低温ポリシリコンは、ドライバICを基板上に一体形成できるために部品点数が少なくて済み、画素ピッチも細かくできるので、小さな画面でより高い解像度が可能になる。これが、低温ポリシリコンTFTがモバイル向きといわれる理由だ。    「“プラスチック基板”と“低温ポリシリコンTFT”というモバイル用途に最適な技術が組み合わさることで、究極のモバイル向け液晶ディスプレイができあがる。今後、より高機能なモバイル用ディスプレイを突き進めると、この組み合わせになる」(浅野氏)。

 一方、プラスチック基板の最大の欠点は、ガラス基板に比べて耐熱性が低い点。特に“低温”とはいえTFT層の形成に500度前後の温度が必要な低温ポリシリコンTFTは、耐熱温度が最高でも200-300度のプラスチック基板上に直接形成することは不可能だ。

 そこでソニーは、ガラス基板上に形成した低温ポリシリコンのTFTデバイス層をプラスチック基板に移動(転写)させる「転写法」を採用した。「一度の転写では画素電極が裏返しになるので、転写プロセスを2度繰り返して、電極が表面になるようにした。TFTデバイス層の形成自体はガラス基板上で行うので、従来の製造装置/プロセスを流用できるのが特徴」(浅野氏)。この新技術は、今年5月に米国で開催されたSID(情報ディスプレイ学会)2002で発表されたものだ。

 ガラス基板に貼り付けたTFTデバイスを剥がすという工程を2度繰り返して初めてプラスチック基板に実装するというこの方法は、製造プロセスが複雑になるのが欠点。しかし、浅野氏は「低温ポリシリコンTFTを直接形成できるプラスチック基板の開発は、あと5年はかかる」とし、ソニーが進める転写法が実用化に1番近いと語る。

 「将来的には、有機ELと組み合わせて厚さ0.2-0.3ミリの超薄型フレキシブルディスプレイも可能。新聞のようなデジタルペーパーも夢ではない」(浅野氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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