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2002年12月4日　04:53 AM 更新

「とにかく“待つ”は排除したかった」〜日立に「A5303H」を聞く（1/2）

技術的に言えば、アプリケーションプロセッサ「SH-Mobile」搭載をうたった初めての端末。その効果は、「とにかくクイックでスピーディー」。日立の「A5303H」は、JavaやWebの“遅さ”がたびたび指摘されるau端末の中で、異色の“速さ”を見せる端末だ

　KDDIが近々市場に投入する日立製作所製の「A5303H」を一言で表すと、とにかく“クイックな端末”となるだろう。カメラと併せた3G戦略が好調なKDDIだが、端末のラインアップを眺めると、「動作が軽快」とはいえない機種が多い。そんななか、各機能が素早くスマートに動作するA5303Hは、auユーザー待望の端末でもある。

「とにかく“待つ”は排除したかった」

　「フォト、ムービー……携帯が扱うデータがヘビーになってきている。現在のCPUは動画のエンコード、デコードには荷が重い。ムービーも、じっくり待ってやっと撮れました……では仕方ない」──。こう話してくれたのは、A5303Hの企画を担当した、日立製作所ユビキタスプラットフォームグループのモバイル端末営業本部モバイル企画部の松長孝徳主任。

　KDDIの動画撮影が可能な端末はA5303Hで3機種目となるが、いずれも動画を撮影してから保存するまでにかなりの時間がかかる（10月4日の記事参照）。

　ところが、A5303Hでは撮影直後にエンコードが終了する。それだけでなく、再生動作にも“待ち”は入らない。ムービー端末で唯一、着信時に設定したムービーが流れる「着信ムービー」に対応しているが、これも「動画を瞬時に起動できるから」（松長氏）こそ。

　これを実現したのが、同じく日立製のアプリケーションプロセッサ「SH-Mobile」だ。最大133MHzで動作し、MPEG-4のリアルタイムエンコード/デコードを行えるパフォーマンスを持つ（6月25日の記事参照）。A5303Hでは、Qualcomm製のベースバンドチップのほかにSH-Mobileを積んだ、いわゆるツインCPU構成を取っている。

　SH-Mobileの効果は動画だけに留まらない。KDDIのJava──ezplusの動作速度は他を圧倒する。日立の前機種「C3001H」比で3倍以上だ。ezplusは、NTTドコモのiアプリ、J-フォンのJavaアプリに比べて動作が緩慢であり、アクションゲームなどがなかなか成り立ちにくいと言われてきた。ところがA5303Hでは他キャリアのJavaをもしのぐスピードで動作する。「他社の本格ゲームでも、起動時には相当待つ。A5303Hならこれだけ高速」と松長氏は胸を張る。

　携帯が本格マルチメディア機能を搭載していく中で、操作のレスポンスはとかく犠牲にされてきた。A5303Hではその点の改良が、とにかく使い勝手の向上につながっている。144Kbpsという高速なデータ通信速度を持ちながら、今ひとつ体感速度の遅いWebページ閲覧も、C3001H比で3倍近く早くなった。

　「ベンチマークを取って、どう、という世界ではないと思うが、とにかく“待つ”は排除したかった。ムービーでも同じで、とにかく大事なのはスピード感」（松長氏）。

「制約をなくす」〜スライドスイッチ、回転カメラ

　A5303Hのスピード感は、もちろんSH-Mobile搭載だけに負っているわけではない。工夫の1つが、カメラをワンアクションで起動できる「クイック起動キー」だ。

　側面に備えられたスライドキーを動かすだけで、静止画／動画カメラがすぐに起動。閉じたままで、カメラを起動し撮影することも簡単だ。

　ヒンジ部に内蔵されたカメラも180度回転し、持ち変えることなく、メインディスプレイを使って自分撮りが行える。「制約を設けない形にしたかった。ムービーであろうが、フォトであろうが、制約なし。被写体が相手であろうが、自分であろうが、制約はない」と松長氏はコンセプトを話す。

ヒンジ部に入れ込んだ34万画素CMOSカメラは回転する。「CCDを入れたいのはやまやまだが……」と話しながらも、CCDのサイズではここに入らなかったとも。カメラ周りには落下時の衝撃にも考慮され緩衝材なども使われているという

左にあるのが、カメラを起動する「クイック起動キー」。右は、日立端末のアイデンティティとも呼べる「気くばりスイッチ」だ。閉じたままでも、ノーマル、セーフティ、サイレンスなどの切替が可能。折りたたみになって、さらに有効性が増したともいえる

「第1号機を出したい」〜1年の沈黙を破って

[斎藤健二, ITmedia]

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