携帯で使える“使い捨て感覚”のメーリングリストシステムNamazuの作者として知られる高林哲氏が開発したメーリングリストシステム「QuickML」。管理が簡単で、使い捨て感覚でMLを構築できるのがポイントだ。2002年1月の公開以来の利用状況をフォローしたところ、面白い結果が得られている
すぐに実用としても使えるトピックを中心に、WISSの発表内容をご紹介していこう。 まずは、「インターネット」のセッションから。 最初の発表は、全文検索ツール「Namazu」の作者として知られるソニーコンピュータサイエンス研究所(CSL)/奈良先端科学技術大学院大学の高林哲氏による「QuickML」であった。 このQuickMLは、メールのみでメーリングリストを開設/消滅できる、お手軽なメーリングリストシステムである。「メーリングリストはインターネット上でのグループコミュニケーションに欠かせないツールですが、従来のメーリングリストは作成および管理に多くの手間がかかるため、『来週の旅行の打ち合わせ』や『今日の宴会の連絡』のような一時的な用途には使いにくいのです。そこで、使い捨て感覚で手軽にメーリングリストを作って活用できるシステム『QuickML』を考案しました」と、高林氏はプレゼンテーションで説明する。
高林氏によるQuickMLの特徴。メーリングリストが自動で消滅するという点が、管理をたやすくし、手軽な感じを抱かせることに成功した理由 従来、簡易なメーリングリスト管理システムとしてMajordomoが知られている。Majordomoは、手作業によるメーリングリスト管理の大変さを解決するために開発された。手作業による管理というのは、具体的にいうと、「メーリングリストに参加したい」「メーリングリストから退会したい」「私はメーリングリストのメンバーか?」というような要求や質問に、いちいち答えるのが大変だということだ。 Majordomoでは、これらを簡明にするために、コマンドメールという特殊なメールを送ることで、メールベースでメーリングリストの管理を行えようにした。ただこれは、管理を別立てで行うのに較べると楽だが、それでもコマンドメールという、複雑な専用コマンドを覚えなければ使えないために、失敗も見られる。 操作を失敗しないようにした例には、Webベースでメーリングリストを作成/管理/運用できるYahoo Groups2やFreeML3などのWeb上のメーリングリスト作成サービスがある。これらは、メーリングリストの作成やアカウントの登録をするためにブラウザが必要であるため、携帯電話だけで使えるわけではない。 そこで、これらの問題を解決するために開発し運用されているのが、QuickMLである。携帯電話でメーリングリストを作成/管理できることを重視しているわけである。 QuickMLでは、「任意の名前@quickml.com」のような任意のアドレスにメールを送るだけで、新しいメーリングリストを作成できる。例えば宴会のメーリングリストを作るにはenkai@quickml.comにメールを送ればいい。メーリングリストのメンバーは、送信したメールの「From: 」と「Cc: 」にリストされたアドレスが自動的に登録される。
というようなメールを送信するだけでメーリングリストを作成できるのである。 メーリングリストの重複を回避するため、QuickMLではenkai@gotanda.quickml.comのように、任意のサブドメインを入れることができる。 実際に高林氏らのグループは、このようにして2001年11月にQuickML.comを運用開始、2002年1月に一般公開を行った。 1年ほどの運用の結果、QuickMLの利用状況としては6000個が開設(2002年12月現在の利用者は2万5000人)。そのうち3000個が消滅した、という結果を得たという。メーリングリストのうちの半分は、1カ月で終了することも分かり、使い捨て感覚のコミュニケーションを実現できたのだそうだ。共同開発のソニーCSLの増井俊之氏によれば「メーリングリストの半減期は28日」だそうだ。
QuickMLの利用状況。公開後11カ月で、2万4000人の利用となった。うち3分の1が携帯電話
ソニーCSLの増井俊之氏。WISS2002のプログラム委員長でもある。HMI研究の第一人者 QuickML全体のユーザー数2万5000人のうち、3分の1の約9000人弱が携帯電話ユーザーで、手軽な利用状況がわかった半面、携帯電話ならではの変更点も必要だったという。 携帯電話のメールでは、spamメールよけの変なアドレスが流行している。例えば、「eiko....@〜〜」や、「顔文字@docomo.ne.jp」とかいうようなものである。大文字・小文字の混在なども著しい。これらは、従来のインターネットメールではなかった問題だが、利用率を考え対応したという。 ほかにも、「知らない人が潜伏していた問題」などがあったが、これらは修正されている。 QuickMLの利用方法としては、メモ帳、アイデアメモ、待ち合わせ連絡などがある。これら用途ごとにアドレスを分けると、メーラーの自動振り分け機能で、簡単に情報を整理できるという。 ほかにも、「夜中は投稿が減る」とか、メーリングリストが日常的なツールとして浸透していることなどが分かったという。
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